「おむつぐみ」(83)
Added 2020-06-06 07:34:10 +0000 UTC――そして、場面は移って、幼稚園の園庭。 記念撮影にはおあつらえ向きの、園舎を背にした一角である。壁面はパステルな黄色で、1メートルほど上の高さにある窓からは園内の様子が見え、足元の花壇にはパンジーが手入れされている。 そこに集められたのは、「おむつ組」の和実と、年少組の少女たちおよそ40人――これから一緒のクラスで過ごすことになる少女たちだ。 見知った顔も、いくつかあった。 おかっぱ頭のお転婆少女・永田早苗。 ツインテールの生意気少女・神保香織。 そして眠たげな顔のふんわり少女・雨野新菜。他の少女と並ぶと頭半分ほど背が高く、 (面接の日に会ったときは気づかなかったけど、新菜ちゃん意外と大きいんだなぁ……) と、和実がのんきなことを考えていると、 「みーたんは真ん中で、ハンカチが敷いてあるところに座ってちょうだい」 水無瀬貴子が、三脚にカメラをセットしながら声をかける。ちなみに母親と千代、そして「おむつ組がかり」の少女たちも、貴子の後ろに控えて何やらおしゃべりしていた。 「んっ……」 (うう、やっぱり僕が、一番目立つ場所なんだ……) 分かってはいたことだが、やはり恥ずかしい。それでも言われたとおり、花壇の前、敷いてあるハンカチにお尻を下ろして体育座りすると、 「ちがうちがう、脚は広げて、名札がちゃんと見えるようにするのよ」 「う、うぅっ……」 要するにM字開脚である。一番恥ずかしいブルマーや名札を隠すことも許されず、和実はまたおしゃぶりを噛む羽目になる。 そこへ、 「みーたん、みーたん」 後ろからふいに抱き着かれて、和実はびっくりして振り仰ぐ。 そこには雨野新菜が、和実の頭をぎゅっと抱えるようにしてのぞき込んでいた。 「えへへー、にゅーえんおめでとー」 「んっ……」 そうして抱き着かれていると、相手は幼稚園児だというのに不覚にも安心感をおぼえてしまう。 さらに香織と早苗も、 「ちょっと新菜ちゃん、ずるいわよ!」 「あたしたちも、みーたんのそばがいいの!」 そう言って、和実の両脇に座る。 「あらあら、みーたんったら、モテモテね」 貴子はおかしそうに笑ってから、他の園児たちに声をかける。 「それじゃあみんなも、みーたんに声をかけて、周りに並んでちょうだい。背の低い子は前になってしゃがんで、背の高い子はその後ろに立つのよ」 「はーい!」 元気な返事とともに、少女たちはお行儀よく一人一人和実の前に来て、 「みーたん、入園おめでとう!」 「よろしくね、みーたん」 「あたし、チハヤっていうの。仲良くしてね!」 少女たちは笑顔で声を掛けながら、それぞれ左右に分かれてゆく。 「んっ……」 和実はなるべく一人一人の顔をおぼえながら、おしゃぶりを咥えたまま肯いた。 そうして全員が並んだところで、三脚の隣に立つ貴子が改めて声をかける。 「みんな、記念撮影するから、カメラのほうを見てわらってちょうだーい!」 「はーい!」 素直に笑顔を浮かべる少女たち。 背後の新菜に抱きしめられたままの和実も、おしゃぶりを咥えて出来る限りの笑顔を浮かべていると、 「はい、チーズ」 貴子が声をかけて、何枚か撮影する。 (うう、さっきのおむつ交換録画よりはずっとマシだけど、こんな格好で幼稚園児たちに囲まれて記念撮影だなんて、一生ものの恥なのでは……?) (い、いや、余計なことは考えない! ぼくはもう、みーたんなんだから……恥ずかしくっても、「おむつ組」の赤ちゃんとして、頑張るんだから……!) とはいえ、この格好が幼稚園や、園児たちのアルバムにずっと残るであろうことを考えると、暗澹たる気持ちになる和実であった。 そんな彼の懊悩をよそに、撮影は無事に終了し、 「お疲れさま。撮影はこれでおしまいだから、みんな教室に戻ってちょうだい」 「はーい」 三々五々解散し、園舎に戻ってゆく少女たち。 その中で、和実の隣にいる早苗は興味津々に彼のブルマーを覗き込み、 「ねぇねぇ、みーたん。あのおちんちんがおおきくなるの、どうなってるの? 気持ちいいとおっきくなるって言ってたけど、いまも大きくなる?」 無邪気に尋ねながら手を伸ばし、和実の股間についたゾウさんの形の名札の下――先ほど射精したばかりでまだ陣割と痺れたようになっている彼自身のゾウさんの上を、その小さな手のひらで、ごしごしと撫で始めた。 (続く)