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連載小説「失禁改善合宿(仮)」(8)

 1-1.奇策   (8)  再びマットの上に戻った歩実は、プリーツスカートを脱ぐ。そして新しく出してもらった三段ティアードスカパンに穿き替えようとしたところで、ふと、こちらを向いたままの鏡に目が行って、 「あ、あ……!」  ピンクの肩フリルTシャツの裾から、淡いピンクの紙おむつが覗く。裾がそれほど長くないため、吸水パッドは完全に見えていて、股間のハートマークも当然丸見え――高校生、まして男子高校生にあるまじき姿に、 「は、早く、隠しちゃおう……!」  リボンが前に来るようにして、脚を通す。ひらひらフリルのティアードスカパンは恥ずかしかったが、おむつ丸出しよりはずっとマシだ。  改めて鏡を見ると、腰回りに一段とボリュームが出ている。肩のフリルで隠れているとはいえ、腰と比較するとやや肩幅の広い少年体型を見事にカバーしてくれていた。先ほどのプリーツスカートより丈は短く、いっそう太腿が露わになってしまっていたが、めくれておむつが見られるかもしれない不安もない。 「……う、うん、確かにこれなら、さっきのスカートより女の子っぽくて――」  いい感じ、と言いかかって、歩実は真っ赤になって首を振る。 「い、いや、ぜんぜんよくないから! もう男子高校生なのに、こんな女の子みたいな格好、恥ずかしいだけなんだから……!」  目を閉じて、呼吸を落ち着ける。 「でも、今は女の子になりきって、コインランドリーに行かないと……」  心を落ち着けて、改めて目を開ける。  鏡に映る、フリルTシャツと三段フリルスカートを着た、「少女」の姿。しかし脚を広げ、爪先を外に向けて開いた立ち姿は、少年のものだ。 「ええと、脚を閉じて、爪先は内側に……」  アミに言われたことを思い出して、立ち方を変える。O脚気味のこともあり、ちょっと足首の角度を変えるだけでたちまち女の子らしくなる。さらに両腕をおろしてスカートを軽くつまむと、 「ほ、ほんとに、女子小学生みたいになっちゃった……」  これならば、外を歩いていてもおかしくない。それどころか、女子小学生に混じって合宿に行っても大丈夫かもしれなかった。 「さ、さっそく、お姉さんたちに見せて来よう――じゃなくて、洗濯物を、乾燥機から出してこないとね!」  歩実はいそいそとシューズを履きなおしてから、最後に鏡で、歩き方も確認する。 「歩幅は小さく、内股気味に――うん、確かに、これならちゃんと女の子に見える……!」  いっそう自信をつけた歩実は、事務所を出ると、狭い階段を駆け下りて道路に出る。  大通りに出てからいったん立ち止まり、左右を見回す。  駅から続く目抜き通り。片道二車線の道路を車が往来し、人通りも激しい。コンビニにドラッグストア、喫茶店に飲食店――すぐに逃げ込むようにコインランドリーに入っていた時と違い、周囲の状況がよく見える。逆に、自分も彼らから見られていることも。  しかし―― (見られるのって、気持ちいい……!)  先ほど外に出たときと、心境は一変していた。恥ずかしいことに変わりはないが、見られることへの恐ろしさと後ろめたさは消えていた。むしろ可愛くなった自分を見られることに、高揚感すら覚えているほどだった。 「っと、いけないいけない。ちゃんと洗濯物を出して、お姉さんに見せないと」  改めてコインランドリーに向かうと、ガラス張りの店内には二人――ポニーテールのタカコと、ゆるふわボブのアミの姿があった。すでにこちらを見て、笑顔で手を振っている。  しかし―― (だ、誰……?)  彼女たちのすぐそばに、さっきはいなかった三人目の女子大生がいた。ショートカットで鋭い目つきの彼女は、おそらく二人の知り合いなのだろうが、疑い深そうにこちらを見つめている。 (お姉さんたちの知り合い……? うう、何て言われるだろう……?)  ドキドキしながら中に入ると、 「わぁっ、かっわいー!」 「お~、すっかり可愛くなったね!」  すぐにタカコとアミが、歩実を見て嬌声を上げる。 「スカートも替えたのね。いいじゃんいいじゃん、そのほうが女の子らしくって!」 「うんうん! 歩き方もちゃんとできてるし、完璧ね!」 「あ、ありがとうございます……」  恥ずかしさと嬉しさがこみあげて、顔がかぁっと熱くなる。  そこへ――問題の三人目、ショートカットの女性が近づいてきた。 「その子、男の子なの? 本当に?」  数秒間まじまじと歩実を見つめたあと、 「いや、どう見ても女の子でしょ。タカコ、アミ、あんたたちまた、あたしのことかついでるんじゃないの?」  疑いの目を友人二人に向ける。  タカコとアミはにやにや笑って、 「やだなぁ、嘘ついてないって。ねぇ?」 「うん、ほんとほんと。ハルをからかおうだなんて」 「…………」  ハルと呼ばれたショートカットの少女は、まだ疑い深そうに二人を見つめていたが、そのまま歩実に視線を戻す。 「あ、あの……」  頭のてっぺんから足のつま先まで、嘗め回すように凝視されて、歩実はリュックの肩ベルトをぎゅっと握る。 「……本当にキミ、男の子なの?」 「は、はい。だ、男子高校生です……」  しょうじきに答えると、ハルはもちろん、タカコとアミも目を丸くして、 「ええっ、高校生!?」 「中学生か小学生だと思ってた……」 「うーん……どう見ても、ちょっと背が高い女子小学生にしか見えないんだけど……」 「う……」  口々に言う三人に、男子高校生として喜んでいいのか悪いのか判らない。歩実は赤くなりながら、ハルに問いかける。 「じゃ、じゃあ、どうすれば信じてもらえますか……?」 「そうね……」  ハルはただでさえ鋭い目をカミソリのように細め、じっと歩実を見つめていたが―― 「やっぱり、これが一番早いかしら」  そういって歩実のすぐ前まで歩いてくると――手のひらを、歩実のスカートの股間に宛がった。   (続く)


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