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SS「罰ゲーム」(2)

 両足を入れたところで、妹はするするとスカートをを引き上げて、トランクスを隠す。 「んー、やっぱり下着も、ちゃんとしたほうがよかったかな?」 「や、やめてってば!」 「はいはい。せっかくならぜんぶ着替えたほうがいいと思うんだけどなー」  妹はつまらなそうに言うが、冗談ではなかった。 (下着まで女の子用――っていうか、妹のを穿くなんて、恥ずかしいにもほどがある……っていうか妹の奴、俺が下着を見ると怒るくせに、自分は俺に穿かせたがるなんておかしいだろ……)  想像するだけで恥ずかしすぎて、金玉がむずむずしてくる。  その間にスカートが引き上げられ、膝丈あたりに調整される。妹はワンピースを持つ場所を、ウエスト部分から胸元あたりに入れ替えて、 「んじゃ、袖を通すから、兄貴は腕を下ろして、手を下に向けて――そうそう、そんな感じ。あははっ、なんかこうしてると、妹のお着替えを手伝ってるみたい」 「い、妹って……俺のほうがお兄ちゃんなのに……」  真っ赤になる兄。しかし同時に、胸が妙に締め付けられるような疼きをおぼえてしまう。  もっとも妹は、兄の葛藤には気づかない。ワンピースの袖を兄の腕に通し、パフスリーブを肩にかぶせて満足げにうなずく。 「うんうん、あたしにはちょっと大きいワンピースだったし、お兄ちゃんは細いから、逆にぴったり。さ、あとは出来るよね? それともお姉ちゃんが、ボタンを留めてあげよっか?」 「い、いいよ、あとは自分で着るから……」  自分の手で着るのも恥ずかしいが、妹に着せられるのはもっと恥ずかしい。兄は急いでボタンを留めてゆく。 「うう、スカートがすぅすぅする……女子って、こんな頼りない格好で歩いてるのか……」 「うん。だからあたしも、スカートってあんまり好きじゃないのよね。オシャレで穿く時もあるけど、基本的にパンツのほうが落ち着くし、下着見られる心配もないし。ママはスカートばっかり買ってくるけど」 「ああ、うん……お母さんはこういうの、好きだからな……」 「あ、何ならお兄ちゃんにあげ」 「いらないから。なんで俺に着せようとするんだよ」 「だってー、そうすればママも、あたしじゃなくてお兄ちゃんに買ってくるかなーって」  はぁ、とため息をついたところで、ようやくボタンを留め終える。男女で左右が逆なこともあって、いつも以上に時間がかかってしまった。  最後にウエストのリボンを結べば、 「ほ、ほら、着たぞ。これでいいだろ?」 「うんうん。いいじゃん。似合ってるよ、兄貴♪」 「似合ってる――って、お前なぁ、いくらなんでもそんなわけないだろ。からかうのもいい加減に」 「あ、揶揄ってるのは間違いないけど、嘘じゃないってば。ほらほら、自分でも見てみなって」  妹は笑いを消して、大きな姿見を転がしてくる。  目の前に置かれた鏡を見た兄は―― 「い、いや、やっぱり似合ってないじゃん」  やや少女趣味な、ピンクを基調にしたシャツワンピースを着た自分。顔立ちこそ女の子っぽくはあるが、いかにも男子が女装しましたという感じで、いかにもオカマっぽい。  嫌な表情になる兄に、妹は大真面目に、 「それは兄貴が女の子っぽくしてないからだって。ほら、まずは髪の毛を整えて――」  ドレッサーからブラシを持ってくると、兄の後ろに立って、髪をブラッシングしていく。少年にしては伸びているとはいえぼさぼさだった髪が、くしけずられるとたちまち綺麗になって、おかっぱめいた髪型に変わってゆく。頭頂部にはキューティクルの輪さえ浮かぶほどだった。 「立ち方も、脚を開かないで、つま先を内側に向けて――そうそう、手は後ろに回して組んで、腰を前に突き出すように――うん、いいじゃん」 「あ……」  妹に言われるままにポーズをとると、確かにずっと女の子らしくなってしまう。パフスリーブのため肩幅も目立たず、スカートが広がっているおかげで腰の細さも気にならない。 (俺、こんなに可愛く――)  思わず鏡に見入っていると、 「あははっ、兄貴、もしかして自分に見とれちゃってる?」 「そ、そんなわけないだろ! まったく……ほら、ちゃんと着たことだし、もう脱いでいいか?」 「だめだめ。んー、そうね。あと一時間は、このまま着ててもらおうかな」 「い、一時間……? はぁ、わかったよ。一時間だけだからな」  兄は赤い顔で鏡を元の場所に戻すと、スカートを気にしながら床に座り、 「……で、どうする? ゲームのほうは」 「んじゃ、もうちょっと遊ぼっか。まだ勝負したりないし」 「オーケー」  けっきょくシャツワンピースを着たまま、妹との対戦を再開する。服装のせい化プレイに集中できず、結局その後も負け続けの兄だったが――約束の1時間が過ぎてもすぐに着替えるとは言わず、さらに1時間後に妹に指摘されるまで、ワンピースを着ていたのだった。   (続く?)


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