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連載小説「失禁改善合宿(仮)」(14)

 1-1.奇策   (14)  ごく少量の漏出が、尿道を走るこそばゆさ。それは文字通り呼び水となって、膀胱に溜まっていたものが洪水のように溢れ出す。ほんの小さな亀裂が圧力によって一気に押し広げられ、被害を拡大させてゆくその有様は、まさにダムの決壊をほうふつとさせた。  たちまち腰回りが熱くなり、逆に全身からは血の気が引く。 「あ、あ、あ……!」  1年半前のトラウマと不可分のその感覚に、歩実は絶望の声を漏らす。 この後の展開もわかっていた。溢れ出した小水が下着を濡らし、内腿から膝、ふくらはぎへと流れ落ちてゆく――服はべったりと肌に貼りつき、小水と屈辱にまみれる未来予測に、歩実はぐっと唇を噛む。  しかし、そうはならなかった。  脚へと被害が出ていないことに拍子抜けした歩実は、ワンピースの下で膨らんでいるシルエットに、その理由を察する。 「え……あ、そうか……ぼく、おむつしてたんだった……」  穿いたままだった女児用の紙おむつが、それ以上外に漏らすことなく、小水を受け止めてくれていたのだ。股間から会陰部、お尻にかけてじっとりと熱くなるのは同様だが、脚や服への被害はない。ただ匂いだけはどうしようもなく、かすかなアンモニア臭が鼻をついた。  とはいえ、普通の下着だった時の惨劇に比べればはるかにましだ。歩実はほっと胸をなでおろし、 「た、助かった……まぁ、これはこれで、恥ずかしいって言うか、情けないんだけど……」  赤い顔で呟きながら、ワンピースの前をめくって、被害状況を確認する。  おむつの吸水パッドはパンパンに膨れ上がって、ずっしりと重く垂れさがってはいるが、太腿への漏水はない。女児用のやや小さいサイズの紙おむつではあったものの、しっかり受け止めきれたようだった。逆に言えば、それだけ歩実の膀胱容量が少ないのだが。  そしてもうひとつ。おもらしの洗礼を受けたおむつに、目に見えて大きな変化があった。 「は、ハートに、文字……?」  紙おむつの股間部分についていた、ひときわ大きなピンクのハートマーク。  その中心に、先ほどまではなかった黄色い文字が書かれている。反対側からなので、とっさに読めずにいると、 「あら、歩実。もしかしておもらししちゃったの?」  階段を上がってきた母親に、 「えっ、あ、そ、その、別に……」  歩実はとっさにスカートを下ろして、何とかごまかそうとするが、 「隠してもダメよ。膨らんだおむつにおもらしサインが浮かんでるの、ちゃんと見えたんだからね」 「お、おもらしサイン……!?」 「ええ。おむつのハートに、『おもらししたよ』って書いてあったでしょ?」 「う……あれ、おもらしサインだったんだ……」  ワンピースをめくって確認してみると、確かに黄色い文字で「おもらししたよ」と書かれている。普通に考えれば、自分の口で伝えられる年齢の子が対象なのだから必要ないのだが、中には恥ずかしがっておもらしを隠そうとする子もいる。これは、そんな子のために作られた製品だった。 「とにかく、かぶれてかゆくならないうちに、替えのおむつを出して、おむつを捨てるためのビニール袋を取って、シャワーを浴びてらっしゃい。先生にいただいたの、まだ何枚かあるんでしょう?」 「う、うん」  歩実は不承不承肯いて、替えのおむつとビニール袋を持ち、浴室に向かう。小水と精液に濡れてずっしり重くなったおむつはビニール袋に入れ、汚れた下半身を中心に洗いながらシャワーを浴びると、急に冷静さが戻ってくる。 「はぁ……疲れた……」  思いが呟きとなって漏れる。しかし同時に、今日のことがほんの序の口に過ぎないことも理解していた。 「明日からは、本格的に――女の子になるために、いろいろ買いに行ったり、勉強したりしないといけないんだよなぁ……」  母親が乗り気だったこともあり、「女子小学生生活」はかなり本腰を入れたものになりそうだった。まるきり協力してもらえないよりはましとはいえ、男子高校生の歩実としては恥ずかしいし、複雑な気持でもある。 「でもってその後は、合宿で――男だって、バレないようにしないと……」  シャワーを浴びたまま、目を閉じる。  不安はあったが、今さら引き返す気はなかった。 (大丈夫、ちゃんと可愛い服を着て、お化粧もして、女の子らしく振舞えば、女子小学生に見えるんだから――あの、コインランドリーのお姉さんみたいに……) (それに、まさか他の参加者だって、男子高校生が女子小学生の振りをしてるだなんて、夢にも思わないだろうし……)  そして、なにより。  まぶたの裏に一人の少女の姿を思い描き、歩実は決然と呟く。 「ぼくは――絶対に、おもらしを、治さなくちゃいけないんだから……もう2度と、あんなことにならないために……!」  きゅっ、と力強くシャワーを止めて、歩実は浴室を出ると――再び紙おむつを穿き、白いワンピースに着替えるのだった。   (続く)


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