「強制女児女装志願」(1)
Added 2020-06-17 10:16:19 +0000 UTC(1) 女児女装調教されることになってしまった。 あまりにも唐突で、突拍子もない話だけど、ぼくの身に起きたことを一言で述べればそういうことになる。 最初に、自己紹介をしておこう。 ぼくは石森静、都立の、いちおう進学校に通う高校三年生の男子だ。 性格とかについて自分で述べるのは気恥ずかしいし、何よりこの日記――という体の告白手記――を読んでくれたら判ると思うから割愛するとして、ぼくの一番の外見的特徴を述べれば、男らしくないという一点に尽きると思う。 身長146センチ。体重43キロ。 顔も幼くて女の子っぽいから、揶揄われたり、低く見られることは多かった。男子の社会だと身長と腕力がモノを言うのだ。特に中学までは大変だったけど、高校に入ってからはいじめられることもなくなり、いちおうは平穏な学生生活を送っている。 そんな外見のせいだろうか。 ぼくが、人には言えない秘密の願望を持つようになったのは。 その日、ぼくは学校帰りに駅ビル8階で書店を一通り見た後、エスカレーターで下に降りていた。 1つ下の7階は、女児服売り場。エスカレーターで降りてゆくと、正面に女児服ブランド「アンジェリック・ベイビー」のディスプレイが見える。 サイズの違う大小二つのマネキンが着せられているのは、春の新作。ピンクに白のストライプ柄が特徴的で、それぞれ130センチと100センチ、キッズ用とトドラー用で、姉妹コーデにもなっている。 パッと見ただけでも可愛いデザインで、もうちょっとゆっくり見ていたい誘惑に勝てなくなる。さりげなくエスカレーターから降りて、すぐそばのベンチに腰を下ろして、さりげなく「アンジェリック・ベイビー」の売り場を見る。もうこの時間は小さい女の子も少ないし、進学校の制服を着ているから、男子高校生のぼくが見ていても怪しまれたり、まして通報されたりすることはないだろう。 改めて、じっくり観察する。 どちらも色はピンクで、細く白が入った大きめのストライプ――白い襟とパフスリーブ、ひざ丈スカートというところまでは共通だ。しかしキッズ用は、ラウンド型のヨークと一体になった丸襟タイプで、襟元に赤いリボンを結んでいるのに対し、トドラー用はまるでよだれかけのようなスクエア状の台襟。ふちの飾りも、キッズ用が丸襟・ヨーク襟にそれぞれ細かなレースがついているだけなのに対し、トドラー用は大きなフリルがあしらわれていた。 袖口も、キッズ用が細いカフスですっきりとまとめているのに、キッズ用はフリルの下に白いレースを覗かせる念の入れよう。ウエスト部分は共通で、左右の良く見える場所に赤いリボンがあしらわれていたが、トドラー用のほうがややハイウエスト気味だ。スカートの裾も、キッズ用がレース、トドラー用がフリルになっている。どちらも可愛いが、やはりトドラー用のほうが幼さを前面に押し出すデザインだ。 「んっ……」 見るうち、次第に胸が高鳴ってくる。あまりじっと見つめ過ぎないように、ときおりわざとらしく視線を移したりしつつ、心ひそかに考えていたのは、 あの女児服を着たら、どんなに恥ずかしいだろう―― 男子高校生のぼくが。女子小学生、それも低学年くらいの子が着るような女児服を着たら。着たい、というのとは違う。自分から喜んできたい、というわけではないのだ。 そう、強いて言うなら、 あの女児服を、着せられたい―― 矛盾する感情。「着せられたい」だなんて、自発的なのか、強要されてなのかもあいまいだ。しかし僕にとっては、それが一番しょうじきな気持ち――誰にも言えない、歪んだ願望なのだった。 「うっ……」 考えていたら、ズボンの中のモノがむくむくと膨らみ始めていた。 これ以上はまずい。もう、きちんと観察するという目的は果たした。あとは家に帰ってからゆっくり思い出して、この高ぶりを慰めればいい。 さりげなく股間の上で指を組んで隠しつつ、目を閉じて呼吸を落ち着けていると、 「キミ、女の子の服に興味あるの?」 とつぜん頭上から聞こえた若い女性の声に、ぼくは思わず椅子から飛び上がった。比喩ではなく、数センチ腰を浮かせたせいで、ベンチがガタンと音を立てたくらいだった。 慌てて振り仰ぐと、スラックスにブラウスを着た若い女性。前下がりのボブカットで、切れ長の目と高い鼻梁、引き締まった表情が特徴的な美人だった。あと、胸も大きかった。 驚きに声も出せないぼくの顔を、女性はじっと覗き込んで、 「おっと、なかなか可愛い子ね。学校は――へぇ、東野高校なんだ。うんうん、これならいけそうね」 「あ、あなた、は――?」 ようやく口を開いたぼくに、女性はニッと快活に笑って、 「初めまして、可愛い女の子のお洋服に興味津々な少年。お姉さんが、君の願いをかなえてあげよう――なーんて、ね」 (続く)