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連載小説「J兄S妹」(6)

第1話 はじまりの夜  金曜の夜だった。  夜7時になっても妹が帰ってこないことに、兄の藤山トオルは気を揉んでいた。習い事があるため帰ってくるのが遅い金曜の夕方とはいえ、いつもより1時間も遅いのは気になる。お稽古先に連絡しても、すでに帰ったとのことで、何かあったにせよ連絡一つないのは妙だ。折悪しくもこの時間、母親はパートに出ているところだった。  玄関先に出て30分ほど立ち続けていたところで、ようやく薄闇の中に見知った姿が現れて、トオルは急いで駆けだした。 「おかえり、サキ。ずいぶん遅かったね」 「ただいま、お兄ちゃん。心配かけてごめんね」  ニッコリ笑顔で返事する妹に――トオルは強烈な違和感を覚えた。いつもの妹なら、「ちょっと遅くなったくらいで出迎えなくていいのに、大げさなんだから」と生意気を言うのが常なのだ。  しかも――まるで値踏みをするような目つき。  まるで別人が妹に擬態しているような錯覚――あとから思えば錯覚などではなかったのだが――に、胸のざわめきを感じながらも、 「お風呂も沸いてるし、ご飯も用意してあるけど、どうする?」 「それ、お風呂にする? ごはんにする? それとも……ってやつでしょ? お兄ちゃんって選択肢はないの?」 「ありません。まったく、そんなのどこで覚えたんだか」  呆れながらも、マセた妹の軽口に若干安心しながら、トオルは妹を伴って家に戻る。  そして玄関のドアを閉め、揃ってリビングに入ったところで、 「それじゃ――先にご飯に、しよっか」  濡れたように淫らな妹の声に、トオルはハッと振り返る。  サキが着ているのは、お稽古事用のワンピース。水色にグレーのチェックで、白い襟に紺のリボン、スカート丈は膝までという、お嬢様めいた清楚な一品だ。妹自身は、こういう上品な服装はあまり好きではないようだったが、お稽古とあってしぶしぶ着ていっている。  そのワンピースの背中に手を回して、ファスナーを下ろす。一番下まで脱ぎ終えると、胸の前で腕を交差させるようにしてパフスリーブの肩を掴み、するりと足元に落としてしまった。  下まで清楚な真っ白いキャミソールとショーツになった妹の姿に、 「な、何で脱いでるんだよ……先にお風呂にするのか?」  まだ妹の変事を受け入れきれず、あくまで常識の中で判断しようとするトオル。 「うふっ、違うわ。夕飯は――お兄ちゃんよ」  そう言ってサキは、キャミソールを脱ぎ、ショーツまでも躊躇なくずり下ろして、レースの付いたソックスのみの裸身を露わにした。 「――――」  言葉を失ったまま、トオルは妹を見つめる。  年が離れているだけあって、幼いころはおむつを替えたり、お風呂に入れたり、着替えをさせたりと、お世話する間にさんざん見てきた妹の裸。しかしここ数年はその必要もなくなったし、本人はとうぜん嫌がるようになって、下着すらも見たり触ったりすると怒るようになっていたため、ついぞ目にしていなかった。  数年ぶりに見る妹の裸は、確かな成長をうかがわせていた。色気も何もないまるまるとした幼児体系だったのが、手足がすらりと長く、胴体もほっそりと伸びた、妖精のような体つきに。それでいて、胸や陰部はまだ大人の萌芽すら見えない。まるで羽化する直前のさなぎのような、中性的・無性的な美しさと色気を兼ね備えていた。  とはいえトオルは、小学生の妹相手に欲情するようなロリコンではなく―― 「な、さ、サキ、なにをして……! ほら、お風呂に先に入るならそう言って……」  ただ狼狽し、自分でもよく判らないことを口走る。反抗期真っ盛りだったはずの妹に誘惑されるなど、およそ想像の埒外だ。少なくとも、誘惑されたからと言ってすぐに妹とセックスするような気は毛頭ない。  むしろ――先ほど妹が脱ぎ捨てたワンピースにチラリと目をやると、 「ふぅん、そういう趣味なんだ」  それを見たサキが、おかしそうに呟く。  その瞳が赤く染まっているように見えて、トオルは一瞬困惑するが――サキはすぐに元通りの黒い瞳に戻って、 「ま、いいわ。今はとにかく、ほら、お兄ちゃんも脱いで――」  そう言って裸のまま近づいてくると、体重を乗せて抱き着いてくる。 「わ、わっ……!」  年の離れた兄妹にもかかわらず、体格はほとんど変わらない。身長で5センチ、体重で4キロ程度の差しかないのだ。ただでさえ戸惑っているところにタックルも同然のハグを受け、トオルは数歩後ろによろめいて、そのままソファに倒れ込んだ。 「さ、サキ……!?」 「うふふっ」  体にのしかかる、少女の体重。その軽さと肌の温度、柔らかさにおどろくトオルだったが、サキはさらにトオルに馬乗りになったまま、彼の服を脱がしにかかっていた。その間も、ちょうど跨っている股間を、お尻を使って刺激するように擦っている。 「ほら、お兄ちゃん……えっち、しよ?」  シャツのボタンが外され、アンダーシャツもめくりあげられて、トオルの肌の上をサキの手のひらが撫でる。 (おかしい、サキがこんなことをするわけが――)  逆光の中でその瞳が赤く輝いているのを見たトオルは、ついに意を決して体を起こした。妹の肩を掴んで体を反転させると、逆にソファに押さえ込んで―― 「お前――誰だ?」 「誰って……サキに決まってるじゃん。妹の顔も忘れちゃったの?」 「サキがぼくを誘惑するわけないだろ。いくら同じ姿でも、騙されるものか」 「……………………」  サキはしばらく、いったいどうしたものかと迷うように視線をさまよわせていたが―― 「あーあ、バレちゃった。一発ヤって終わりにしようと思ってたのに、つまんないの」  そう言って顔を近づけると、不意を突かれて動けずにいたトオルの唇に、唇を重ね――そこから全身の力を吸い上げられるような錯覚とともに、トオルは意識を失った。   (続く)


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