「販売作品冒頭部分(仮)」その3
Added 2020-06-03 08:53:53 +0000 UTC「もうちょっと……あと、もうちょっとだから……」 一覧表示を、学生服カテゴリから、下着カテゴリへ変更し、やや性急に商品をカートに追加していく。 刺繍入りの紺のハイソックス、5枚組。 フロントにリボンがついた、シンプルなブラショーツセット。ピンク、ブルー、オレンジの三色セットだ。 まるで女子高生スターターセットのような、制服一式と下着が入ったカートを確認して、 「今までは、ここでやめてたけど……」 決意に満ちた表情で、商品購入ページへと進む。 「今日は、ちゃんと、最後まで――」 注文者情報を入力し、届け先と到着日、支払方法を選ぶ。 「届けるのは、家で大丈夫かな。けっこう大荷物になりそうだから、外で受け取ると目立っちゃうし。到着予定日は、母さんが出かけることも多くて、まんいち家にいても、すぐに自分で受け取れる日曜日の午後に……」 興奮気味に言うと、「注文確定」ボタンにカーソルを合わせて、 「はーっ、はーっ……」 目を閉じ、しばし自問自答するように、深呼吸を繰り返していたが―― カチッ マウスを握る右手の人差し指が動いて、注文を完了する。 「は、はは、買っちゃった……女の子の、制服……」 怯えたように笑いながら、右手を胸に当てる。バクン、バクンと破裂しそうに高鳴る心臓を、押さえ込むようにしていたが、 「届いたら、誰にも見られないように、こっそりと着――」 口にした想像に、ついにこらえきれなくなったように、股間を押さえていた左手でパジャマズボンをずり下ろす。 屹立する、少年の象徴。 生えているのが当たり前とはいえ、ストイックな優等生からは想像もつかぬほど生々しい陽根だった。勃起したことで包皮は完全に剥け、すでに溢れた先走りによって艶やかに濡れた亀頭が、劣情の温度を示して朱に染まっている。 あわただしく、左手で竿を掴む。灼熱する肉棒は、いままで抑圧されていた昂りに激しく脈打ち、ついに訪れた解放の予兆に歓喜するがごとく武者震いした。 「はっ、はぁっ……うう、考えただけで、こんなになっちゃってる……」 呟きながら、少女のような白く細い手で、雄の器官をしごきあげる。 にちゃっ、にちゃっ―― すでに溢れた先走りが潤滑油の如く敏感な粘膜を濡らすが、昂りの熱を冷ますことはできない。指がしごきあげるたびに白く泡立ち、淫らな音がさらに理性を奪ってゆく。十分な予熱を済ませていた劣情は、たったの数擦りで発射準備を整えて、 「んっ――も、もう、むりっ……!」 限界を悟るや否や、彼は机の上のティッシュを数枚引き抜くと、亀頭にかぶせた。そして力任せに握りこんだまま擦りあげて―― 「~~~~~~~~っ!」 ガクン、と腰が大きく動き、チェアの上でのけぞりながら、マナブは絶頂に達した。強烈な快感に叫びそうになるのを、階下にいる母親に聞かれまいと必死で押し殺す。脈動とともに腰の奥から溢れ出した精液が、ティッシュの中に重くなっていった。 「…………っ、はぁっ、はぁっ……」 何度かの放出ののち、ようやくマナブは息をついて―― 「……また、やっちゃった」 脱力感と罪悪感が、胸に重たくのしかかる。 「はぁ、何が生真面目な、堅物なんだか。男のくせに女子制服を着ることを考えてマスターベーションする、ただの変態じゃないか、まったく……」 悔恨に満ちた声で言いながら、ティッシュで丁寧に亀頭をぬぐい、コンビニでもらった小さな袋に入れた。消毒殺菌用のウエットティッシュで手を拭いて、それも一緒に袋に入れると、口を縛って空気を抜く。青臭い匂いとアルコールの入り混じった匂いに花をしかめつつも、フタのついたごみ箱に捨て、ようやく大きくため息をついて立ち上がる。 「はぁ……」 大窓をカーテンと共に開け、匂いの籠った空気を入れ替える。サンダルを履いてベランダに出ると涼しい夜風が、いまだに火照る体を冷ましてくれた。 ちょうど目の前には、お隣のお姉さん――栗原天花の部屋。カーテンは閉じているが、明かりはまだついていた。 マナブは彼女との昼間のやり取りを思い出しつつ、窓の向こうにいるはずの天花に、小声で懺悔する。 「お姉さんは堅物だの、真面目だのって言ってくれてるけど、本当はぼく、他の人たちみたいに遊びの楽しさが判らないだけなんだ。しかも――女の人の裸にも、セックスにも昂奮できなくて、女性の服を着ることを想像するとエッチな気分になっちゃう、ヘンタイなんだ」 もちろん、天花に聞こえるはずはない。それでも口にすると少し心が軽くなり、そのまま言葉を続ける。 「もう、10年も前から女の子の服を着せられることを考えては、マスターベーションして。最近は通販で女子制服を選んで、カートに入れて、買って着るのを想像しながらが定番になってるけど……」 そこまで言いかけて、マナブの頬が、また熱くなる。 「けど――ついに、買っちゃった。女子制服を――ああ、届いたら、ぼく、どうなっちゃうんだろう。考えただけで、ドキドキして、心臓が痛いくらい――」 胸を押さえ、熱っぽい口調でひとりごちる。 「すぐ近くに現物があるって考えるだけで、昂奮しちゃうんじゃないだろうか。誰にも見つからない場所で、こっそり取り出して見たり、触ったり、部屋に飾って、女子高生になったような気分を味わったり――それとも我慢しきれなくて、袖を通して、そのまま――」 想像が、口をついて出る。 ムラムラと劣情がこみあげ、若い盛りの性欲の源は、たったいま出したばかりだというのに大きくなってくるが、 「はぁっ……明日も早いし、そろそろ寝る支度をしないと」 煩悩を吹き飛ばすように大きく息をついて、マナブは室内に戻る。そして画面に映ったままの、「ご注文ありがとうございました」の画面を見つめて、 「……ぼくがこんな変態だって、誰にも知られませんように」 小さく呟いて、ブラウザを閉じた。 (冒頭部分おわり)