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SS「逆転の日 ~幼稚園制服編~」(3)

  (3)  妹の幼稚園の制服は、大きな丸襟のブラウスに、ダブルボタンのジャケット、吊りスカートとリボンと言う、いかにも幼稚園児らしい可愛らしいものだ。小物は定番の名札入れに、黄色い通園帽子と通園バッグ。遊び着用のスモックもある。  男子高校生の自分が、そんな幼稚園の制服を一そろい購入する――恥ずかしさはもちろんあったけど、喜びのほうが次第に大きくなってくる。 「ジャケットと吊りスカート、リボンは一点ずつでよろしいですね。学年は、どうなさいます?」 「が、学年……?」 「ええ。年少組、年中組、年長組でそれぞれデザインが違うのは、ご存知ですよね?」 「は、はい……」  「とうぜん知っているだろう」と言わんばかりの確認に、ぼくはちょっと赤くなる。  文月さんは幼稚園のパンフレットを取り出して、「制服」のページを開く。そこには年少組から年長組まで、3学年分の制服が掲載されていた。  年長組――つまり来年度、早紀が着ることになる制服は、紺のジャケットとスカートに、赤いリボンを結ぶ大人っぽいもの。女子小学生への階梯として、ふさわしいデザインと言えた。  年中組――つまり今年度、早紀が着ていた制服は、水色のジャケットとスカートに、ピンクのリボンを結ぶもの。幼さと上品さを合わせたデザインだ。  そして、年少組――  ジャケットもスカートもピンクでリボンが黄色と言う、ある意味で思い切ったデザイン。しかしピンクの色が淡く、デザイン自体も上品なため、安っぽくはなっていない。  正直どれも可愛くて、一つになんて選べずにいると――妹が年長組の制服を指さして、 「早紀はこれがいいと思う!」 「ふふっ、早紀ちゃんは、お兄ちゃんとお揃いがいいのね」 「うん! でね、一緒に幼稚園に通うの!」 「あらあら、たのしそうねぇ。お母様は、どれがいいと思われますか?」 「そうねぇ……お母さんは、もうちょっと可愛いほうがいいと思うから、年中組の制服を推そうかしら」 「ふふっ、年中組の制服、保護者様からの人気が高いですね」  妹は、年長組。  お母さんは、年中組。  それぞれ異なる学年の制服を推す中で、 「さぁ、お兄ちゃんは、どれがいい?」  文月さんに促されて、ぼくが指さしたのは―― 「ふふ、ふふふっ……」  ぼくの選択に、文月さんは嬉しそうに笑う。 「やっぱりお兄ちゃんは、年少組の制服がいいんですね」 「う、うん……」  真っ赤になりながらも、ぼくはうなずく。  デザインの幼さもさりながら、最下級生の制服――その魅力に、どうしても抗えなかったのだ。 「お兄ちゃん、年少さんになるの?」 「う、うん……」 「そっかー、じゃあ、これからお兄ちゃんは、サキの妹だね!」 「う……」  幼稚園児の妹から「妹」扱いされる恥ずかしさに、また痛いほどに心臓が鳴る。  お母さんは苦笑いして、 「ほらほら、早紀ちゃん、まだ気が早いわよ。お兄ちゃんが早紀ちゃんの妹になるのは、制服ができてからのお楽しみ。ね?」 「はーい!」 「ふふっ……じゃあ、ブラウスや下着類の数は、どうされますか? たまに着るくらいなら、1枚で充分だと思いますが」  判っているのだろうに、文月さんはあえてそう訊いてくる。  でも僕は恥ずかしさをこらえて、こう答えるしかなかった。 「そ、その……洗い変えで、毎日着られるように、2枚か、3枚ずつで……」 「あらあら、ふふっ、かしこまりました。おうちではずっと、幼稚園児になりたいのね」 「っ……は、はい……」 「体操着は、どうします? 幼稚園児になりきって、お遊戯したり、運動したりするのにはぴったりよ」  体操着はそれほど変わらないのでは――と思いつつ、「幼稚園児になりきって」と言われると誘惑には勝てない。 「じゃ、じゃあ、それも……」 「ふふっ、そう言ってくれると思っていたわ。ちなみになんだけどね――」  文月さんは悪戯っぽく目を輝かせて、ぼくの目を覗き込む。 「いまはもうみんなハーフパンツになっちゃって、だーれも着てないんだけど、幼稚園の体操着の中にはブルマーもあるの。お兄ちゃんにはそっちの方が、気に入るんじゃないかしら?」 「ぶ、ブル……!?」  ぼくがもう小学校のころには絶滅していた、女子用の体操着。  幼稚園でもとうぜん絶滅したものと思っていたが、形だけとはいえまだ残っていたらしい。 「どうする? 普通のハーフパンツにするか、それとも――」  含みを持たせて語尾を文月さんの誘惑に、抵抗できるはずもなく。 「じゃ、じゃあ……ぶ、ブルマーで、お願いします……」   (続く)

Comments

ありがとうございます! 逆転シチュ…!

十月兔

妹になっちゃうのは、楽しみです。


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