「おむつぐみ」(56)
Added 2020-04-25 12:01:02 +0000 UTC「ほら、着せてあげるから、じっとしてなさい」 「んっ……」 朝七時半。 倉石和実は自宅二階にある「ベビールーム」で、母親に着替えさせてもらっていた。 「普段着」にしているバックボタンタイプのブラウスと、青いデニムのロンパースを脱がされて、淡いピンクにサクランボ柄の、おむつカバーだけの姿になる。前後とも大きく膨らんで、その中にたっぷりおむつを当てていることが一目瞭然だった。 まるで赤ちゃんのような格好だったが、和実はこの春を中学を卒業したばかりの、15の少年である。ロンパースとおそろいの、青いベビーボンネットのフリルに包まれた顔は、こらえきれぬ羞恥心に紅潮し、いっそう「赤ちゃん」めいた顔になっていた。 しかし母親は、そんな息子の格好や表情を気にした様子もなく、むしろうきうきとした声で、 「はーい、それじゃ『制服』を着せてあげるからね」 「ん……」 和実は泣きそうに歪んだ顔でうなずいた。 最初は丸襟のブラウス。袖はきゅっと窄まって、小さなフリルがついた女児用のブラウスを羽織り、前ボタンを留めてもらう。 続いて―― 「ふふっ、やっぱり何度見ても、このブルマーは可愛いわね」 母親が笑顔で取り上げたのは、黄色いギンガムチェックの吊りブルマー。ややゆったりと作られ、クロッチ部分には横一列に並んだスナップボタン、お尻側には三段のフリル、吊りスカートのような肩紐と、まるでベビー服のような「制服」だ。 「はい、ママの肩に手を置いて、ブルマーに足を通して」 「んっ……」 言われたとおりに、両足をブルマーに通すと、母親の手が腰まで引き上げて、おむつカバーをすっぽりと覆った。中にブラウスの裾をしまい、肩紐を掛けて襟を整えると、 「いいじゃない。ブラウスと吊りブルマーの組み合わせだけでも、可愛いのよねぇ」 満足げにうなずく母親とは対照的に、和実はさらに恥じ入ったようにうつむく。 さらに水色の、ダブルのイートンジャケット。襟元にピンクのリボンも結んでもらう。 母親は一通り見回した後、 「うんうん、前側はこれでいいわね。じゃ、ブルマーのフリルを整えるから、お尻をこっちに向けなさい」 和実が素直に後ろを向くと、母親はしゃがみ込んで、息子のお尻に重なる三段フリルを、一枚一枚丁寧に広げて整えてゆく。 「これでよし、と。帽子を替えるから、前を向いて」 「んっ……」 再び正面から向き合うと、母親の指が顎の下に伸びる。ベビーボンネットを留めている紐の結び目をほどいて外すと――前髪の一房だけを残して剃りあげた、赤ちゃんのような頭が露わになった。 そして新たに、通園帽子のような黄色をしたベビーボンネットがかぶせられ、顎の下でリボンが留められる。さらに足元にも、レース付きのソックスを履かせてもらった。 (やっぱり――何度着せられても、恥ずかしすぎるよ、この「制服」――!) 園児服を強引にベビー用に仕立てたような「制服」を、15の少年でありながら着せられる辱めに、和実は溢れ出しそうになる涙を、ぎゅっと目を閉じてこらえる。奥歯をかみたいほどの屈辱だったが、それすらも許されておらず――前歯がかみしめたのはプラスチック製の、大人用おしゃぶりの吸い口だった。 それを見た母親は、 「そうそう、おしゃぶりも制服用のにしないとね。はい、お口を開けて」 「んっ――はっ、はぁっ……」 取っ手を引っ張られ、口の中からおしゃぶりが引き抜かれる。口の中が自由になると同時、ぽっかりと穴が開いたような、奇妙な喪失感も伴っていた。 しかし数少ない、言語による意思表示ができる機会に、和実はさっきから思っていたことを口にする。 「ね、ねぇ、お母さん……! まだバスが来るまで時間があるんだから、こんなに早く着替え――んむっ」 が、新しいおしゃぶりによって口をふさがれて、短い自由の時間は終わりを告げた。 「ダメよ、和実。基本的に口をきいちゃダメって、先生に言われてるんでしょ?」 「んっ……」 和実は素直にうなずく。 その気ならおしゃぶりを自分で外してしゃべればいいのだが、赤ちゃんの象徴のような器具を口の中に挿入されてしまうと、あらゆる抵抗の意志が失われてしまう。まるでこのおしゃぶりによって、意識そのものが幼児退行してしまうかのようだった。 誤飲防止用のパーツの代わりに、赤とピンクのリボンが羽のようについたおしゃぶり。これもまた「制服」の一部だった。 しかしまだ、終わりではない。 「で、最後にこれね」 母親がそう言ってかざして見せたのは、ゾウの顔を模した、青い名札。その中に入っているのは、組と名前を書いた名札――ではなく、陸奥学園高等部に在籍していたころの、彼の学生証だった。 それを見た和実の顔が、また悲痛に歪む。本当はこの春から通っていたはずの、高校生としての「遺品」を嘲弄するかのような用法に、限りない悪意を感じる。 しかも―― 「名札はここね。ふふっ、これなら何も言わなくても、本当は男の子だってわかるからいいわね」 そう言って母親が付けた場所は、吊りブルマーの股間――ちょうどその下に、彼自身のゾウさんが存在する場所である。安全ピンが通された瞬間、そこから電流のようなものが伝わって、亀頭、陰茎、腰の奥から全身に、瘧のような震えが走った。 (こんな、恥ずかしい――) (でもこれが、ぼくの、制服――) (ぼくが今日から通う、「おむつ組」の制服なんだ……!) 陸奥学園附属女子幼稚園、特別クラス「おむつ組」―― 数日ぶりにその制服を着用し、和実は改めて、今後一年の狂気に満ちた「幼稚園生活」のはじまりを予感するのだった。 (続く)
Comments
ありがとうございます! 「自分が着せられたらどんなに恥ずかしくて気持ちいいだろう」と言うのを考えて出来上がった制服なので、そう言っていただけるととても嬉しいです! 悪趣味であるほど恥ずかしさも倍増…!
十月兔
2020-04-26 06:02:51 +0000 UTC久しぶりのおむつぐみ、嬉しいです。 やっぱり、おむつ組の制服は素敵ですね。特に名札が何度見てもすごい悪趣味で最高です。 辱めるための服装は悪趣味であればあるほどいいと思います。
絹屋敷
2020-04-26 05:46:01 +0000 UTC