連載小説「失禁改善合宿(仮)」(12)
Added 2020-07-16 10:40:33 +0000 UTC1-1.奇策 (12) それは、避暑地のお嬢様が着るような清楚なワンピースだった。 色は一点の曇りもない純潔の白。丸首にノースリーブとシンプルなシルエットながら、それぞれに白いフリルがあしらわれているため安っぽい印象はない。さらに前立ての一番上には細いリボンが結ばれ、胸元はピンタックとレースのあしらわれたヨーク襟、ウエストの左右から紐が伸びていて、大きく広がったスカートの裾にもフリルがついている。 「う……」 あの時はろくに見もせずに断ったが、中学生の息子にこんなものを着せようとしていたのかとげんなりする。もちろんいま着ることを考えても恥ずかしいのだが、「合宿前に女装に慣れるため」という大義名分がある以上、断れるはずもなく―― 「じゃ、次はこれをお願いね」 「う、うん……」 歩実はせめてもの抵抗でため息をついて、ワンピースを受け取るが、 「でもこれ、サイズ合う?」 「ちょっと大きめの150サイズを買ったから、まだいけるんじゃないかしら」 「あ、そう……」 最後の断る口実すら潰されて、がっくりと肩を落とす。 と、さんざん嫌がるようなポーズを取っては見せていたものの―― (こんなお嬢様みたいな白いワンピースを、着るんだ……!) 手の中にある服を見おろしていると、心がざわつく。それは単なる羞恥や嫌悪ではなく、間違えようのない高揚感。「男の自分でも女の子のように可愛くなれる」という、禁断の遊戯にも似た背徳感だった。 「じゃ、じゃあ、とりあえず着替えてくればいい?」 「ええ。下で飲み物を入れ直して待ってるから、着替えてきてちょうだい」 「う、うん……」 歩実はワンピースを持って、再び二階に上がる。 (母さんが喜びそうだとは思ったけど、あんなには社がなくたって……) (まぁ、「女子小学生の振りをするなんてとんでもない!」って怒られなかっただけ、ましなのかもしれないけど――って、いや、合宿に行かなくて済むんだから、そっちのほうがよかったのでは……?) (うーん……ま、考えるだけ無駄か) 部屋に入って、先ほどと逆に女児服を脱いでゆく。紙おむつ一枚になると、これはこれで女装しているときよりも恥ずかしく、歩実は急いでワンピースのボタンを外して身につけた。 「う……けっこう、ぴったりしてるな、これ……」 サイズはおなじ150。しかしTシャツと違って伸縮性のない、コットン生地のワンピースは、思っていたよりも窮屈な着心地だ。 そして上半身とは対照的に、腰から下は大きく広がるスカートが落ち着かない。膝の半ばほどはあるため、中が見える心配はないのだが、 (やっぱりスカートって、すぅすぅしてて落ち着かない……) (毎日穿いてたら、慣れるようになるのかな……? いや、慣れたくないけど……) 考えながら、再び全身鏡の前へ。 お嬢様風の白いワンピースを着た自分の姿を、 「これ……ぼく、なんだよね……」 いまだに信じられない思いで見つめる。首から上は確かにいつもの自分なのに、真っ白なワンピースを着ていても何の違和感もない。 「男子高校生なのに……こんなワンピースを着て、女の子に、なりきって……これから合宿までの一週間、ずっと――」 「そしてその後は、また一週間、本当の女子小学生たちと一緒に、合宿に――」 不安、羞恥、そして一抹の倒錯感――それらが入り混じった感情が心を乱し、腰の奥にギュッと締め付けられるような痛みが走って、 「うっ……」 歩実は前かがみになり、股間を押さえた。それは何気ない仕草だったが、手に触れたものの硬さに、思わず息を飲む。 「え……ま、また……?」 紙おむつの中で強張る、雄の器官。お嬢様風の純白ワンピースにも、女児用紙おむつにもおよそ似つかわしくないものが、満ち満ちた劣情によって硬く張りつめている。 「な、なんでおっきくなってるんだよ……あの時みたいに、触られたわけでもないのに……」 コインランドリーでの勃起は、女性に触られたせいだと思っていた――いや、そう思おうとしていた。可能性としては頭をかすめたし、レイカにも指摘されたが、16歳の少年としては認めたくなかった。 しかしいま、触ったわけでも、触られたわけでもないのに、彼の息子は痛いほどに激しく怒張している。この期に及んでは認めざるを得ない。 「ぼく……女の子の格好をして、昂奮しちゃってるんだ……」 愕然と凍り付く歩実だったが、いつまでも固まっているわけにはいかない。勃起は今やおむつの前を押し上げるほどに大きくなって、フリルスカパンと違ってボリュームの乏しいワンピースに、不自然なふくらみが浮かび上がってしまっている。 「と、とにかく、早く、何とかしないと……」 目を閉じて深呼吸を繰り返す。ふだんの突発的な症状なら、たいていこれでなんとかなるのだが――よほど激しく昂奮しているのか、一向に収まりそうにない。 「っていうかこれ、合宿で勃起しちゃったら、かなりまずいんじゃ……レイカ先生は、おもらししたことにしてごまかすって言ってたけど……」 言いながら、とりあえずスカートの上から触ってみる。分厚いおむつの吸水帯ごしだと、掴んだり握ったりすることは不可能なため、ごしごしと擦る程度のことしかできない。しかしそんなマッサージは、かえって局部の血行を良くして、いっそういきり勃足せるだけの結果に終わった。 「はっ、はぁっ……や、やっぱり、射精しないと、収まりそうにないや……」 下で母親が待っていることを考えると、あまり時間はない。歩実は思い切ってワンピースの裾を口に咥えると、露出した女児用おむつをずり下ろした。 「っ……!」 途端に、すでに包皮すら剥けた怒張が屹立する。先端から溢れた先走りが露を結び、すぐに表面張力の限界を突破して、亀頭から裏筋へと這い降りてゆく。 「はやく、はやくっ……!」 歩実は性急にペニスを握る。まるでずっと愛撫を受けていたかのように準備万端のそれは、ちょっと触っただけでも大きく竿全体を震わせて、射精の瞬間をいまや遅しと待ち構えていた。 (あとはこのまま、数擦りすれば――) 欲情に飲まれそうになる意識の中で、最後に残った理性で周囲を見回す。出したものを処理するためのティッシュペーパー――テーブルの上にあるそれに手を伸ばしかかった、その瞬間だった。 「ちょっと歩実、遅いじゃない。何してるの」 響き渡った母親の声に、歩実は背筋を凍らせた。 (続く)