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「強制女児女装志願」(3)

  第1の命令 (2) 「んじゃ、決まりね。とりあえず手付金代わりに、はいこれ」  バッグから取り出してぼくの前に置いたのが――冒頭で出てきた水色の紙袋と、メールアドレスの書かれた紙片だった。 「こ、この袋、何が入ってるんですか……?」 「さー、何でしょうか? たぶん君が気に入るものだと思うけど」  にやにや笑ってはぐらかし、 「もし君がお姉さんに『脅される』なら、その紙袋を受け取って、このメールアドレスに連絡ちょうだい。で、その袋は開けずにとっておくこと。もし『脅されない』なら――話はここでおしまい。その袋も、好きにしていいわ」  お姉さんはそう言うと、コーヒーの残りを一気に飲み、レシートを掴んで立ち上がった。 「あっ、自分の分は自分で――」 「こういうのは年上が払うものよ、少年。じゃあね~」  止める間もなくマキナさんは立ち上がりかけて 「そうそう、最初の『脅迫』に応じる気があるなら――『その袋を手に持ったまま、帰宅しなさい』。それ、駅ビルに入ってる女児下着専門店の袋だから、見る人が見れば何が入ってるか判っちゃうけど――そういうの、好きなんでしょ?」  そのまま颯爽と立ち去ると、会計を済ませてカフェを出ていった。  あとに残された僕は、しばらく呆気に取られていた。  まるで夢のようだったけど、目の前に残る紙袋――マキナさんが言うには、この駅ビルに入っている女児下着ブランドのものらしいロゴが入った袋。  やがて我にかえったぼくは、しばらく迷った後――  けっきょくマキナさんに言われたとおり、その紙袋をバッグにはしまわず、手に持ったまま帰宅した。  女児用下着ブランドの紙袋、しかも中にはふわふわした、下着のようなものが入った大きさと形状。もっとも、大半の人には紙袋がどこのブランドのものかなんてわからないし、そもそも人の持ち物をいちいち見ていないだろう。けれど、 (男子高校生が、女児用下着ブランドの紙袋を手に持って歩いてるなんて、何と思われるんだろう――) 考えただけでドキドキして、電車とバスを乗り継いで帰る道すがら、ずっと落ち着かなかったけど――ぼくは家に帰るまで、それを握りしめていたのだった。  ――今こうしてメールを受け取っていることからもわかるように、ぼくはマキナさんに「脅される」道を選んだ。意志薄弱と言われるかもしれないけれど、こんな機会はめったにない。  マキナさんとの、出会いの翌日。 「あなたの言う通り、女児服を着ます。なので、学校にはばらさないでください」  捨て垢で、最低限の情報。しかし十分伝わると思われる内容のメールを送る。たったこれだけの一文を入力するのにも、指が震え、心臓の高鳴りが止まらず、1時間以上かかってしまった。  このメールを送ったら、本当にぼくは、お姉さんに「脅迫」されてしまうのだ。さらに1時間迷ったすえ、ようやく送信ボタンを押した瞬間――ぼくは半ば捨て鉢な、どうにでもなれという気持ちでベッドに転がった。 返事は、すぐにきた。ぼくはびくっとして、受信フォルダを開く。 「よろしい、少年。交渉成立だ。  これから私は、定期的に君に『命令』する。内容によって私自身が手を貸すこともあるが、基本的には君一人でおこなうものが大半だ。道具類は必要に応じて、私が用意する。その際は、基本的に駅ビル二階の喫茶スペース、必要に応じて適当な場所で落ち合おう。  最初の命令はこなせたかな? あれはほんのさわりとして、数日中に最初の命令を与える。それまでは、あの袋の中身を想像して楽しむといい。くれぐれも開けてはダメだよ?」  文面にするとそっけないが、不思議とお姉さんの声で脳内再生された。  かくしてぼくは、お姉さんに「脅迫」されて女児服を着せられることになり―― 「すーっ、はーっ……」  先日もらった紙袋を開けるだけでも、緊張しきっているのだった。  言われたとおり、「命令」が来るまで袋は開けていない。しかしそれでも、女児下着ブランドの袋の中に入っているものを想像するだけで、ここ数日間なかなか寝付けないほどだった。  ちなみに折よく、母親は出かけて、家の中にはぼくひとりきりだ。お母さんは割と遠慮なくドアを開けてくるタイプだから、ちょうどいいタイミングで助かった。 「さて――」  いったいどんな色だろう。柄だろう。シールをはがして、袋の中身を取り出すだけでもうまく指が動かずもどかしい思いをしながら、ようやく中身を取り出すと――  純白の、無地のショーツと、キャミソール。 「う……!」  想像していた可愛い色柄からは若干外れるが、これはこれでいかにも女児らしい。何よりその出触りは、男物のトランクスやブリーフとは比べ物にならないほど柔らかく、心地よくも羞恥心を掻き立ててくれた。  自分の手の中に、女児用の下着がある――  男子高校生なのに。あんまりにも変態的だと自分でも思ったが、昂奮は止まらない。しかも、単に女児下着を「手に入れた」というだけではなく、 「これから、ぼく、この女児下着を、着せられるんだ――」   (続く)


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