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仮想告白手記「娘ごっこ」(4)

  (4) 「まぁ、ルミちゃんって言うのね」  そして店員さんも、「龍太」から「ルミ」であることに気付いたようで、 「ルミちゃん、身長はどのくらいかな? 龍太くんと、同じくらい?」  信じたふりをして、確認の質問を重ねます。  もちろん息子は気付くはずもなく、 「う、うん。だいたい、ぼくといっしょ……」 「ふふっ、そうなの。ありがとう、教えてくれて」  店員さんはにっこり笑って、 「じゃあ、ルミちゃんのためのお洋服、見てみよっか。お姉さんが案内してあげるから、どんなのがいいか、教えてくれる?」 「え、ええと……」  妹のため、という言い訳で気が軽くなったのか、息子は先ほどよりもはっきりと、店内を見回します。  Tシャツ、プルオーバー、ブラウスにカーディガン。  スカートに、ジャンパースカート。サンドレスに、ワンピース。  さらに季節商品の、水着や浴衣ドレスまで――  様々な商品に目を輝かせる息子の表情は、とても「妹のプレゼント」を見に来た兄のものではありませんでした。 「それにしても――」  先ほどの店員の反応が気になったので、私は尋ねてみることにします。 「このお店は女児服専門だけど、男の子連れのお客さんも、けっこういるのかしら?」 「はい、たまにいらっしゃいます。ほとんどが妹さんへのプレゼントを選びに来るのですが、中には息子さんご本人用の場合も」 「あら、そうなの」 「ええ。お母様が、息子さんに着せたがるケースが多いですね」  店員はパチパチと、目を瞬かせます。どうやら私のことも、お見通しのようでした。  私たち三人は店内を一回りして、息子が着られるサイズの商品に目を通しました。一角にはベビー服コーナーもあり、そちらはロンパースやベビードレス、ブルマードレスにベビー小物などが並んでいるのですが――息子にはいささか小さすぎるので、見せる必要はないと判断しました。少なくとも、あの時は。  見て回った後、息子に尋ねました。 「さぁ、どれがいいと思う?」 「え……?」  息子は不意を突かれたように、目をパチクリさせました。どうやら、見るのに夢中になっているうちに当初の「目的」を忘れてしまったようです。 「ルミちゃんへのプレゼント、見てたんでしょ? 龍ちゃんは、どれがいいと思う?」 「あ、う、うん……」  今さら思い出したようにあたりを見回した息子に、私と店員さんはそろってくすくす笑いました。  やがて息子が消え入りそうな声で、 「じゃ、じゃあ、あれ……」  指さしたのは、最初に私が示した水色のシャツワンピースでした。  ブルーのラインが入った丸襟は後ろ側がセーラー状のスクエアになっていて、ふちには小さなフリル。ノースリーブの肩口や、大きく広がったスカートの縁にも白い大きなフリルがあしらわれています。襟元には紺の、ウエストには白のリボンを、前で結ぶようになっています。  私が誘導したためもあるのでしょうが、息子がそのワンピースを選んでくれたのは嬉しくてたまりませんでした。ピンクや黄色も悪くはないのですが――さすがに女の子の色を選ぶ勇気はなかったようです。 「ふふっ、龍ちゃんはあれがいいのね。それじゃあ、買って帰りましょうか」 「う、うん」  まだ緊張が冷めやらぬ様子で、ドキドキしながらうなずく息子。  すると店員さんは、さらなる爆弾を投下します。 「かしこまりました。そういえば龍太くん、妹のルミちゃんと、ほとんど同じ身長なのよね?」 「え……は、はい! そうです!」 「だったら、ちょっと試着してみてくれないかしら? ルミちゃんにもピッタリ合うかどうか、お兄ちゃんとして確かめてあげたほうが、いいでしょ?」 「え……あ、あの、それは……」  息子は助けを求めるように私を見ます――が、私はにっこり笑って、 「そうですわね。可愛い妹のルミちゃんのためにも、龍ちゃん、ちょっと着てみてくれる?」 「あ、う……うん……」  私にも言われて、息子は観念したようでした。ちょっぴり恨みがましい目で私を見ていましたが――本当に嫌であれば、全力で抵抗したでしょう。  息子を連れて試着室に入り、服を脱がせてワンピースを着せます。すぐ目の前に鏡があり、それを見ながらの着替えが恥ずかしくてたまらないようでしたが、前回のように途中で留めることもなく最後まで着終わりました。  こちらもまた、息子によく似合っていました。髪の毛も、お出かけ前にちゃんと整えてあったので、じゅうぶん女の子に見えるほどです。  ですがまだ、仕込みは残っています。   (続く)


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