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SS「逆転の日」(14)

  (14)  おとなしくなったぼくの腕に、お姉ちゃんは腕を絡めて体を回転させるように隣に立つと、 「おかーさん! しゃしん、とって!」 「はいはい。サキちゃんも顔を上げて、にっこり笑ってごらん」 「う……は、はい……」  お姉ちゃんと腕を組んだ状態で、ぼくは恐る恐る、顔を上げる。  正面に母親。そしてその周りに、女子中高生たちがスマホを構えている。幼稚園児年少組の妹として、年長組のお姉ちゃんとのツーショットを記録されるのだ。  それがわかっていながらも、ぼくはその場から逃げることもできず、ただひきつったような笑みを浮かべて、撮影に応じることしかできなかった。揺れるピンクのスカートの中で、ついさっき射精させられたばかりの竿が、再びピクピクと疼き始めていた。  ひとしきりツーショットを撮り終えて、周りの少女たちが満足したところへ、 「ふふ、撮影会はもう済んだかしら?」  いままで遠巻きに見ていた制服店の店員――文月さんが近づいてきて、ぼくの制服姿をチェックする。  本来は幼稚園年少組――サキお姉ちゃんよりもっとちっちゃい子が着るための制服を、ぼく用の160サイズでしたててもらったもの。とうぜん、そんなに販売されるものじゃないだろうから、チェックの目も厳しくなるんだろうけど―― 「うん、ジャケットもスカートも、ぴったり。ふふ、これから毎日着るものなんだから、体に合ってないとね」 「あ……ありがとう、ございます……」  「これから毎日着る」――さんざん言われたことで、下着からブラウスまで替えが用意されているから覚悟はしていたけれど、何度言われても恥ずかしい。  ――そして、帰り道。 「えへへっ、マキちゃんとおそろい♪ マキちゃんとおそろい♪」  スキップでもしそうなくらいウキウキなサキお姉ちゃんとならび、ぼくは手を引かれるようにして、大通りを駅に向かって歩いていた。  後ろからは、ちょっと離れたところからお母さんと、制服姿の井上さんがついてきていた。まるで、先を歩く幼い姉妹と、それを見守る母親と姉のように。  たくさんの人が、40センチ以上も身長差があるのにおそろいの園児服――それも背が高いほうのぼくが幼いデザインの制服を着ているのに、あからさまな奇異の目を向けていたけれど、ぼくは逃げることなくまっすぐ正面を向いて歩き続ける。  これからはずっと、学校に行くとき以外は幼稚園児としての生活。ご近所さんや、中学の時の友達や、井上さんの様子だと高校のクラスメイトにまで見られてしまうかもしれないのだ。ちょっと駅前で知らない人たちに見られたり、こっそり写真を撮られたりする程度で、怯えてはいられない。  ――そう、頭ではわかっているけれど、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい。  太ももにピンクのプリーツスカートにこすられるたびに、肩に通園リュックが食い込むたびに、頭にかぶった黄色い通園帽子が視界に入るたびに、全身を包むブラウスやジャケットや女児下着の肌触りを意識するたびに、およそ男子高校生ではありえない今の姿を、思い出してしまう。  けれど――隣を歩くお姉ちゃんの笑顔と、その手のぬくもりに勇気づけられて、ぼくは人通りの中を歩いてゆく。 「えへへっ、マキちゃん、すっかり幼稚園児になっちゃったね! ちょっと前まで、高校生のお兄ちゃんだったのに!」  ほんのちょっぴりいたずらっぽくいうお姉ちゃんに、 「うう、言わないでよぉ……お姉ちゃんの、いじわる……」  ぼくが拗ねたような口調で言い返すと、お姉ちゃんはにっこり笑うのだった。   (終わり)

Comments

園児ネタいいですよね(≧∀≦) 楽しみにしてます♪

ありがとうございます! もともとSSのつもりが長くなってしまった感じなので、この作品はこれでおしまいになりますが、また園児服ネタは書きたいですね~

十月兔

更新を楽しみに読んでいました♪ 続編があれば嬉しいです*\(^o^)/*


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