連載小説「やりなおし」(48)
Added 2020-09-21 10:06:24 +0000 UTC2-1.露見 (3) レイカの言った通り、駅から5分ほどで車は「合宿所」に到着した。 一両がぎりぎり入れるほどの小さな駐車スペースに車を止め、乗った時とは逆に千絵、歩実の順で後部座席から降りる。 「わぁ、本当に、幼稚園だ!」 最後に歩実の手を借りて車から降りた祐奈が、見渡してはしゃいだ声を上げた。 2階建ての園舎と、その前に広がる園庭は、事前の資料で見たのと同じ。集合住宅に囲まれて、ちょっとした公園やスーパーも見える。園門の左右に広がる壁は水色で、幼稚園児が手がけたものとおぼしき子供や花畑、魚や鳥などの絵が描かれているのが、いかにも幼稚園らしかった。 さすがに園児服でこそないものの、ピンクのセーラー服を着て幼稚園に立っていると、ひどく非現実的な気分になってくる。 (男子高校生にもなって、女の子の格好をして、幼稚園だった建物に入るなんて……) (なんか、変なプレイみたい……) 思わずそんなことを考えて、ぶるっと身震いが出る。ワンピースのボックスプリーツが揺れて太ももを撫で、おむつの中の勃起をさらに硬くしてしまう歩実だったが、 (いや、冷静に考えれば、これは失禁改善のための合宿でしかないんだから、やましいことなんて何もないんだ……) (ただぼくが、女子小学生のふりをして参加してるってだけで……しかも、女児用の紙おむつを当てて興奮して勃起しちゃってるだけで……) (うう、考えれば考えるほど、自分が変態そのもので嫌になってくる……) (しかもその合宿を、恭子と一緒に受けなきゃいけないんだから……) 歩実はちらりと、すでに先行して園舎に入ろうとしているセーラー服の女子高生――恭子の様子をうかがう。 祐奈が転びかけた時もそうだったように、恭子は相変わらず、徹底して「合宿の参加者の女子小学生」として歩実を扱っていた。もちろん歩実のことを気づいていないわけがないし、昨日は「今度は逃げないで」とまで言われている。軽蔑されることも、罵詈雑言を浴びせられることも、覚悟して臨んだ合宿だったのだが、予想に反して彼女の対応は極めて淡白だった。歩実にとっては、かえって罵られるよりも針の筵である。 (はぁ、わかってたことだけど、問題だらけだ……) (まずは祐奈ちゃんと千絵ちゃんに、男だってばれないように――まして、女装して、おむつを当てて興奮してるだなんて、あの2人にはもちろん、恭子にも知られないようにしないといけないし……) (そしてできれば、二人きりになったタイミングで、恭子と話して――) この合宿への参加を決意する大きな理由となった、2年前の悲劇。 卒業式の後、告白の真っ最中にお漏らししてしまい、恭子の前から逃げ出した苦い記憶。 思い出すといまだに全身から血の気が引くようなトラウマであったが、逃げるわけにはいかなかった。 (あの時のことを、ちゃんと、謝らないと) 歩実が幼稚園の建物を見上げながら、拳とともに決意を固めていると、 「さぁ、祐奈くんと歩実くんも、中に入って」 「はーい」 「は、はい!」 入り口から顔をのぞかせたレイカに呼ばれて、2人は幼稚園の中に足を踏み入れる。 玄関は広い土間の左右に、下駄箱が並んでいる。女児用のサンダルを脱ぎ、バッグの中に入っていた新品の上履き――靴底に赤いラインが入った、小学生用のものだ――に履き替える。 (上履きなんて、穿き心地は大して変わるものじゃないけど――小学生用のだって考えるだけで、ちょっとドキドキしてくる……) 赤くなりながらも、トントンとつま先を床に当てて、かかとを置くまでフィットさせる歩実。 ふと気づくと、祐奈がじっと、歩実の上履きを見つめていた。彼女は同じようなデザインの――しかしやや年季の入った上履きを履いていた。 「どうしたの、祐奈ちゃん?」 「う、ううん、なんでもない!」 祐奈は答えて、パタパタと先に行ってしまう。 歩実は頭上にクエスチョンマークを浮かべながら、彼女に続いて幼稚園の中に入っていった。 歩実たちも追いついたところで、レイカは一行とともに廊下を歩きながら、改めて説明を始める。 「さて、ちょうど左手側に、各クラスの教室が見えるだろう? 年少組、年中組、年長組――ちょうど君たち3人と、同じ数だ。カーテンや鍵もかけられるようになっているから、それぞれの個室として利用してほしい」 「はい」 3人は言われたとおり、左手を見る。 廊下と教室の間の壁には、ちょうど目線ほどの高さにガラスが張られているため、教室の中が見渡せた。 一番手前の「ねんちょうぐみ」の部屋は、ナチュラルな内装に、グリーンのカーペットが敷かれている。 「年長組の教室は、祐奈くん」 「はーい!」 続いて二番目の「ねんちゅうぐみ」の部屋は、同じくナチュラルな内装だったが、床に敷かれたタイルカーペットがカラフルだ。 「年中組の教室は、千絵くん」 「はい」 (えっ、この流れって、まさか――) 背筋に張り付く緊張感。それは不安でもあり、予感でもあり――同時に期待でもあった。 やがて歩くうちに見えてきた三番目の教室――「年少組」の部屋の内装は、上二つとは一線を画していた。 パステルカラーの壁に、いかにも幼児向けの可愛らしいお日様や花畑、そこで仲良く遊ぶ子供たちのイラスト。 一隅は低い柵で囲われ、中にはカラーマットが敷かれて、ぬいぐるみや積木などが置かれている。 「わぁ、可愛い!」 祐奈が声を上げるほど、幼く可愛らしいその部屋が―― 「年少組の教室は――歩実くん、君が使うといい」 からかうような響きを帯びたレイカの声に、歩実は返事することもできず――ただ高鳴る胸を押さえたまま、これから一週間過ごすことになる「自分の部屋」を見つめていた。 (続く)
Comments
ありがとうございます~! まだ合宿は始まったばかり、歩実くんはいったいどんな恥ずかしい目に遭わされてしまうのか…ドキドキ。
十月兔
2020-09-21 10:47:23 +0000 UTC良いですねぇー。 この細かな状況設定の積み重ねがたまりません。 これからどんな風に女児女児させられちゃうのか、期待が高まってワクワクです。
elli-kasuga
2020-09-21 10:43:45 +0000 UTC