連載小説「やりなおし」(29)
Added 2020-08-03 08:35:04 +0000 UTC1-2.邂逅 (15) 「お、お母さん、行ってきます……」 「こら、歩実。小学生の女の子なんだから、もっと可愛く言いなさい。それに『お母さん』じゃなくて『ママ』でしょ?」 「は、はぁい……行ってきます、ママ……」 「はい、いってらっしゃい」 そんなやり取りをして、歩実は玄関を飛び出した。 着ているのは「Angelic Baby」のノースリーブシャツワンピース。白を基調に、ラインが入った紺の丸襟は背中側がセーラー風になっている。襟元には赤いリボンを結び、大きく広がった裾の丈は――膝上10センチくらいだろうか。 小学生とあって、頭につけるのは白いリボンカチューシャではなく、黄色い通学帽子。全体にふちがついた、女子用のものだ。背中に背負うのはランドセル――色はもちろん赤。足元は女子用のスニーカーに、白のレース付きハイソックスだ。 (恥ずかしい、恥ずかしい――) 顔を赤くしながら、歩実は道路に出る。すぐ外の道路ではご近所さんたちがおしゃべりしていて、すぐに歩実に気付いて挨拶する。 「おはよう、歩実くん。ふふ、歩実ちゃんって言ったほうがいいかしら」 「お、おはようございます……その、はい……」 「うふふっ、今日も可愛いお洋服がとっても良く似合ってるわね。本当に、小学生の女の子みたい」 「ほんとに、ねぇ。ちょっと前まで高校に通っていた男の子とは思えないわ」 「下着も女の子用なの? ちょっと見せてちょうだい」 「えっ!? その、はい――」 歩実は自分の手で、ワンピースの裾をめくりあげる。現れたのは、プリキュアのキャラがプリントされたピンクのインゴムショーツで、 「あら、あら、ずいぶん可愛いパンツなのねぇ。歩実ちゃん、何年生だっけ?」 「えっと――い、1年生、です……」 「じゃあしょうがないわね。うふふっ」 「でもちょっと膨らんでるのは、やっぱり男の子なのね」 「う、ううっ……」 少年の証によって膨らんだ女児用ショーツを眺めまわされ、歩実はいたたまれない思いをする。 そこへ、 「あゆみちゃん、おはよー!」 やってきた二人の少女は、歩実よりも30センチ以上も背が低い、本当の小学1年生。しかし歩実よりもはるかに大人びた格好で、スキニーパンツやショーパンを穿いている。 「お、おはよう」 歩実は振り返って返事をする――が、その拍子に下着も見られてしまう。少女二人はくすくす笑って、 「あー、また歩実ちゃんったら、可愛いぱんつはいてるー!」 「プリキュアのなんて、幼稚園の子みたーい」 10歳も年下の女の子たちに言われて、歩実は耳まで赤くなる。そんな彼の手を、少女たちはそれぞれ掴んで、 「さ、歩実ちゃん! 学校に行こう!」 「今日は水泳があるの、楽しみね! 歩実ちゃんもあたしたちと一緒に、スクール水着を着て――」 そして三時間目、女子更衣室で1年生の女の子たちと一緒にスクール水着に着替え、授業のあとはその日焼け跡が―― 妄想は次第に言語化すら怪しくなり、とぎれとぎれのイメージしか浮かばなくなる。しかしゆっくりと擦りあげられたペニスには、射精するのにじゅうぶんすぎるほどの燃料を与えられていた。 そして、 「あ、あ――!」 ついに限界を突破して、歩実は情けない声とともに、絶頂の雄叫びを上げた。 準備万端かぶせてあったティッシュに、大量の精液が吐き出される。ペニスがのたうち回るように脈動するたびに、ドロリと濃密な粘液が尿道を通って溢れ出し、強烈な快感が全身を痺れさせる。ガクッ、ガクッと腰が震え、チェアのスプリングが抗議するように軋んだ。 「はっ、はっ、はぁっ――」 一瞬にして妄想の霧は晴れ、ただ倦怠感を伴う多幸感と浮揚感に、全身が弛緩した。あらゆる熱量が射精とともに失われて、一気に低下した体温に鳥肌が立つ。それでも射精はすぐには止まらず、三度、四度と、次第に水っぽくなる精液を吐き出し続けていた。 ようやく噴出が止まった亀頭からティッシュを取り除けると、歩実自身が驚くほどずっしりと重たくなっていた。さらに竿をしごいて、尿道に残った分も拭き取る。 「あー……凄かった……」 ぐったりと脱力して喘ぎながら、歩実は恍惚とつぶやいた。 昨日今日と、女児服に昂奮して射精していたとはいえ、いずれも突発的、偶発的な射精であった。しかしいまのは違う。念入りに昂奮を高め、さらに自分自身の妄想も使って最大限の快楽を引き出した。文字通り精魂尽き果てるかのような射精は、今まで味わったことがない強烈なものだった。 そしてその反動もまた大きく、 (うう、女児服に昂奮するだけじゃなくて、我慢しきれず自分から妄想オナニーしちゃうなんて、ぼくって本当に、最低の変態だ……) ずーん、と効果音付きで落ち込む歩実。その一方で、 (そういえば……) オナニーを済ませて冷静になった歩実の頭に、一つの疑問が浮かぶ。 (何で恭子は、あの店の、あの売り場にいたんだろう……?) ドラッグストアに行くとき、自宅から2番目に近いところを避けた大きな理由――それはあの店が、恭子の家のすぐ近くだったからだ。 (万が一でも恭子と顔を合わせたくなかったから、わざわざ遠回りしてさらに遠いドラッグストアに行ったのに……) (しかも、どうしてよりにもよっておむつ売り場に……?) 理由を考えても判るはずもなく、歩実はティッシュをビニール袋に包んで捨てると、まずは陰部に触った手を洗いに、洗面所に向かうのだった。 (続く)