「おむつぐみ」(64)
Added 2020-05-03 11:36:13 +0000 UTC「ええ。ここは、和実ちゃんみたいな『おむつ組』の園児のために作られたお部屋なの。もちろん使われるのは、今回が初めてなんだけどね。ちゃんとお手入れしておいてよかったわ」 「う……」 「で、いまは和実ちゃん専用だから、お名前のプレートがかかってるのよ。これなら和実ちゃんにも、判りやすいでしょう?」 「う、うん、わかりゅ、けど……」 だからといって、こんな風に堂々と自分の名前が書かれているのは恥ずかしすぎる。 (しかも、「ほいくべや」なんて……!) 唇を噛んでいる間にも、二人は部屋の前までやってくる。母親の姿がなかったが――おそらくどこか別室で待っているのだろう。 「さ、ドアを開けて、見てごらん。ここがこれから一年間、和実ちゃんがお着換えしたり、おむつ交換してもらったり、お昼寝したりするのに使うお部屋よ」 「うん……」 和実は覚悟を決めて、ドアノブを掴み、ゆっくり開く。 そこは――自宅の「ベビールーム」にも劣らぬほどパステルな部屋だった。壁はピンクで、一面には可愛らしい動物や少女が描かれ、一面は大窓、部屋の中央には巨大なベビーベッドがおかれ、隣にはベビーチェア。そのほかの家具ももちろんベビー用だ。床にはタイルカラーのマット。入り口近くだけが床張りで、ここで靴を脱ぐようになっているらしい。 しかも部屋の奥一面は鏡張りになっていて、扉を開けた和実は真正面から、お受験風女児ベビー服を着た自分の姿を見てしまう。 (う――!) わかっていたこととはいえ、改めてみると恥ずかしさがこみ上げる。それは今だけのことではなく、 (これからこの部屋に入るたびに、あの恥ずかしい「制服」をきた自分の姿を、見ることになるのか――) 「ふふっ、どう? 『ほいくべや』、気に入ってくれた?」 「うう……うん、ちゅごく、かわいくて、きにいりまちた……」 情けない声で言いながら、和実は靴を脱いで足を踏み入れた。 貴子も続けて入り、後ろ手にドアを閉める。こちらも靴を脱いであがると、鏡になっている壁を斜め後ろに背にして、和実に向き合うような位置に立つ。 そうすると、ちょうど和実の位置からは、自分の姿を斜め前に見るかたちになる。自分の恥ずかしい姿を見ながらの面接に、おむつの中で精液に濡れたペニスが、またもピクピクと痙攣し始めた。 「さて、では第二試験を始めるわ。緊張しないで、リラックスして――赤ちゃんになりきって、受けてちょうだいね」 「う、うん……みーたん、がんばゆ……」 和実の答えに、貴子は満足げに嗤った。そして手元のクリップボードに目を落とし、口調を面接らしく改めて、 「まずは――そこにおすわり、してください」 「う、うんっ……みーたん、おちゅわり、しまちゅ……」 貴子の指さす先――床の上に、和実は「おすわり」する。星座でも、胡坐でも、体育ず割でもない。膝を曲げておおきく開き、お尻を落とす「あひる座り」に近い体勢。しかしお尻は床につかず、状態は前に傾いて両手をつくのが、いかにも赤ちゃんらしい。 貴子はボールペンでクリップボードの紙にチェックを入れつつ、 「うんうん、おすわりはオーケーね。それじゃ、ハイハイしてちょうだい」 「うんっ……はい、はい、はい、はい……」 言いながら、和実は両手を交互に前に出し、床の上を進む。四つん這いや匍匐前進とは違う、ほとんど腕の力だけで下半身を引きずりるような「はいはい」だ。 とうぜんその間も、鏡に映る自分の姿は見えている。女児らしいパステルカラーのベビールームで、身長160センチ、貴子とほとんど変わらない体格の自分が、フォーマルなベビー服を着て赤ちゃんとしての面接を受けているのは、まるで悪夢のようだった。 (でも――) 体を包むブラウスと、ロンパースの肌触り。頭を覆うベビーボンネットの紐は顎の下で結ばれ、下半身にはウエストや腿周りをぴったりと包むおむつカバーと、その内側にたっぷり当てた布おむつ――さらに陰部にまとわりついた射精の残滓が冷たくなって、先ほどの痴態が現実であったことを実感させる。 はいはいしつつ、微かに顔を歪ませる和実。そんな彼の内心の屈辱を見透かしたように、貴子はにんまりと笑って、 「いいわよ、和実ちゃん。ハイハイも合格。ふふっ、ハイハイができるなんて、和実ちゃんはえらいわねぇ」 「うっ……あ、みなちぇ、ちぇんちぇい、あいがとう、ごじゃいまちゅ……」 「口調もよし、と。それじゃあ――次はそのおしめ交換シートの上に行って、おむつ交換のポーズ、とってくれる?」 「んっ……うんっ……!」 和実はハイハイで、ちょっと離れた床に敷かれたおむつ交換マット――白いタオル地のマットにピンクの縁取りがついたマットまで行くと、その上にに寝転がり、仰向けになる。 両手は軽く広げて、顔の横に。 両脚は膝を立てて大きく広げ、おむつに膨らんだ下半身――そのスナップボタンを、貴子に見せつけるように。 「うんうん。自分からおむつ交換のポーズを取ってくれるなんて、和実ちゃんは大人しくて、いい赤ちゃんね。これもオーケー、と。それじゃあ――」 貴子はクリップボードにボールペンを挟んで笑い、 「おむつ交換の実演テスト、しましょうか」 (続く)