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「あたしの彼氏はベビーガール」(9)

  (9) 「おやおや、気に入ってくれたみたいだね」  何も知らなければドン引きしたとしか思えないあたしたちの反応に、しかし美弥子さんはにんまりと笑った。うん、わかっていらっしゃる。  しかし歩実のほうはまだ羞恥が勝るようで、 「さ、さすがにこれはちょっと……」 「おや、キミもこういうのが好みなんじゃなかったのかな? 思わずうろたえてしまうくらい幼くて、可愛らしくて、とても男子高校生がするような恰好じゃない――そんなベビー服が」 「う、うう……」  美弥子さんの言葉を否定できず、歩実は口ごもる。 「まぁ、いいさ。ほかにもいろいろあるからね。一通り見るといい。試着しても構わないけど、その時はいつものように、ホームページ用の写真を撮らせてもらうよ」 「はーい。それじゃあ歩実、まずはディスプレイされてた服から、着せてもらおっか?」 「う、うん……」  あたしの提案に、歩実は恥ずかしそうに――しかし隠し切れない喜びの入り混じった顔でうなずいた。  まずはギンガムチェックのキッズシャツワンピース。ディスプレイのはモノトーンだったけれど、歩実に着せてもらったのは赤だ。スカート丈は膝くらいまであり、下に当てているおむつは見えなくなっているけれど――そのふくらみまでは隠しようがなく、不自然なラインになってしまっている。 「くすっ、いいじゃない。さっきまでのロンパースに比べると、ずっとお姉ちゃんっぽくて」 「うん……ありがとう、恭子」  男子高校生を相手に「お姉ちゃんっぽい」も何もないものだが、歩実は嬉しそうにはにかんだ。ちなみに今はベビーボンネットも外して、ボブカットくらいに伸びた髪をそのままおろしている。  美弥子さんは大きなカメラを首から下げてやってきて、 「じゃあ写真を撮るから、外に出てちょうだい」 「は、はい」  歩実はあっさり肯いて、あたしと一緒に外に出る。  裏通りの雑居ビルとはいえ、駅前は駅前。それなりに人通りもあり、遠慮のない視線を向けられたけれど、あたしも美弥子さんも、まったく気にしなかった。むしろ一番気にした様子だったのは歩実で、 「歩実ったら、あんな可愛いイチゴ柄ロンパースで駅前を歩いたのに、まだ恥ずかしがってるんだ」 「そ、そんなこと言われても、恥ずかしいものは、恥ずかしいってば……」  普通のポーズの写真を撮り終えて、今はスカートを自分の手でめくって、ピンクのギンガムチェックにレースハート柄のおむつカバーを露出させた姿を撮影されている歩実が、真っ赤な顔で言い訳する。近くの雑居ビルに勤めているらしいOLが、こちらをジロジロ見ながら通り過ぎて行った。 「ほ、ほら、通りすがりの人に、見られてるし……」 「くすっ、そんなこと言いながら、おむつの中でおちんちん大きくしてるくせに」 「それは――そう、だけど……」 「歩実ちゃんったら、本当にエッチで困った子ねぇ。あとでいっぱい気持ちよくしてあげるから、今は我慢して、次のお洋服にお着換えしてちょうだい」 「は、はーい……」  というわけで、2着目のコーディネートセットに着替える。  レースがついた丸襟の長袖ブラウス。前立てにはピンタック、袖口と裾にはフリルがついた、これだけでも可愛らしい一着だ。襟の後ろ側はセーラー風のスクエア状で、四葉のクローバーが刺繍されているのもしゃれている。  淡いピンクの、切り替えティアードスカート――いや、ティアードサロペットスカート。ディスプレイだとカーディガンを重ねているから見えなかっただけで、前に胸当て、後ろで肩ひもが交差する、サロペットスカートだったのだ。たっぷりと広がるティアードスカートは、上からギンガムチェックと無地の切り替えで、裾に白いレースがあしらわれている。  まずはカーディガンなしの、ブラウスとティアードサロペットスカートだけで撮影をはじめたんだけど、 「くすっ、スカートが短すぎて、可愛いおむつカバーが見えちゃってるわね」 「う、うん……」  ティアードスカートの裾から、たっぷりと膨らんだおむつカバーのギンガムチェックが覗いてしまっている。  しかし歩実は恥ずかしそうにしながらも、美弥子さんに言われるがままポーズをとり、おむつの取れない少女のような姿を撮影され続けた。 さらにカーディガンを羽織ったコーディネートでも撮影された後、いよいよ3着目に着替える。  空色のベビーチュニックと、フリフリベビーブルマーのセット。裾に赤青黄色のチューリップが並ぶ、童謡をもとに幼稚園児が描いた絵のようなデザインが、実に幼い印象だ。ブルマーの中もパンパンで、普通に立っていても下半分見えている。 「う、あ……」  さしもの歩実も恥ずかしいのか、着替えて外に出たところでもじもじして動けなくなる。デート中に来ていたロンパースのほうが恥ずかしいんじゃないかって思うけど、新しいベビー服に着替えると、また羞恥ゲージがリセットされるものらしい。  うーん、それにしても。  服こそいろいろ着替えてるけど、ずっと同じ場所での撮影も、ちょっとマンネリになってきたわね。あたしはちょっと考えて――ふと思いついた。 「ねぇ、美弥子さん」 「ん? なにかしら? まさか恭子くんも、可愛い服を着たく――」 「違うから。あのね、あっちのほうに、児童公園があるでしょ?」 「ああ――ふふ、なるほど」  あたしの一言に、美弥子さんもすぐに言いたいことを察したようで、カメラを下ろすと歩実に向かって呼び掛けた。 「歩実くん、せっかくだから、向こうの公園で撮影しましょう。その可愛いブルマードレスの写真を、ね」  歩実は真っ蒼になりながら――しかし生唾を飲んで、肯くのだった。   (続く)

Comments

ありがとうございます! こうご期待…

十月兔

歩実ちゃんの公園デビュー楽しみです💞


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