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SS「逆転の日 ~幼稚園制服編~」(7)

  (7) 「んっふふー。さーマキちゃん、お着換えしましょうね」  井上さんは新しいおもちゃを手に入れたように楽しげに笑いながら、試着室のカーテンを閉めた。  狭い空間に女子と二人きりになる状況に、こんな時だというのに、ぼくの心臓が別の意味で破裂しそうになる。しかも井上さんは、まるでぼくが本当に幼稚園児の女の子であるかのように、服を脱がせようとし始めて―― 「はーい、脱いで脱いでー」 「ま、待ってよ井上さんっ!? 着替えなら一人で――」 「ダメダメ。年少さん――それも初めてのお着換えなんだから、お姉ちゃんに手伝ってもらうのが筋でしょ。どっちかって言うと、『リサお姉ちゃん、お着換え手伝ってちょうだい』ってお願いしてほしいくらい」 「うっ……さすがにそれ、想像すると気持ち悪すぎるんだけど」 「ええい、問答無用!」  次の瞬間、そう言った井上さんの手が電光のように閃いて、ぼくのズボンのベルトを外してずり下ろしていた。悲鳴を上げてズボンを穿きなおそうと手を下ろすと、背後に回った井上さんにシャツの裾を大きくめくられ、フードのようにかぶせられて視界が封じられる。慌ててそちらに手をやれば、今度はお留守になったズボンを足元まで脱がされ、仕上げとばかりにシャツを脱がされていた。  ひとつひとつ説明すると冗長だけど、実際にこれが行われたのはほんの数秒の出来事で――つまりぼくはあっという間に、トランクス一枚の半裸にされていた。 「ふふん、どーよ? あたしの早脱がせテクニック?」 「す、すごいけど、なんでこんなテクニックを……」 「こー見えて、いやいやするチビっ子を脱がせるのは慣れてるのよ。さ、早く下も脱いで、女の子用のショーツとキャミソールに着替えましょうねー」 「い、いやだああっ!」  最後の防衛ラインであるトランクスを押さえる。少なくともこうしていれば、前だけは絶対に死守できる――そう思っていたのだが。 「あらあら、マキちゃんったら、お着換えしたくないって駄々をこねてるの?」  試着室の外から、母親の声。どうやら妹のほうは、着替えが終わったらしい。 「しょうがないわねぇ。だったら――サキお姉ちゃんに、妹のお着換えを手伝ってもらいましょうか?」 「サ――」  とんでもない提案に、顔から血の気が引く。つまりそれは、サキに試着室に入られるということだ。さすがに妹に、下着の着替え――つまりは露出した下半身を見られるわけにはいかない。 「や、やめて、それは……!」 「だったら、大人しく着替えさせてもらっちゃいなさい。リサお姉ちゃんにも、ちゃんとお願いするのよ」 「う、ううっ……はい……」  ぼくががっくりとうなだれると、井上さんはにやにや笑いながらぼくを見て、 「んふふっ、いやー、お母様にもお墨付きをもらえてうれしいなー。というわけだからマキちゃん? 大人しくトランクスを脱いで、お姉ちゃんに着替えさせてもらいましょうねー」 「うう……っていうか井上さん、なんでそんなにノリノリなんだよ……ぼくを着替えさせるの、そんなに楽しい……?」 「うん、とっても! クラスメイトの男子が幼稚園の女児制服に着替えるなんて、めったに見られるものじゃないし。ま、さすがに運動部のゴリラ男子どもの女装はちょっと見たくないけど、マキちゃんならとっても似合いそうだもん。まして手ずから着替えさせてあげられるなんて、そりゃもう楽しくてたまりませんって」  舌なめずりせんばかりに言う井上さん。「男子」のフレーズに、ぼくは一つの逃げ道を思いついた。 「そ、そうだ、井上さん、彼氏! 彼氏とかいるんなら、ぼくを着替えさせるのはNGなんじゃ――」 「あ、それなら大丈夫よ。先月ちょうどカノジョと別れて、いまはフリーだから」 「か、かの――」  思わぬカミングアウトに驚いていると、井上さんは白い歯を見せて笑い、 「そ。あたし、もともとそっち系だし。だから心配ご無用。あ、チビっ子のでおちんちんも見慣れてるから、そっちの遠慮もしなくて大丈夫よ」 「チビ――って、こ、子供のと一緒にしないでよ!」  ぼくがいろいろな意味で真っ赤になりながら反論すると、 「おやー? 子供のとは違うってことは、マキちゃんひょっとして――おちんちん、おっきくなってるのかなー?」 「うっ……!?」 「なるほどねー。んふっ、そっかそっかー。マキちゃんったら、これから下着まで含めて幼稚園の女児制服を着るって状況で、おちんちんをオトナな状態にしちゃってるんだー。道理でさっきから前を押さえてる手が、お椀型になってると思った」 「そ、それは、その――」  ぼくは脂汗を流しながら股間を押さえ、何とかこれがおさまるまでの間だけでも時間を稼げないかと思考を巡らせる。  しかしその時、 「ねーねー! サキ、マキちゃんのお着換え、てつだいたーい!」 「ふふっ、さっそくお姉ちゃんらしくなってて偉いわね、サキちゃん。マキちゃんはリサお姉ちゃんに手伝ってもらってるから、もうちょっと待っててね。でも、そうね――あんまり遅いようだったら、手伝ってあげてちょうだい」 「はーい!」  試着室の外から聞こえてくる会話に、ますます焦りが募る。この状態で妹が入ってきて着替えることになったら、それこそ最悪の事態だ。  そんなぼくの苦慮を見透かして、井上さんは優しく――まるでお姉さんのような笑顔を浮かべ、 「さ、マキちゃん。今度こそ大人しく、お着換えしましょうね?」   (続く)


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