連載小説「やりなおし」(22)
Added 2020-07-27 07:20:34 +0000 UTC1-2.邂逅 (8) 「やっ、な、なんっ……!?」 あまりにも予想外の行動に、歩実は全身を痙攣させながら疑問の声を発する。 「さ、さっき、変な事したら、ダメって、言ってたはずじゃ……!」 「ふふっ、もしも本体を取り出してしてたら、商品や試着室に汚れがついちゃうし、匂いも強いから誤魔化せないけど、おむつの中なら大丈夫だもの。それに、ここまで来たら、出しちゃわないと収まらないでしょ?」 「で、でもっ……だったら、着替えればっ……」 「あら、そんなのもったいないじゃない。お嬢ちゃんだって、このままサロペットを着ていたいんでしょ? 大丈夫、ちょっとスカートが短くて、動いたり、かがんだり、下から覗かれたりしたらおむつが見えちゃうけど――そのくらいならだれも気にしないわ」 「やっ、そ、そんなっ……!」 恥ずかしい。みっともない。嫌だ。 こんなふりふりの女児服を着て、下におむつを穿いているところをたくさんの人に見られることを考えると、耐えがたいほどの恥辱が湧き上がってくる。 なのに――想像した途端、逆におむつの中のものはいっそう激しくサカり、店員におむつの上から軽くこすられただけで、あっけなく射精してしまった。 「あ、あ、あ……!」 「あら、あら」 腰の震えから察した店員は、驚いたように目を丸くして――すぐに雌豹の笑顔に戻る。 「やっぱりお嬢ちゃんったら、可愛いお洋服が大好きなのね。これを着てお出かけすることを考えただけで、こんなに簡単にイっちゃうなんて」 「はぁっ、はぁっ……そ、それは……」 「ふふっ、いいのよ。さ、これで目立たなくなったでしょ?」 「う、うう……はい……」 あまりにも荒療治だったが、出すものさえ出してしまえば猛りも鎮まる。おむつの前はすっかり縮こまり、改めてスカートを下ろせば、身長のわりにちょっと可愛すぎるブラウスとサロペットを着ている女児にもどる。 (うう、でも、おむつの中がべとべとで気持ち悪い……) 「ふふっ、じゃあ、そのままの格好でもうちょっと見て回ろうね、お嬢ちゃん」 「え……こ、この、格好で……?」 射精のため冷静さを取り戻した状態で改めて鏡を見ると、正気の沙汰ではない。女装外出による緊張と興奮で、どうかしていたとしか思えなかった。 しかし―― 「大丈夫よ、お嬢ちゃん。そのサロペット、実は90センチサイズから130センチサイズがメイン層の、トドラー向けの商品なんだもの」 「ひゃ、130センチまで……!? それってつまり、幼稚園児向けの……」 「ええ。いちおう150まで置いてたけどね。なかなか売れなかった、ていうのはそういうこと」 「そ、そんな……じゃあやっぱり、変過ぎるんじゃ……!」 「だから、逆に可愛い服を着てたほうが、女の子だと思ってもらえるから安心でしょ? いくらなんでも男の子がそんなふりふりなサロペットを着てるだなんて、思うわけないもの」 「う……」 「さ、ついでにソックスも、スカートに合わせて履き替えちゃいましょうか。レースの付いた白いソックス、さっき買ってたわよね?」 「は、はい……」 歩実は店員の誘導に載せられて、小さくうなずくのだった。 かくして歩実は店員とともに、試着室から店内へと戻った。すでに11時近く、店内は先ほどより混雑し始めて、身長152センチながら幼稚園児向けデザインのサロペットを着ている歩実は、いやがおうにも目立つ。再び先ほどの女児服コーナーで、上品系のブラウスやジャンパースカートを見ていたのだが―― (ねぇねぇ、あの子……) すぐ近くのティーンズファッションコーナーにいた中学生くらいの少女たちの、遠慮のない視線とささやき声が、歩実の耳にも届く。 (わぁ、かっわいいー。あたしたちより大きいのに) (小学生かな? でも、格好は幼稚園の子みたーい) さらにスカートの中まで見えているようで、 (しかも、下に穿いてるの、もしかして紙おむつ?) (くすくすっ、あんなにおっきいのに、まだおむつが取れないのかしら) (でも可愛くて似合ってる~。ちょっとプレイっぽいけど) (プレイってなによー。ん? でもあの子、身長のわりに胸なくない? 髪も短いし、まさか――) (いやまさか……あんな格好してるのに、男の子なわけないじゃん……) (だ、だよねー。いくらなんでも、ねぇ?) 笑いさざめく少女たちに声に聞こえないふりをしながらも、歩実は耳まで真っ赤になる。本当は小学生どころか高校生――つまり彼女たちより年上の、しかも男なのだ。いたたまれない気持ちでいっぱいになるが、 「変に反応するほうが、怪しまれるわよ。お嬢ちゃん」 「は、はい……」 店員に揶揄われて、目の前の商品に集中しようとする。 しかしおむつの中では、先ほど射精したばかりのペニスがいまなお痙攣を続けていて、歩実の脳から理性と判断力を奪い続けていた。さらに、 (は、恥ずかしすぎて、またおもらししちゃいそう……!) もう一つの破局の足音もまた、彼の身に迫っていたのだった。 (続く)