連載小説「失禁改善合宿(仮)」(13)
Added 2020-07-17 10:01:08 +0000 UTC1-1.奇策 (13) 「っ!?」 ワンピースの裾を咥えているため声も出せないままに、歩実はドアの方を振り返る。 すでにドアを開けて見られていたかと思って肝が冷えたが、入り口はきちんと閉まっていた。安堵しつつも、少年の脳はめまぐるしい勢いで回転を始めていた。 母親は基本的に遠慮がない。歩実が中学に上がった直後から、部屋に入る時にはノックしてからにしてほしいと何度言ってもきかず、ノックした次の瞬間には開け放っているタイプである。じっさいに開けられて困るようなやましいことをしている場面はほとんどないのだが、息子のプライバシーにはもう少し配慮してほしい歩実だった。もちろん、ドアには内側からかかる鍵などついていない。 つまりどういうことかというと――今この瞬間も、ドアが開いて母親が顔を出す危険性があるのだ。 進退窮まった歩実は、とっさに勃起を、乱暴に紙おむつの中に押し込んだ。 その、結果。 「あ、あっ――」 よりにもよって、それが最後のひと擦りになってしまう。押し込んだ拍子に竿が圧迫され、おむつの内側の吸水帯に亀頭がこすれて、そのままおむつの中へ、小水のような勢いで精液が噴出した。 「っ、う――!」 目が眩むほどの快感に、思わず股間を押さえる。体温と精気を根こそぎ持っていかれるような感覚と、今まで経験したこともないほどのオーガズム。 (す、すごい、気持ちいいっ……! マスターベーションって、こんなに気持ちよかったんだ……) (で、でも、今は喜んでる場合じゃなくて……!) 恍惚に流されそうになるのをぐっとこらえて、歩実は咥えていたワンピースのスカートをおろす。 まさに間一髪。スカートを下ろして裾を整えたその瞬間、音を立てて入り口のドアが大きく開かれ、無遠慮な闖入者――つまりは母親が姿を現した。 「どうしたの、着替え終わったなら、早く下に降りてらっしゃいよ」 「そ、その、裾を、整えてたから――」 ごまかしつつ、下半身を見下ろす。どうやら怒張は収まり、おむつの中で目立たなくなってくれたようだ。やや強引な射精だったせいか、いまだにピクピクと疼いていたが。 (うう、それはそれとして、やっぱり恥ずかしい――) お嬢様風の、真っ白いワンピース。着心地自体は悪くないものの、とうぜんスカートには違和感があるし、まして母親に見られていると、股間の疼きがいっそう激しくなる。 思わず両手で前を押さえると、 「ふふっ、そんなにスカートを気にするなんて、やっぱり男の子ね」 誤解したようすの母親に、歩実はこれ幸いと便乗する。 「しょ、しょうがないじゃんか。スカートなんて穿かないんだから……」 「でもこれからは、スカートでの生活に慣れて行かないとね。……うん、でも、なかなか良いじゃない。思ってたより、ずっと似合ってるわ」 「う……あ、ありがとう……」 じろじろと見られて、歩実はまた赤くなる。 容姿を褒められるなど、これまでの歩実の人生ではまずなかったイベントだけに、恥ずかしさと、そして一抹の嬉しさとに背筋がむずがゆくなってくる。褒められているのは男子としてではなく女装姿なのだが、それすらも決して悪い気分ではなかった。 「で、でも、その、まだお化粧とかもしてないし、女の子に見えるって程じゃ――」 「うーん、そうねぇ。いまのままでも充分だとは思うけど、確かにしたほうが、オシャレな感じはするわね」 母親はうんうんとうなずいていたが、 「ま、そのあたりも色々考えなくちゃいけないから、とりあえず下にいらっしゃい。飲み物は用意してあるから」 「はーい」 ようやく背を向けて部屋から出ていった母親に、歩実はほっと息をつく。 しかし落ち着くと、改めて気になることが―― 「うう、まだおちんちんがピクピクする……! おまけに、おむつの中がべとべとで気持ち悪い……」 おむつ越しに触ると、陰部の周りにねばねばぬるぬるとした体液がまとわりついているのが分かった。できればもう一度取り出して、この疼きを止めたり、おむつの中を拭いたりしたいところだったが、早くいかないとまた母親が乗り込んでくるに違いない。 「う……が、我慢して、行くしかないか……」 とにかく一度下に降りて、話を済ませた後に何とかしよう。歩実は下半身の不快感をこらえながら、ワンピースの裾を揺らして、下に降りて行った。 ――階段を降りるたび、ワンピースの裾がふわりと浮く感覚は、ほんのちょっとだけ楽しかった。 ジュースを飲みつつ、今後の生活について一通りのことを決め終えた歩実は、ようやく二階に上がることを許された。母親はまだしばらく、「娘」の姿を見ていたいようだったが、さすがに恥ずかしい。 「はぁ、疲れた……」 自室に戻ってすぐ、ドアにもたれかかって大きく息をつく。 目まぐるしい一日だった。ずいぶん長い時間が経っているような気分だったが、考えてみれば、事務所に到着してまだ半日も経っていない。その間に、女児服を着せられたり、化粧されたり、家に帰ってからも股こうして、女児服を着せられて―― 「んっ……!」 考えていると、また紙おむつの中が疼く。先端をつねられているような痛みは射精の余韻だろうが、強い尿意を感じたときの感覚にも近く―― 「そ、そういえば、おしっこ……!」 致命的な忘れ物を思い出した時のように、歩実はさぁっと青ざめた。急いで廊下に出ると、足早にトイレへと向かう。 事務所で紙おむつを穿いてから、およそ半日。考えてみれば一度もトイレに行っていない。もともとなるべく水分は取らないようにしていたが、それでもある程度は膀胱に溜まっている。極めつけに、さっき冷たいジュースを飲んだせいで、気付かないうちに一気に尿意が高まって、 「あ、あ……!」 トイレのドアノブに手をかけた、まさにその瞬間。 限界に達した尿意が、ついに決壊の時を迎えた。 (続く)