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SS「逆転の日 ~幼稚園制服編~」(1)

  (1) 「妹の制服を買いに行くから、あなたも付き合いなさい」 「はぁ? なんでぼくが……」 「たまにはいいでしょ。駅前でお昼にするつもりだから、ついてらっしゃい」 「はーい」  3月末の週末。お母さんから朝一番にそう言われて、ぼく――浅井真紀は渋々肯いた。さいわい、今日は特に予定も入っていない。家でボーっとしているだけよりも、買い物に付き合ったほうがまだ有意義だろう。 「来年から、ねんちょーぐみになるの!」  行く道すがら、妹は嬉しそうに言っていた。私立の幼稚園で、学年ごとに制服が違うため、新年度のために新調しなければならないのだ。 「ふーん、早紀も大きくなったなぁ。ついこの間まで、おむつも取れなかったのに」 「おむつの話はいわないで! おにいちゃんのいじわる!」  ……などと他愛のないやり取りをしているうちに、制服店までやってきた。  ふづき制服店。駅近くにあって、近隣学校の制服を網羅している店だ。ぼくも中学、高校とここにお世話になった。  ガラス張りのウインドウには、男女セットで制服がディスプレイされている。ブレザー制服、詰襟とセーラー服、襟なしジャケットの小学校制服。ぼくは内心を悟られないように、そっとディスプレイから目をそらして、店内に入っていった。 「いらっしゃいませー」  店内に入ると、店員の文月さんが出迎える。ポニーテールにした、見た目は大学生くらいの女性だ。もっとも、ぼくが中学の制服を作る時にお世話になった4年前と、ほとんど容姿が変わらないから、実年齢は判らないんだけど。 「本日はどのようなご用向きでしょうか?」 「幼稚園の制服を買いに来たんです。**幼稚園なんですけど」 「はい、本店での取り扱いがございます。ではこちらで、採寸とご注文を――」  店の奥、やや広くなっているスペースのテーブル席に案内され、妹が採寸されているのを待ちながら、ぼくはぼんやりと店内を見回す。  お店の中にもいくつか、制服を着たマネキンが置いてあったけれど、大半は棚に平置きされていたり、ハンガーにかかったりしている。シャツ、ネクタイ、リボン、ズボンにスカート――女子用のほうが色柄が多くて、ついついそちらに目が行きそうになる。  視点を戻すと、妹の採寸も終わったようで、改めて制服の注文に話が移っている。 「では、**幼稚園の制服セットですね。ジャケットが一点、サスペンダー付きのスカートが一点、リボンが一点。いずれも年長組用で、間違いございませんか?」 「ええ、お願いするわ」 「スモックも年長組用になりますが、何枚ご購入されますか?」 「そうね……洗い替え用に、二枚お願いしようかしら」 「かしこまりました。体操着は、どうされますか?」 「確かそれも、学年によって違うのよね。なら今までと同じものを、一そろいお願いするわ」 「シャツにハーフパンツ、ジャージの上下ですね。ブラウスやインナーはどうなさいますか? こちらは学年による区別はありませんが」 「そうね……新学期だし、それも新しくしようかしら。それぞれ、3枚ずつもあればいいかしら」 「では長袖ブラウス、ソックス、キャミソールとショーツを、それぞれ3点ずつですね。帽子やバッグと言った小物類はどうしましょう?」 「それはまだ綺麗だから、今回は見送らせてもらうわ」 「かしこまりました。名札、帽子、通園バッグはなし、と。以上でよろしいでしょうか?」 「ええ、妹の分は、これでいいわ」  母親の言葉に、いっしゅん引っかかる。しかし口をはさむタイミングがないまま、話は思わぬ方向に移っていった。 「ところで――制服って、何着でも購入できるのよね?」 「はい。幼稚園に通っているお子さまがいらっしゃるご家庭であれば、何着ご注文なさっても大丈夫です」 「サイズが違っても?」 「ええ。成長を見越して、大きいサイズをご購入されるお客様もいらっしゃいますから」 「大きいサイズって、どのくらいお願いできるのかしら?」 「オーダーメイドなら、最大で180センチまで対応してます。そこまで行くとブラウスからになるので、やや割高になってしまいますが、160までだったらそれほどでもありませんね」 「まぁ、それは助かるわ」  母親はくすくす笑ってから――ふいにぼくのほうを見て、爆弾を投下した。 「じゃあ――例えば、お兄ちゃんのサイズの幼稚園制服も、お願いできる?」   (続く)

Comments

ありがとうございます! 乞うご期待…!

十月兔

タイトルと明らかに大きい制服 楽しみにさせていただきます

田中ハイドロ

ありがとうございます!

十月兔

楽しみです


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