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「あたしの彼はベビーガール」(5)

  (5)  おむつ交換の前にあたしがしたことは、天井を確認することだった。すぐに目的のものを発見して、 「むむっ、こーんな場末のカラオケ店のくせに、監視カメラはついてるのね。生意気な」 「恭子ママ、口が悪い……」 「おっと、いけないいけない。歩実ちゃんの教育に悪かったわね」  たしなめる歩実を揶揄い返しつつ、あたしは彼のバッグからおしめ交換シートを取り出してソファに敷き、その上をポンポンと叩いた。 「歩実ちゃん、お靴を脱いで、ここに寝転んでちょうだい」 「うん」  歩実は赤い顔でうなずき、言われたとおり、シートを敷いたソファに横になる。  あたしはその正面に、ソファの座席に片膝をつくようにして立つ。そうするとちょうど監視カメラの角度からは、歩実のおむつカバーは陰になり――つまりはこれから交換するにあたって露出する下半身も、あたしの背中に隠れるという寸法だ。  口調もプレイモードに切り替えて、 「さ、すぐに取り換えてあげまちゅから、もうちょっといい子で待っててちょうだいね~」 「は、はぁい、ママ……」  すでに何度も繰り返されているにもかかわらず、まだ恥じらいを含んだ声で返事する歩実に、思わず笑みがこぼれる。うん、まだ完全に心まで赤ちゃんになり着ることができない、このくらいの状態が一番おいしいわね。 「最初にプリキュア衣装、脱がせてあげまちょうね~。せっかくの可愛いドレスが、ちっちで汚れたら大変だもんねぇ」  そういって、赤とピンクのプリキュアなりきりドレスの裾に手を入れると、ゆっくりとずり上げる。 ピンクギンガムにハート柄のおむつカバーが完全に露出し、さらにおへそ、脇腹まで露出させて、 「このくらいで充分かしら。くすっ、それじゃあ、デート用に当ててきてくれた可愛いおむつカバー、脱がせてあげるからね」 「うん……」  さすがにカラオケ店でのおむつ交換は恥ずかしいのか、真っ赤な顔で横を向く歩実。  パンパンに張ったおむつカバー――その左右に並んだスナップボタンに手を伸ばす。まずは右の一番上から順番に、  ぷつっ、ぷつっ、  音を立てて外してゆくと、かすかにアンモニアの匂いが強くなった。いやな匂いじゃない。むしろいまのあたしにとっては嗅ぎなれた、生活の一部のようなものだったけど、 「ちっちの匂い、強くなってきまちたねぇ。おもらし、いーっぱいしちゃったのかな?」 「う、うん。出かける前に、たくさんお水、飲んできたから……」  恥ずかしそうに告白する歩実に、あたしは意地悪く笑う。 「そうなんだ。くすっ、歩実ちゃんったら、そんなにおもらしして、おむつ交換してほしかったのね」  あたしのこの言葉は、半分は当たってるけど、半分は違う。 彼自身がおもらしして、おむつ交換をして欲しいのはあるだろうけど――もう半分は、あたしのためだ。  歩実がおもらししているところを見たい。  歩実がおもらししたおむつを、交換してあげたい。  そんなあたしの気持ちを汲んで、わざと水を多めに飲んできてくれたのだ。  けど―― 「う、うん……歩実、おもらししして、ママにおむつを交換してほしかったから、お水、飲んできたの……」  あたしたち二人にとっての、暗黙の了解。  彼が、おもらしをしたいからする。  あたしはそれを、交換してあげる。  それ以上、余計なことを言うのは野暮というものだった。 「えらいわよ、歩実ちゃん……」  あたしはかすれる声で言った。  右側のスナップをはずし、今度は左側のスナップボタンをはずしてゆく。  カラオケの個室は冷房が効いているはずなのに、じっとりと汗ばみそうなほどに体が熱くなってくる。  彼のほうも、昂奮してきているのだろう。意識してか、あるいは無意識か、口元に手をやって、親指をしゃぶり始めた。  ちゅぱ、ちゅぱ、  粘膜と体液が絡み、吸い付く音が響く。それはまるで口淫か、あるいは交合そのものの音のようで、あたしもいっそう昂ってくる。  ついにおむつカバーの左右がのスナップボタンが外れる。あとは前当てを取り除けて、左右の横羽を外すだけ――バリッ、という荒々しい音とともに、横羽を固定しているマジックテープを剥がす。  広げた太ももの間、彼の下半身に当たっているおむつがあらわになり、あたしはそれに手をかけようとして―― 「あの、失礼いたします」  ふいにドアが開かれて入ってきた女性店員に、あたしたちははっと顔を上げた。   (続く)


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