「あたしの彼氏はベビーガール」(1)
Added 2020-08-30 09:15:28 +0000 UTC(1) 近づくざわめきに、あたしは彼が、待ち合わせの場に現れたことを察した。 驚き。戸惑い。 好奇に目を丸くする人もいれば、異様に眉を顰める人もいる。 そんな反応の渦が、まるで台風のように勢いを増しながら徐々に近づいてくるのが、ベンチに座っているだけでも手に取るようにわかった。 なにしろここは館川駅北口、バスロータリーの上に広がるデッキの上。ところどころに前衛的なオブジェや植え込み、ベンチなどが並び、蜘蛛の足のようにあちこちに階段が下りている、いわば人の流れの大動脈である。いくら区外とはいえ、中央線の特急も止まる大きな駅とあって、人通りは馬鹿にできない。まして8月下旬の夏休み、それも土曜の昼下がりなのだから、ちょっとした地方の中心都市程度のにぎやかさだ。 そんな喧騒の間を、どよめきは波のごとく伝播しながら近づいてきて――あたしが座っているベンチから5メートルほど離れた場所を中心にして、止まった。 ――思った通りだ。 ゾクゾクと背筋に走る昂奮を押さえつつ、あたしはベンチからそっと首だけを動かして、ざわめきの震源地――待ち合わせ場所に指定したオブジェの前を見る。 いた。 待ち合わせの相手――あたしの彼氏が、そこに立っていた。待ち合わせまでまだ10分前ほどあるから、あたしが来ていないのは当然だと思っているのだろう。キョロキョロと探すこともなく、つまりはあたしがこっそり覗いていることに気付く様子もない。周囲の視線やざわめきに泣きそうなくらい恥ずかしそうな顔で、けれどどこか昂奮したようにしっかり前を向いて立ち、待ち合わせの相手――つまりあたしを待っている。 彼氏――そう、彼氏だ。 あたしも彼も、花の高校2年生。元は中学時代の同級生で、それぞれ別の高校に通っているのだが、なんだかんだあって恋人として付き合っている。うん、中1の時から夢見ていたこととはいえ、改めて「恋人」って考えると、感慨深いものがある。油断すると耳まで熱くなってくるあたり、あたしもまだまだうぶな乙女だ。 まぁ、当時のあたしは、初デートで彼にあんな服を着せるなんて、思ってもいなかっただろうけどね。 もったいぶるのはやめよう。 彼が着ている――あたしが着せた服は、タンポポのような淡い黄色のブラウスと、大きなイチゴ柄がプリントされたピンクのだるまロンパースだった。 ブラウスは大きな丸襟に、ピンクの刺繍で「Angelic Baby」のロゴが入り、ふちにはレース。花形ボタンの並ぶ前立ての左右にはピンタックがあしらわれ、その外側に小さなフリルが波打っている。肩にはギャザーが寄せられ、きゅっとすぼまった袖口には、イチゴのフエルト飾りがあしらわれていた。こんなブラウス、今どき女子小学生だって着ている子を探すのは難しいだろう。 さらに、だるまロンパース。 いわゆるサロペットに近いデザインだけど、まるでパンツかブルマーのように、太腿ぎりぎりまで丸出しにしているデザインと、クロッチ部分に横に並んだスナップボタンのせいで、誤魔化しようがないほど明確にベビー服だとバレてしまう。おまけに色はピンクで、わずかに濃いピンクでイチゴがプリントされたうえ、肩紐の付け根には赤いイチゴの飾りがついているのだから、この上なく幼い。ベビー服にしたって、もっと大人っぽいものはいくらだってある。 しかも下半身は、タオルを詰め込んだようにたっぷりと膨らみ、当てたおむつの枚数を物語っている。おそらく10枚以上当てた上、布おむつカバーで包んでいるんだろう。 頭には、同じくピンクにイチゴ柄プリントのボンネット。いわゆるロリィタアイテムでもあるけれど、だるまロンパースと合わせると完全に赤ちゃんである。 足元は、ヒールの付いたピンクのエナメルシューズ。身長152センチと、男子高校生としては小柄ながら絶対にベビー服を着る子供のものではない背丈が、さらに10センチ以上も高くなっている。たぶんあたしよりも高いくらいだ。白いレースの付いたショートソックスも、いっそう女児めいている。背負っているのは女児用のピンクのリュックで、中には替えのおむつやお尻ふきが詰め込まれているはずだ。 ――ああ、たまらない。 いま彼は、どんな気持ちでそこに立ち、あたしを待っているんだろう。 男子高校生でありながら、女児ベビー服の中でもとびっきりかわいいデザインのブラウスとロンパースを着て、おそらくはバスを乗り継いでここに来るまでずっと、スポットライトを浴びているかのようにたくさんの人に見られ、ひそひそと遠巻きに囁きかわされ、中には写真を撮る人までいる――ちょっとばかり肖像権の概念について説教したくなるけど――中で、うつむきもせずに彼らの反応を見ている彼は―― いったいどれだけ、感じているんだろう。 想像するだけでも、自然と唇がほころんでくる。顔についている唇だけではない。いわゆる下の口も、熱く疼きながら潤み始めていた。 女児ベビー服で人前に立ち続ける彼の姿を、このまま眺めているのもいいか、などと思いつつもやめておく。デートでわざと遅刻するというモテテクもあるらしいけど、あたしはそういうガラじゃないし、彼とそういう駆け引きをする気もない。 そして、何より――あたし自身も、一秒でも早く、彼と会いたかった。ベンチから立ち上がって、真っ直ぐ彼のところに近づいていき、 「お待たせ、アユミちゃん」 「あ――恭子、お姉ちゃん」 途端に、彼――歩実の表情が、ぱっと輝いた。いっそう赤くなったその顔は、まさに「赤ちゃん」だ。 「ううん、ちょうど、いま来たところだし――それにまだ、約束の時間の、前だから」 「くすっ、そうね。で、どう? 今日のお洋服は、気に入ってくれた?」 「う……うん。ちょっと、恥ずかしいけど……」 ちょっと、どころではないはずだ。いくら今まで、何度かベビー服で人前に出ているとはいえ、恥ずかしくて恥ずかしくてたまらないはずである。 だけど―― 「けど、気持ちいい?」 「っ!? う、うん……」 あたしの指摘に、歩実はますます赤くなってうつむく。きっとたっぷり当てたおむつの中で、すでに勃起したペニスが疼いているのだろう。 「さ、それじゃあ、デートに行きましょっか」 「う、うん!」 あたしは彼と手をつないで、駅前を歩きだした。周りの人のざわめきが、あたしたちを中心に動くのを感じながら。 (続く)
Comments
ありがとうございます~!
十月兔
2020-08-31 15:02:35 +0000 UTC新シリーズ!期待です!
mei
2020-08-31 14:56:39 +0000 UTCありがとうございます! 野外おむつ女装いいですよね~
十月兔
2020-08-30 13:49:51 +0000 UTC