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連載小説「やりなおし」(45)

 1-3.欺罔   (16) 「あ、あ――!」  上ずる声に、歩実は左手で机の上からティッシュを取り、火傷のように赤く腫れ上がった亀頭にかぶせる。そしてそのまま、果てよとばかりに右手を動かすと、 「ん、う――」  かつてないほどの快感に、ガクガクと膝が笑う。そのまま崩れ落ちそうになるのを必死にこらえながら、それでも歩実は精液と快楽を一滴残らず搾り取ろうとするかのように、右手を動かし続けた。  左手のティッシュが、どんどん重くなってゆく。それでも5回ほどの射精でようやくとまり、フィニッシュとばかり竿をしごいて尿道に溜まった精液までも出し切って、歩実は大きく息をついた。 「はぁっ、はぁっ……き、気持ちよかった……」  今日一日で溜まりにたまった劣情が、やっと解消できたことにほっとしつつも、 「うう、また、こんな変態オナニーしちゃった……しかも、あの子たちまで妄想に巻き込んで……」  「どよーん」と効果線つきで落ち込む歩実。 「はぁ……とにかく、後片付けしないと……」  射精直後とあって力のない声でつぶやきつつ、まずはすっかり萎えきったものをスクール水着の中に戻してから、アルコールタイプのウエットティッシュで手を拭く。  そして改めてスクール水着を脱ごうとしたところで、 「――わっ!?」  ふいに鳴り出したスマホに、歩実は思わず飛び上がった。  おそるおそる相手を見ると―― 「ゆ、佑奈ちゃん……?」  別れ際に、お互いに連絡先を交換したのだった。思わぬ相手だったが、もしかしたら何か連絡事項かもしれず、出ないわけにもいかない。歩実は一度呼吸して心を落ち着けてから、通話に出た。 「は、はい、佑奈ちゃん?」 「あっ、歩実ちゃん! もうおうち?」 「うん」  歩実はうなずきながら、ベッドに腰掛ける。もちろん佑奈から見えてはいないといえ、スクール水着を着たままというのは恥ずかしかった。 「どうしたの? 佑奈ちゃん?」 「えっと、あのね。歩実ちゃん、参加するかどうか、迷ってたみたいだったから……」 「う、うん」 「だからね、あたしは、歩実ちゃんと一緒に合宿行けるの、楽しみにしてるって、そう言いたかったの! 一緒におもらし、治そうね!」 「うん……あ、ありがとう、佑奈ちゃん」  少女の気遣いに、歩実は少し気が楽になり――逆に、迷いが生じてしまう。 (ここでやっぱり合宿に行かないなんてことになったら、佑奈ちゃんを、がっかりさせちゃうな……)  そんな歩実の心中を察したのか、佑奈はさらに、 「佑奈だけじゃなくて――その、お姉ちゃんも、歩実ちゃんが来るの、楽しみにしてるみたいだから……」 「えっ……恭子――お姉ちゃんも?」 「うん。お姉ちゃん、なんだか楽しそうだもん。だから、ね?」  嘘をついているようには聞こえなかったが、歩実は半信半疑で首を傾げ、 (ほんとに、恭子が……? ああもう、いったい、何を考えてるんだよ……) (こうなったら、合宿に行って、直接確かめるしか……) 「う――うん。あ、あたしも、合宿に行くから、一緒に、おもらし直そうね、佑奈ちゃん」 「うんっ! それじゃあ明日、一緒にね!」  通話が切れた後も、歩実はしばらくスマホを握ったまま固まっていた。 (そうだ――どんな結果になったとしても、恭子の本心を確かめないと! 合宿の間で機会を見つけて、何とか話をして……)  今の電話のおかげか、少しずつ、前向きな気持ちになっていく歩実。  そこへ、 「歩実、起きてるの?」  いきなり部屋の灯りがつき、ドアが大きく開け放たれた。  スクール水着を着たままの歩実は慌てて股間を隠し、 「ちょっ、母さん! 部屋に入る時はノックしてって――」 「いいじゃないの、別に。それに、ちゃんと歩実ちゃんになりきって――あら、スクール水着、着てたのね。うんうん、似合ってるじゃない」 「うっ……あ、ありがとう――」  真っ赤になってうつむく歩実だったが、 「そんなことより、明日の合宿、どうするの? 行くの行かないのって言ってたけど」  見下ろす母親に問いただされ、改めて唾をのむ。  そして、 「うん……あ、あたし、合宿に、行く――」   (続く)


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