連載小説「失禁改善合宿(仮)」(3)
Added 2020-07-06 08:47:24 +0000 UTC1-1.奇策 (3) 女児服を見せられた時と同じ衝撃に、歩実は受け取った紙おむつを見つめたまま硬直する。「下着も借りたい」と口にした瞬間、どうせ渡されるのは女児用下着だろうと身構えてはいたが、まさか下着未満だとは。 「な、何で紙おむつを……!? せめて、普通の下着は……?」 「不満は判るけど、これは治療プログラムの内容にもかかわる話だ。説明が長くなるから、いまは『おむつを穿くのも治療の一環』くらいに考えておいてほしい」 「お、おむつが、治療の……?」 「ああ」 レイカはうなずくと、女児服やおむつを取り出したロッカーに近い隅を指さして、 「そっちにマットを敷いてあるから、着替えるときはそこを使うといい。コインランドリーから戻ってきたら説明を始めるから、声をかけて」 「ちょ、ちょっと待って――」 呼び止めようとする歩実を無視して、レイカは奥の部屋へと消えていってしまう。 「えっと……ど、どうしよう……」 取り残された歩実は、次に取るべき行動を決めあぐねる。 いっそこのまま帰ってしまおうかとも思ったが、何しろズボンもパンツもごまかしようがないほど濡れていて、それを人に見られながら帰る気にはなれない。途中で服を買おうにも、間の悪いことに余計なお金はほとんど持ってきていなかった。 迷う間にも、下半身はジクジクとした痒みを発しはじめ、冷たく濡れたトランクスとズボンが肌に貼りついて、惨めさと情けなさを助長する。 その感触に――ふいに一年半ほど前のトラウマが、フラッシュバックした。 中学の、卒業式のあと。 仲の良かった、そして秘かに思いを寄せていた同級生の女子を校舎裏に連れ出して、二人きりになった。相手も歩実の言いたいことを察して、待っていたように思う。 なのに―― 歩実は大きく息をつき、歯を食いしばって心を決める。 「ああ、もう! 着替えればいいんだろ、着替えれば……!」 自棄になったように叫ぶと、着替えと紙おむつを手に取って、半畳ほどのカラーマットが敷いてある部屋の隅へと移動した。ロッカーのすぐそばには、白い布をかけた全身鏡も置いてあった。 (着替えのために設えたスペースなのかな……?) 靴を脱いで、マットの上へ。シャツの裾を顎に挟んで固定し、続けてズボンとパンツも脱いでゆくと、男子高校生のものとは思えない、体毛の薄い脚が露わになった。太腿も細くX脚気味のため、まるで少女のようだったが、その股間にはしっかりと、少年の証が垂れ下がっていた。 「うっ……」 ティッシュペーパーで濡れた表面をぬぐいながら、改めて惨めな気持ちになる。 小学生のように無毛で、しかも包茎――およそ自信を持てるような持ち物ではなく、また持つような性格でもないため、出しているのは純粋に恥ずかしい。ついさっき出したばかりでなかったら、また失禁してしまったところだ。 とはいえ、これを隠すためにはよりいっそう恥ずかしい思いをしなければならず―― 「はぁ……なんで高校生にもなって、女の子用の紙おむつなんか……」 ぼやきながら、改めて紙おむつを見る。 ご丁寧に「まえ」「うしろ」と書かれているため、前後で迷うことはない。淡いピンクに花とハートのプリント、お尻側にはピンクと水色のドレスを着たお姫様のイラストが描かれている。いかにも女の子らしいデザインに、歩実は改めてげんなりした。 「やっぱりやめたほうが……いや、でも……」 おむつのウエスト――ごわごわしたシャーリングの部分を広げて見下ろす。そこに空いた二つの孔は、引き返せぬ道程への第一歩だ。 「うん……治さなくっちゃ……」 おそるおそる、脚を通す。つま先を差し入れ、足首を通し、そしてふくらはぎへ――もともとぴったりとした構造であることに加え、ややサイズが小さいせいで、なるべく触れないように気を付けていても、あちこちこすれてしまう。柔らかくもしっかりした紙の感触は、今まで身につけたどんな下着や服よりも独特で、 「んっ……」 神経過敏になった肌をかすめるくすぐったさに、歩実の口から切ない声が漏れる。気付けば息を止めていたようで、膝まで通したところで深呼吸する。 「はぁーっ……まだ片脚通しただけなのに、恥ずかしくってたまらないよ……」 呟いて、もう片脚も通す。 両脚とも膝まで引っかかったところで、意を決して引っ張り上げる。ここまでくると、なるべく肌に触れないように――などと言っていられる段階ではない。おむつの穿き口はぴったりと貼りついたまま、するすると太腿を逆撫でしていった。 「ん、う……!」 おむつのウエスト部分が、お尻に引っかかる。後ろ側を引っ張ってお尻を包むと、またも未知の感触に鳥肌が立った。硬く波打つ薄紙と、その中央に縫い付けられた厚手のパッド。ゴワゴワとモコモコ、二つの感覚が、過敏になった少年の神経と心理を苛んだ。 そしてお尻側を上げたことで、今度は前側が陰嚢の裏に引っかかる。前側も同様に、指を入れて軽く浮かせ、ついにペニスを隠すことに成功する。最後にそのままウエストを引っ張り上げれば、おへそから下はすっぽりとおむつに包まれた。 女児用では最大サイズの紙おむつとはいえ、やはり150センチ以上ある歩実には小さいらしく、きついくらいぴったりフィットする。股間からお尻にかけては、まるで紙タオルを入れているかのように厚ぼったい吸水パッドの感触。それ以外の部分はシャーリングのせいで、ぴったりしつつも凹凸がこそばゆい。 見おろせば、可愛らしいピンク色はいかにも女児向け。全体に小花とハートがちりばめられたプリントで、ちょうど股間の部分には大きなハート――細い線が、まるで文字のように入っている気もしたが、上下逆なことと、色が薄いためによく判らない。穿き口の部分は外側の余った部分がひらひらしていて、まるでフリルのようにも見えた。 「あ、あ……ぼく、女の子用のおむつを、穿いちゃった……」 絶望感と達成感が入り混じった奇妙な興奮に、痛いほどに高鳴る心臓を押さえながら、歩実は小さく呟いた。 (続く)