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新作予定冒頭部・先行公開

 販売作品の新作として書いている小説の冒頭部分になります。プレイは女児女装+露出中心。小説のみになるか、イラストをつけて上下巻になるかはわかりませんが、販売を目指していきます。  発売準備が整ったらピクシブなどで公開していきますが、とりあえず先行公開。   *  ヒロくんはよくできた息子さんで、うらやましいわ――尾張小夜はそう言われるたびに、心臓に刺さったトゲに触られるような気分になる。  じっさい、高校3年生の長男・博希は申し分のない「できた息子」だ。 通っているのは都立の進学校。去年まで、生徒副会長を務めていた。責任感が強く頼まれたらいやとは言えない性格のためか、クラスメイトどころか先生からも頼りにされているようだった。友人も多いが、悪い遊びを覚えることもなく、夏休みに入ったばかりの今日も、朝から二階の自室で受験勉強に励んでいる。  容姿もやや柔弱なきらいはあるものの端麗で、少女めいた美貌。サラサラの髪は首筋に届くほど長く、体格も小柄で華奢なため、男子制服を着ていないと女子に間違われることもしばしばだったが――取り立てた問題ではない。  非の打ちどころのない、真面目な息子。  そんな風に育ってくれたことに感謝こそすれ、文句をつけたり、不満を述べたりするのはあまりにも贅沢というものだ。  しかし一方で、母親だからこその心配もあり―― 「あら」  小夜の憂鬱は、ふいに鳴ったチャイムによって中断された。  立ち上がってインターホンの画面を確認すると、 「藍那でーす。博希くん、いますか?」 「ええ、ちょっと待ってちょうだい」  玄関前に立っていたのは、半袖ブラウスにチェックプリーツスカートの女子制服を着て、肩にプールバッグをかけた女子高生だった。  その姿に、小夜は愁眉を開く。彼女こそ、「優等生」の博希について小夜と同じ悩みを共有している、数少ない一人であった。  小夜は廊下に出て、玄関に行きしな、階段越しに二階の息子に声をかける。 「ヒロ、藍那ちゃんが来たわよ」 「はーい」  返事を聞いてから、一足先に玄関の鍵を開けて、訪問者を出迎えた。 「いらっしゃい、藍那ちゃん。今日も遊びに誘いに来てくれて、ありがとうね」 「いえいえ、好きでやってることですから」  女子高生――博希とは幼稚園から高校まで同じ、いわゆる「幼馴染」に当たる岡崎藍那は、にっこりと笑って首を振った。  背が高く胸も大きい、高校生離れしたプロポーション。面長の整った顔立ちと、シュシュでポニーテールに結い上げた艶やかな黒髪は、女優かモデルと言われても違和感がないほどだ。じっさい、アルバイト禁止の校則がある高校なのだが、こっそりモデル活動をしていたこともあるらしい。  受験勉強中の息子を遊びに誘いに来る異性など、歓迎しない母親も多いだろう。しかし小夜は満面の笑顔で、 「それでも、よ。藍那ちゃんが誘ってくれなければ、あの子、ぜんぜん遊びになんていかないんだもの。今日はどこに連れて行ってくれるのかしら?」 「隣町の、プールレジャー施設です。親戚からチケットをもらったので」 「あら、ありがとうね。冷たいのものを用意しておくから、ぜひ帰りに寄ってちょうだい」 「はい。お言葉に甘えさせてもらいます」  藍那は礼儀正しく頭を下げた。後頭部のポニーテールが大きく揺れる。  そこへ、 「お待たせ、藍那」  制服姿――もちろん男子用だったが――の博希がようやく、プールバッグを持って下りてきた。  彼の鼻先に、藍那はびしっと指を突き付けて、 「遅いよ、ヒロ! せっかくこんな可愛い女の子と二人っきりでプールに行けるんだから、もうちょっとイソイソと心待ちにしてくれてもいいんじゃないかな?」 「可愛い女の子……って、自分で言うかなぁ」  幼馴染のいつもの強引さに、博希は苦笑いしつつ、 「でも、誘ってくれてありがとう。