連載小説「やりなおし」(27)
Added 2020-08-01 07:48:56 +0000 UTC8.2 後半部分を修正しました。 * 1-2.邂逅 (13) 「はぁ……」 家に帰り着いた歩実はベッドにうつぶせに寝転がり、両腕で抱えた枕に顔をうずめて溜息をついた。 思い出しても、絶望的な気分になる。顔から火が出るなんて生易しいものではない。大声で叫んで走り回りたくなるような、いっそ存在ごと消えてなくなってしまいたくなるような、そんな恥辱だ。 昨日、合宿主催者のレイカにも話した通り、歩実はもともとお漏らししやすい体質である。本来であれば成長に伴って膀胱の容量が大きくなるはずが、生来の慎重居士もあって可能な限りお漏らしを回避しようと、水を飲むのを控えたり、こまめにトイレに行くようにして乗り切ってきた。 しかしそれらの対策がかえって災いして、膀胱の容量は小さいまま。卒業式直後でトイレに行く時間もなかったところへ、恭子を呼び出し、その言葉を口にしようとした緊張で一気に決壊し――悲劇が起きたのである。 「とりあえず、着替えよう……」 10分ほど枕に顔をうずめていたら、少し落ち着いた。 歩実は顔を上げてベッドから降り、クローゼットを開ける。頭が9割回っていないので、ほとんど惰性の動きであった。 だが開けた瞬間――そこに入っている女児服の数々に、歩実は思わず声を詰まらせた。 いずれも先程、自分で買ってきたものである。セーラーチュニックに、パフスリーブとキャミソールのセット、フリルシャツ、スカート、ワンピースにボレロ、ブラウス、ジャンパースカート――行く前まで入っていた男物のシャツやズボンは、一着も残っていない。 引き出しの中もとうぜん、女児用下着に入れ替えられていた。 「そういえば、母さんに整理をお願いしておいたんだった……でも、一着くらい残しておいてくれたって良かったのに……」 小さくため息をつく歩実。 その拍子に、クローゼットの扉の裏に貼られた鏡を見てしまう。 丸襟とピンタックの長袖ブラウス。ウサギの顔を模したサロペットティアードスカート。そして頭に結ばれた、大きなリボン。 (こんな格好で歩き回ってたなんて、改めて考えると、とんでもないことしてるよね……) 昨日は完全に出先だったため、知り合いに見られる可能性はほぼゼロだったが、今日はこの姿で近所を出歩いていたのである。 (スカートも短くておむつが見えちゃいそう――って言うかちょっと動くと見えちゃうし、何より、ブラウスもサロペットも、まるで幼稚園児みたいな格好……) (もしもご近所さんや知り合いに、見られてたらどうしよう……声を掛けなかっただけで、とっくにバレちゃってたり……) (……恭子には、一目でバレてたわけだし――) 「う、うぅ……!」 またしても恥ずかしさが臨界突破して、歩実はベッドに逆戻りする。 しかしうつぶせになったその股ぐら、おむつの中で強張っているものがベッドに押しつぶされて、歩実は慌てて体を浮かせる。 「ま、また、勃っちゃってる……」 昨日、今日と女児服を着て、射精してしまっている。自分が女児服を着て昂奮する変態なのだと認めるのは嫌で嫌でたまらなかったが、さりとて収まらない屹立をそのままにしておくわけにもゆかず、 「と、とりあえずどうなってるか、確認しないと――」 歩実は自分に言い訳しつつ、ベッドに腰掛け、サロペットスカートをめくる。 おむつの前側は大きく前方に張り出し、ただでさえ大きく広がっているティアードスカートをさらに押し上げるほど。内側ではすでに亀頭が剥けて、裏筋をもこもこの吸水パッドにこすりつけている状態だ。 「うわっ、こんなに……!」 この分では、普通のショーツを穿いていたらもっと露骨に目立ってしまうことだろう。いろいろな意味で、女装している間は紙おむつが手放せなくなってしまいそうだ。 「合宿中はずっと紙おむつを穿いてるしかないかな……それとも、何とかして、隠す方法は――そうだ」 ふと思いついた歩実は、クローゼットの中からたっぷりとレースの付いたスカパンを取り出す。そのまま穿くのはもちろん、スカートの中に穿いてパニエやドロワーズのようにも使える一品だ。 試しにサロペットの中に穿いて鏡を見ると、 「あ……いい感じ」 スカートにボリュームが出たのはもちろん、紙おむつのふくらみも隠してくれた。しかしこれはこれで、いっそう少女趣味な――まるでアイドルか、それに憧れる女の子が着ている服のような恥ずかしさもあり、 「んっ……」 紙おむつの中のモノが、また一回り大きくなる。 「うう、やっぱりぼく、女の子の服に昂奮する、変態なんだ――」 大きなリボンのカチューシャ。丸襟に、ピンタックのブラウス。ウサギの顔と、たっぷりのフリルがついたティアードサロペットスカート。そしてその裾から覗く、レースのスカパン。足元すらも、純白のレースショートソックスだ。 女児ですら高学年になったら絶対着ないような服を、男子高校生の自分が着ている――その恥ずかしさに悶えながらも、胸の鼓動は昂りとなって少年を漲らせ、煮えたぎるような劣情を吐き出す瞬間を待ち焦がれる。 「落ち着け、落ち着け――合宿では、出すわけにはいかないかもしれないんだから、我慢する練習をしないと――」 歩実は自分に言い聞かせながら、深呼吸を繰り返し、じっと鏡を見つめた。 (続く)