連載小説「失禁改善合宿(仮)」(9)
Added 2020-07-13 07:52:24 +0000 UTC1-1.奇策 (9) 「えっ――」 歩実はとっさに、反応できなかった。 接近する女性の体。ふわっと動く空気に、化粧品と体臭の混じった甘い匂いを感じた次の瞬間、歩実の股間に手が触れていた。たっぷりとしたフリルスカパンの上から、紙おむつ越しにその下に生えている少年の部位に触れられて―― 「な、な、なにするんですかっ!?」 痴漢された少女のように叫んで、歩実は飛びのくように女性から距離を取った。 「ご、ごめんなさい!」 ハルも自分の過ちにすぐ気づいたようで、すぐに謝る。しかし、まるで触れたものが信じられないとでもいうかのように、左手で右手首を掴んでじっとその手のひらを見つめていた。 「ま、まさか本当に、男の子だったなんて……!」 そんな友人の反応に、タカコとアミはけらけら笑って、 「おおー、ハルったら、だいたーん」 「まさか触りに行くなんて。想像もしてなかったよー」 「あ、あんたたちがいつもあたしのこと揶揄うからでしょ!」 顔を真っ赤にして怒るハルを、はやし立てる友人二人。どうやらこの三人の間では日常茶飯のやり取りらしかった。 しかし、巻き込まれた歩実はたまったものではない。 (お、おちんちん、触られた……!) ハルに劣らぬほど赤い顔で、股間を両手で隠す。ほんの一瞬のこととはいえ、少年の最もデリケートな部分を異性に触れられて、平然としていられるようなタイプではない。しかも、 (いまので、おちんちんが反応しちゃって――) 紙おむつの中で緊張に委縮していたものが、痙攣とともにゆっくりと膨張を始めていた。両手で押さえてもちっとも止まる気配はなく、前かがみで股間を押さえ、浅く熱っぽい呼吸を繰り返しながら、ただただ鎮まるのを祈るのみ。 (うう、なんでこんなに反応しちゃってるんだよ……ほんのちょっと、触られただけ――何かにぶつけた程度のことじゃないか……!) (しかも、なんだかおちんちんの奥から先走りみたいなものが漏れてるし……) そうは見えないとはいえ、歩実も男子高校生。精通もしていれば、オナニーの知識も、経験もある。もっとも、女性の体やセックスに強い興味があるわけでもなく、溜まりすぎて発作のように勃起が止まらなくなったときに、仕方なく処理する程度のことだったが。 「う、うう……!」 「あらら、ちょっと悪乗りしすぎたか。ごめんね、少年」 涙目になる歩実に、タカコが頭を掻きながら謝り、ハルが申し訳なさそうにうつむく。 するとアミがピンときた様子で、歩実のそばまでやってくると、耳元に決定的な一言を囁いた。 「ねぇ、もしかして君――勃っちゃった?」 「……っ!」 答えることもできず、歩実は耳まで真っ赤になってうつむく。 アミはくすくす笑って、 「あははー、やっぱりねー。ハルが触るから、おっきくなっちゃったみたいよー」 「あー、そういうこと。もう、ハルったら。年下の男の子に悪戯するから。ちゃんと責任、取ってあげなさい」 「え……あ、あたしのせい……? っていうか、責任!? 責任って!?」 困惑して声を裏返すハルに、タカコとアミはくすくす笑い、 「そりゃもちろん、ねぇ?」 「ハルが触ったせいで、大きくなっちゃったんだから――」 「ハルが小っちゃくしてあげるのが、筋ってもんでしょ?」 「そ、それはあんたたち二人が揶揄うから――二人にだって、責任はあるでしょ?」 苦し紛れにハルが言うと、タカコとアミは顔を見合わせた後、オオカミが獲物を見つけたかのように「にたぁ」と笑った。 「そっかー、あたしたちにも責任があるかー」 「ふふふ、じゃあ仕方ないわね。あたしたちも、責任を取らないと」 「というわけで少年、あたしたちがちゃーんと責任を取って、キミのおっきくなっちゃったところを元に戻してあげるからね」 「誰にしてほしい? あ、ここだとさすがにまずいから、何ならあたしたちの部屋に来てもらって――」 「え、え……?」 ただでさえ勃起を鎮めるのに意識の半分以上を持っていかれている歩実は、三人の話の流れについていけず、ただただ当惑するばかり。 そんな彼に、タカコとアミがねっとりと笑いながら、口をそろえて言う。 「さぁ、あたしたちが責任をもって鎮めてあげるから、一緒にお部屋まで来てくれる?」 何をしようとしているのかまるで判らなかったが、いやな予感しかしない。 「だ、大丈夫ですからっ! お構いなくっ!」 歩実は真っ赤になって三人から離れると、大急ぎで乾燥機を開けて着替えを取り出し、両腕に抱えたまま逃げるようにコインランドリーを後にした。 「あ、ちょっと、逃げないでよ!」 「もー、せっかくいいオモチャを見つけたのにー」 「あんたたちがそう言うこと言うから、逃げられるんじゃないの……?」 残念そうに言うタカコとアミ、冷静に突っ込むハルの声を背中に聞きながら、歩実は路地を走り、レイカのオフィスがある雑居ビルまで逃げ込んだ。 「はっ、はぁっ……!」 さすがにあのままついていったら、何をされるか判らない。いや、本当に悪いことをする気はないだろうし、むしろ滅多に味わえない経験ができたのかもしれないが――うぶな歩実にとっては想像するだけでも刺激が強すぎた。 「はぁ……ま、まぁ、ちゃんと女の子の格好をしたところも見せたんだから、これでお礼はしたってことで……」 言い訳しながら、階段をのぼる。 (でもなんで、勃起しちゃったんだろ……あの女性に触られたから……? それだけにしては、ちょっと反応が強すぎるような……) 見下ろすと、スカートの前にほんの僅か――よく目を凝らさなければわからないほど微かに、ふくらみがあるのが見て取れる。屹立は、今やおむつを押し上げるほどに硬く、大きくなり、触ってもいないのにピクピクと震え、身体をよじりたくなるほどにもどかしい快感の疼きを発していた。 (こんなに昂奮してるのは、ひょっとして――) ある可能性が頭の隅をかすめるが、 (い、いや、あんまり深く考えないことにしよう、うん) (とにかく早く着替えて、説明を聞いて帰るんだ……まさかこんなところで、するわけにはいかないんだし……) 歩実は再びレイカのオフィスに戻ると、「応接室」へと移動する――と、すでにそこにはレイカの姿があった。 相変わらずスーツに白衣というスタイルで、切れ長の目を歩実に向けた彼女は、開口一番、爆弾を投下した。 「おや、少年。どうしてそんなに、勃起しているんだね?」 (続く)