「あたしの彼氏はベビーガール」(12)
Added 2020-09-11 10:30:19 +0000 UTC(12) 人気のない公園で、誰も見ていない――そう思っていたからこそ、恥ずかしがりつつも続けてきた女児ベビー服の撮影会。 なのに今になって、実は見ている人がいたことを知らされて、歩実の顔が驚愕と恐怖に引きつる。 「な、なんでっ……いつから……!」 「んー、最初のお姉さんは、公園に来て3分くらい経ったころかな? それから数分に一人ずつ、だんだん増えていった感じね。缶コーヒーを持ってるから、たぶんオフィスの休憩室じゃないかしら」 「そんなっ……じゃあ、ほとんど最初から……!」 「うん、そういうことになるわね」 あたしはくすくす笑って、 「ブルマードレスを着て遊具で遊んだり、お写真を撮ったりしてるところも、お着換えでおむつカバーだけになってるところも――このエプロンドレスにお着換えしてるところも、ぜーんぶ見られてたんだよ」 「う、だ、大丈夫かな……?」 「ええ。通報されてる様子はないし――それどころか、歩実ちゃんを見て談笑してるみたいだから、むしろ楽しんでるんじゃないかしら。くすっ、せっかくだから、お姉さんたちに手を振ってあげたら?」 「う……それは……」 ちらり、と窓のほうを見上げる歩実。 するとOLたちも、歩実に気づかれたことを察したらしい。どうしようか迷うように、互いに視線を交わした後、OLのひとり――最初に来た女性が、笑顔でこちらに手を振った。 歩実は困ったように、あたしに視線を向ける。 「くすっ、ほら、歩実ちゃん。お姉さんが手を振ってくれてるわよ。女の子なら、こんなときどうするかしら?」 「うっ……」 歩実はいっしゅん、最後に残った理性に引き留められたように動きを止める。 しかしすぐに顔を上げると、窓のように向かって笑顔を作って、ぶんぶんと大きく手を振った。 そんな女児めいたしぐさに、OLたちは笑い交わして、もう一度手を振り返した後、窓の向こうから姿を消した。ここが潮時と、休憩は終了にしたのだろう。 「ふふっ、お姉さんたちも喜んでくれたみたいね。さ、撮影の続きに戻りましょっか」 「う、うん……」 歩実はもじもじしながら肯いた。 さすがに今の不意打ちは恥ずかしかったかな――そう考えかけたけど、それにしても様子がおかしい。くっつけた太ももをガクガクと震わせて、下ろした手をきつく握りしめているその動きは―― 「くすっ、もしかして、おもらししたくなっちゃった?」 「っ!?」 わかりやすい。歩実はさっとうつむいたあと、隠し切れないと悟ったのか、すぐに赤い顔でうなずいた。 「うん……ち、ちっち、したいから、早く、お店に……! このお洋服、汚しちゃったら大変だし……」 「あら、まだ買うって決めてなかったのかしら?」 今までカメラを弄っていた美弥子さんが、くつくつと喉の奥で笑いながら話に加わる。 「ずいぶん気に入ってくれたみたいだから、もう決めたとばかり思ってたのに。それに、おもらししても大丈夫でしょう。おむつを10枚も当ててるんだし、おむつカバーもきっちりしてあるんだし――ね、恭子ちゃん?」 「そうそう。前にお漏らししてから時間もたってないし、飲み物もそんなに飲んでないし、大した量じゃないからおもらししちゃっても大丈夫よ、歩実ちゃん。万が一、そのお洋服を汚しちゃっても――」 あたしは毒を吹きこむように、彼の耳にささやく。 「その時は、そのエプロンドレスを買うためのいい口実ができたじゃない? せっかくだし、その格好でこの後のデートも過ごしましょ、ね?」 「う……うん……」 デートに着てきた、黄色いブラウスとイチゴ柄のロンパース。 そして今着ている、ピンクのエプロンつきブルマードレス。 果たしてどちらが彼にとって恥ずかしいのかはわからないけど、デートの途中での「お色直し」は、また気分を新鮮にしてくれることだろう。 「さ、というわけで歩実ちゃん。遠慮しないで、ここでおもらししましょうね。そうね、あそこのお馬さんがいいかしら」 「うぅ……はーい……」 あたしの命令だけではなく、自分自身の欲望にも負けて、歩実はエプロンドレスのまま、「お馬さん」――公園の隅に置かれたスプリング遊具に跨る。 もともとおそらく幼稚園児用なのだろう、歩実の体格に比べると明らかにサイズが小さく、まるで大人が三輪車に跨っているかのような、滑稽なありさまになっている。しかも服装だけは可愛いエプロンドレスを着ているだけに、いっそうシュールで、嗜虐心をそそる光景だ。 歩実本人も、恥ずかしさと、おしっこが近いのでもじもじしながら、まるで机の角に股間をこすりつけて自慰する少女のように腰をくねらせていたが―― 「ん、うっ――」 やがて漏れ出した甘い悲鳴に、あたしは彼がおもらしし始めたことを悟った。 (続く)