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雑女装「おむつの日」

  6月2日(おむつの日) 「マナブ、今日は何の日か知ってる?」 「今日? 6月2日……って、なんかあったっけ?」  後ろ手に何かを隠しながら尋ねる母親に嫌な予感を感じつつ、マナブは答える。  マナブはこの春高校生になったばかり――しかしそれを皮切りに、母親から雑に女装させられることがめっきり増えていた。「高校生になったんだからもういいでしょ」というのがその理由らしいが、何がどういいのかさっぱりわからない。むしろやめてほしい。  そんな息子の内心など斟酌せず、母親はにっこり笑って、 「ゼロ、ロク、ニで、オー、ム、ツー――おむつの日よ」  あっさり答えを言って、前に出した両手には――5枚ほどの布おむつと、赤ちゃんグッズ柄の布おむつカバーがあった。 「な、何で用意してるの!? しかも、布!?」 「あら、紙のほうがよかったかしら?」 「そうじゃなくて! いやまぁ確かにどっちか選べって言われたら紙のほうがマシな気がするけど、なんでわざわざおむつを用意したの!?」 「だって、おむつの日だもの」  まるで答えになっていない。  がっくりと肩を落とすマナブに、母親は嬉々として布おむつカバーを広げ、 「ほら見て、ママ、頑張って作ったのよ。ベビー服の洋裁本の型紙を、マナブのサイズにフィットするようにリサイズしたの。表地は可愛いクリーム色のベビーグッズ柄で、裏地はピンクドット柄で、肌触りのいいベビーニット。間に防水布も入れたし、ウエストや太腿回りにはゴムも入ってるから、本当におもらししても大丈夫なように作ってあるわ」 「そんな気合い入れないでよ! 断りにくくなるじゃん!」 「ふふっ、じゃあ、今回も着てくれる?」 「うう……なんで高校生にもなって、おむつなんか……」 「ありがとう、マナブ――マナちゃん。でも、おむつの当て方わかる?」 「いや、そんなのわかるわけ――あ」  言いかけて、満面の笑みを浮かべる母親に致命的な失言を口にしたことを悟るが、時すでに遅し。 「なら、ママが当ててあげないとね。さ、いらっしゃい。まずはおちんちんの毛を剃って、おまたも赤ちゃんにしてあげないと」 「や、やだ、そんなの、あああっ!」  叫びもむなしく、マナブは服を脱がされてしまう。  ――そして、30分後。 「う、ううっ……」 「あらあら、マナちゃんえーんえーんなの? ミルク? それともおしめが濡れちゃった?」 「ちがうから! っていうか判っててやってるでしょ!」  マナブは涙目で抗議するが、母親にはまるで意に介さない。  けっきょくあの後、裸にされたあげく陰毛を剃られ、おむつとおむつカバーを当てられてしまったのである。母親相手とはいえ下半身を見られ、敏感な部分を触られながら、最近ようやく生えてきた陰部の毛を剃られたのだから、少年としての尊厳はもうズタズタである。腰を前後から包むふかふかの感触は、気持ちいいと言えなくもないのだが、それ以上に落ち着かない。  ましておむつをたっぷり当てているせいで足をぴったり閉じることもできず、本当に赤ちゃんのようなガニ股になっているうえ、上から当てたベビーグッズ柄のおむつカバーによってウエスト部分と太腿回りはぴっちりと締め付けられているのだから、ただただ恥ずかしく、情けないばかりだった。  肘を抱くようにして体を隠しながら、マナブは弱々しく抗議する。 「うう……も、もういいでしょ? このままだとちょっと寒いし、早く着替えさせて――」 「あら、確かにそうね。じゃあ、これを着てなさい」  待ってましたとばかりに母親が取り出したのは、よだれかけのような白い台襟がついた、ピンクのチュニックであった。ノースリーブで、肩まわりと裾には大きなフリルがついている。さらにレースの付いた、白のショートソックスも。 「ほら、これならおむつカバーにもピッタリ合うでしょ?」 「うん――って、そ、そうじゃなくて!」 「ふふっ、とりあえず『おむつの日』の今日いっぱい、その格好で過ごしなさい。あ、おむつはまだ予備があるから、小さいほうはおむつの中にしちゃって大丈夫よ。大きいほうも、どうしてもマナちゃんがしたいっていうなら」 「しないから! ああもう、なんで高校生にもなって、こんな赤ちゃんみたいな格好を……」  大人しくチュニックを着て、ソックスも履きながらも、情けなさそうにぼやくマナブ。  しかし、 「……でも、ドキドキしてるんでしょ?」  おむつカバーの前――ちょうどその下で膨らんでいる強張りをそっと撫でられて、 「…………、うん」  マナブは真っ赤になりながらも、素直にうなずくのだった。   (おわり)


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