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仮想告白手記「娘ごっこ」(5)

  (5) 「うんうん、可愛いわよ、龍ちゃん。ふふっ、いまはルミちゃんって呼んだほうがいいかしら?」 「う……ち、ちがうもん、ぼく……」 「ふふっ。でも、靴下と靴が男の子用で、このままだとちょっと残念ね。これに履き替えてくれる?」  そう言って私は、カバンの中からソックスを取り出しました。 レースがついたハイソックスに、息子は目を丸くして、 「それって、女の子用の……」 「うん。このワンピースにピッタリでしょ? さ、それを脱いで、こっちを履いて」 「う……うん……」  息子は赤くなりながらも、男児用のソックスを脱いで、レース付きのソックスに履き替えました。これですっかり女の子――と言いたいところですが、両足を広げてつま先を外に向ける立ち方は、まだまだ男の子です。 「ルミちゃん、女の子なんだから、立つ時も気を付けないとダメよ。ほら、もうちょっと脚を閉じて、つま先は、内側に向けて」 「え、えっと、こう?」 「うんうん、いいわよ。ほーら、ごらん。これで可愛い『妹』、ルミちゃんの完成よ」 「あ、あ……」  おかっぱ頭に、ピンクのシャツワンピースと、レース付きのソックス。立ち方まで女の子らしくなったその姿は、どこからどう見ても男の子の「龍太」ではなく、女の子の「ルミ」でした。  「ルミ」は鏡を見つめ、感極まったように声を漏らします。恥ずかしいのか両手を口元に当てる、そのしぐささえも女の子らしくなってしまっていることに、本人は気付いていないようでした。  私はさらにバッグから、赤いエナメルの女児用シューズを取り出します。 「靴も用意したのよ。これでお外に出ても大丈夫ね」 「う……お、お外、出ないと、ダメ……?」 「せっかく着たんだもの。ちょっと歩いて、着心地も確かめないと、ね?」 「うん……」  恥ずかしそうにうなずく息子に、私は笑って、カーテンを引きました。  すぐ外には店員さんが待ち構えていて、すっかり「ルミ」になった息子の姿に目を丸くしました。 「わぁっ、すごくお似合いです。ふふっ、可愛いわよ、『ルミ』ちゃん」 「う……あ、ありがとう、ございます……」  恥ずかしそうにお礼を言う「ルミ」に、店員さんはくすくす笑って、 「あら、靴とソックスも、用意されてるんですね。ふふっ、ではこのままお召しになって、おかえりになりますか?」 「そうね……どうする、ルミちゃん?」 「そ、それはちょっと、恥ずかしすぎるよぉ……帰り道で、もし友達に見られたら……」  息子はさすがに嫌そうな表情で、私も無理強いは出来ません。  なので妥協案として考えていたことを口にしました。 「じゃあ、駅前をもうちょっとだけ歩いたら、お着換えして帰りましょうか。それならお友達に見らえる心配もないわ」 「う――うん、それなら……」  恥ずかしそうにしながらも、「ルミ」は小さくうなずきました。  私は店員さんに、 「では、帰りにもう一度ここの試着室を貸していただけますか? 1時間くらいで、戻ってきますので」 「かしこまりました。ではタグを外してお会計しますので、こちらへどうぞ」  清算を済ませ、「娘」と手をつないでショップを出ます。 「ルミ」は慣れないスカートと、女児用シューズの穿き心地に落ち着かない様子でしたが、それでもどこか嬉しそうについてきます。 「お母さん、どこに行くの?」 「ふふっ、ルミちゃんがもっと可愛くなれる場所よ」 「え……?」  戸惑う「ルミ」を連れて、駅から徒歩2分ほどの場所にあるヘアサロンへ。前回女装したときからやや伸ばし気味にして、ブラシも入れてあるとはいえ、まだ中性的なところのある「ルミ」の髪をセットしてもらいました。 「娘の髪を、お願いします。女の子らしい、おかっぱにしてあげてください」 「かしこまりました。お嬢ちゃん、こっちへおいで」  美容師さんは「ルミ」が男の子だと疑った様子も見せず、そのままカットに入りました。「ルミ」は恥ずかしそうにしていましたが、精いっぱい女の子の振りをしているのが、見ていて微笑ましかったものです。  そしてセットが完成すると――もはや「龍太」の面影はほとんどなく、可愛らしい娘の「ルミ」が出来上がっていました。  鏡に映った自分の姿に、「ルミ」も驚き、 「ぼく、ぼくが、こんなに、可愛く……」 「ええ。とっても可愛い女の子になっちゃったね、ぼく」  くすくす笑う美容師さんに、「ルミ」は真っ赤になってうつむきました。どうやら「ルミ」が男の子だということは、とっくにばれていたようでした。  さらに美容師さんは、カウンターから手のひらサイズのバスケットを持って来て、 「女の子には髪飾りをおまけしてあげることになってるの。ルミちゃんは、どれがいい?」 「う……ぼく……」  男の子だからいらない――とも言えず、「ルミ」はしばらく赤くなっていましたが、 「じゃ、じゃあ、これ――」  選んだのは、チョウチョをあしらったヘアピンでした。  美容師さんはくすっと笑って、 「かしこまりました。それじゃあこっち側に、つけてあげますね」  そう言って、「ルミ」の前髪を横に流して留めます。ますます女の子らしくなって、「龍太」にもどすのは勿体ないくらいでしたが――再び女児服ショップの試着室を借りて元の服に着替え、ヘアピンも外して、私たちは家に帰りました。  髪型だけは女の子のままでしたが、特に困ったことはないようでした。男の子同士では、よほどのことがない限りお互いの髪型なんて気にもせず、だんだん見慣れていってしまいますからね。ですが女の子からは、「龍ちゃんが可愛い髪型にしている」と話題になったようで――いえ、これはまたの機会にお話しすることにしましょう。   (続く)

Comments

ありがとうございます! 女装のドキドキ感、いいですよね…伝わってよかった…!

十月兔

ルミちゃんのワクワク・ドキドキ感が伝わって来ます🤗😍 ルミちゃん、カワイイっ(*≧з≦)🥰💞

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