それじゃ母さん、行ってきます」 「はい、行ってらっしゃい。二人とも気を付けてね」 「いってきまーす」  出かける二人を玄関先で見送って、家に戻ってきた母親は小さく吐息を漏らした。  誰もが認める「優等生」の息子――その根底にあるのが、実は主体性のなさと、無趣味の賜物だということを、母親はわかっていた。  他人に言われ、期待されているからその通りに動く。勉強も、学校での活動も、友人関係も。その結果、「優等生」という評価が出来上がったに過ぎない。こうして遊びに行っていることさえも、単に「藍那に誘われたから」だ。  考えすぎと言われたこともあるが、彼が自分から何をしたい、何が欲しいというのを、ついぞ耳にした覚えがないのはどう考えてもおかしい。ほかの母親たちの愚痴を聞く限り、子供はもっとわがままで、欲しがりで、親の言うことになど耳を貸さないものだ。  とはいえ、親のほうから「わがままになりなさい」というのもおかしな話で、母親としては気にはかかるが何もできなかった。  幸いなことに、幼馴染の藍那が同じように気にかけているらしく、彼をあれやこれやと遊びに誘ってくれているし、彼のほうも、やや強引な藍那に困惑しつつも付き合っている。  小夜にできるのは、そんな藍那に感謝しつつ、彼女が「当たり」を引くのを待つくらいだった。 (……いつか、自分の楽しみを見出してくれるといいのだけれど)  小夜は心中で願いつつ、気持ちを切り替えて主婦としての仕事に取りかかった。  二階最奥――廊下の突き当りにある、物置部屋の整理である。  もとは小夜が趣味で作った衣類や一張羅など、普段は着ない服を入れておくための衣装箪笥を置いた部屋だったのだが、使わない家具や家電の一時保管場所として用いるうち、いつしか「物置部屋」になってしまっていた。これではいけないと思い立ち、整理を始めたのが半月ほど前のこと。以来、ゴミ収集のペースに合わせて必要なものを仕分け、不要なものを処分している。  今日の主眼は、古い木製のドレッサーだった。もともと小夜が独身時代から使っていたものだが、建付けが悪く、セットの椅子が壊れたのを機に買い替えることになり、物置部屋行きにされたのだ。 「お化粧品は……もう古いから、使えなさそうね。ネックレスも……これは磨かないとダメかしら。このスカーフはまだ使えそうだから洗って、ポケットティッシュも捨てて――」  つぶやきながら仕分けを続けていた小夜の手が、ふと埃にまみれた革張りの薄い冊子をつかみ上げた。パラパラとめくると、透明なシートの中にたくさんの写真が入っていて、 「あら、アルバム。こんなところにあったのね」  小さく笑ってつぶやきながら、めくってゆく。  写真は博希が生まれてから、10年ほど前までのものだ。小学校に上がってすぐくらいまでの写真で、家族写真や、藍那と一緒に写っているものも多かった。 「ふふっ、懐かしいわ……あら」  小夜の目が、一枚の写真に釘付けになる。  それは一見すると何の変哲もない、ふたりの少女が並んで立っている写真だった。しかし小夜は珍しく声を上げて笑い、 「あははっ、あったわね、こんなこと。そういえば、あの時の服――」  言いかけて立ち上がると、すぐ近くの衣装箪笥を開いて、 「確か捨ててなかったから、まだあったはずよね。たぶん、そのへんの箪笥のどこかに……あった!」  中から取り出した服を広げて、小夜はうれしそうな声を上げて目を細めた。 「ほんとに、懐かしいわ……そういえば、あの時のヒロは――」  ふいに小夜は、ガラクタの中から宝石を見つけたかのような声でつぶやいた。  数秒、身じろぎもせずじっと考え込んでいたが、 「――うん、やってみる価値は、あるわね」  はっきりとした声でそう言うと、写真と服をもって、物置部屋を後にしたのだった。


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