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連載小説「やりなおし」(23)

 1-2.邂逅   (9)  いろいろなものを我慢しつつ、改めて戻った売り場で女児服を選ぶ。  買い足したのは、パフスリーブブラウス2枚ととジャンパースカート1着。ブラウスはどちらも丸襟で、ハートの刺繍があるものと、ふちにレースがついたもの。ジャンパースカートは真紅で、大きくスカートが広がるAラインタイプ、裾の左右にウサギの顔がついたもの。  どちらも高学年の女子小学生――まして男子高校生が買うものでは絶対になかったが、 「お嬢ちゃん、可愛いのが好きなのよね? だったらこういうのはどう?」  と、店員に勧められるがままに購入してしまっていた。 (さ、さすがにもう、じゅうぶんだよね……?)  カジュアルなシャツやワンピース、スカートから、上品系のブラウスとジャンパースカートまで。合宿も含め半月ほどの女児生活を送るには足りる――というか、むしろ多すぎるくらいだ。 「ふふっ、服はもういいかしら?」 「うん……ちょっと、買いすぎたくらいで……」 「それだけ気に入る服が多かったってことよね。うんうん、お嬢ちゃんに喜んでもらえて、嬉しいわ」 「うう……」  半分以上は店員の勧めに乗せられて不要なものまで買ってしまった気がするが、意外なほどに後悔はない。せいぜい、手持ちの予算がちょっと心配なくらいだ。  しかし、女児生活を送るにあたっては、服と下着だけで済むはずがなく。 「アクセサリーとか小物、靴なんかも買わなくて大丈夫? 女の子っぽいものが欲しいんじゃない?」 「それは……うん」  拒み切れず、歩実は店内を移動する。その間ももちろん他の客――特に女児服売り場やティーンズファッションを見に来ていた少女たちに笑われるおまけ付きで、おむつの中の疼きはいや増すばかりだった。  まずは女児用アクセサリー売り場。男子には完全に無縁な品々も、こうしてみるとバリエーションに富んでいる。  ヘアピン、ヘアゴム、カチューシャにシュシュ。デザインも豊富で、リボンやレース、花にフルーツ、ボンボンにボールと揃っている。もちろん可愛らしいものから大人っぽいものまであったが―― 「お嬢ちゃんは、可愛い系がいいのよね? だったら、このあたりとかどうかな?」  店員がそう言って勧めたのは、幼稚園児から低学年くらいまで向けの棚。多種多様な飾りのついたヘアゴムやヘアピンが並んでいる。  その中で、ひときわ目を引いたのが―― 「ふふっ、それが気になる?」  歩実の視線を伺っていた店員はすかさずそれを取り、歩実の頭につける。すぐ近くの棚にあった鏡を向けて、 「うんうん、いいじゃない。そのサロペットもぴったりね」 「う……うん……!」  歩実は真っ赤になりながら、鏡に映る自分の顔と、たった今つけてもらったアクセサリーを見る。  それは、白いスカーフのようなリボンが結ばれたカチューシャだった。結び目で細くなった後、いったん大きく広がってから先端に向かって再び細くなるその形状は、まるでウサギの耳のようで、ウサギの顔がついたこのサロペットには、確かによく似合っていた。 「で、でも、さすがにちょっと、目立ちすぎるんじゃ……!?」 「大丈夫よ。むしろ――そのくらい目立たせたほうが、視点が上に行くから、体型をご蒲しやすくなるわよ?」  店員に小声でささやかれ、歩実は言葉に詰まる。 (く、口車に乗せられちゃだめだ! どうせまた、女の子っぽいものを選んで、ぼくが恥ずかしい思いをするのを楽しんでるんだから……) (でも――)  鏡に映る、大きなリボンをつけた自分を見ていると、胸の鼓動がいっそう強くなってくるのは否定できず、 「じゃ、じゃあ、これにする……けど、もう、これ以上は……!」 「あら残念。他にももっと、可愛いのがいっぱいあるのに」  そう言って、店員は可愛らしいヘアゴムの数々を見せる。イチゴ、リボン、ボールにハート――それらを髪の毛に結ぶことを考えると、またも腰の奥がギュッと締め付けられるような感覚に襲われて、 「い、いりませんっ……!」  かぶりを振ると、頭上のリボンも大きく揺れる。その動きがいっそう恥ずかしくて、歩実は思わずスカートの前の裾を押さえて前かがみになる。 「う、ううっ……」 「あら、どうしたの? もしかして、また――」 「ち、違います! そうじゃ、なくて、トイレ、どこですか――」 「え……? あ、はい、こっちよ、お嬢ちゃん。買い物カゴはそこに置いておいて」  店員もすぐに察して、歩実を案内する。一番早い経路なのだろうが、中央の最も広い――つまりは人が多く見通しもいい通路を前かがみに歩くと、 「あーっ! あのお姉ちゃん、おむつ穿いてるー!」 「しっ、ダメでしょ、カナちゃん!」  親の制止も間に合わず、遠慮会釈のない少女の声が響き渡る。  それがさらに人目を引きつけ、そこかしこから「あんなに大きいのに可愛い女児服を着て、しかもおむつが取れないお姉ちゃん」に対する好奇と揶揄の視線と、忍び笑いが向けられる。 「っ……!」  さらなる羞恥に、股間がきつく締め付けられる。痛みに、歩実はじっと耐えながら、それでも精いっぱい女の子らしい仕草を心掛けて歩く。 (もうちょっと、我慢、我慢……!)  そしてあと数歩。最後の曲がり角を入れば中央通路から外れ、人目から逃れられると安堵した、その瞬間だった。 「だ、だめっ……!」  緊張とともに排尿を押さえていたバルブまで緩み――竿の内側をくすぐられた次の瞬間、おむつの中が一気に熱く濡れていった。   (続く)


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