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「雑に女子制服を着せられて」(2)

 (2) 「ほら、着替えてきたよ」  ジャンパースカートにボレロの女子制服を着てリビングに下りていったマナブは、そこに母親以外の姿を見つけてぎょっと立ちすくむ。 「さ、サクラ――!?」  相手もほぼ同時に気付き、 「わぁ、マナブも女子制服着てる! かーわいい!」 「そ、そう? ――じゃなくて、なんでここに!?」  マナブの反応に、サクラと呼ばれた少女はしてやったりと笑う。  まだ幼さの残るふっくらとしたピンク色の頬に、切れ長の目、長い睫毛、すっと通った細い鼻梁に、サクランボのように紅く艶やかな唇――作り物めいて見えるほど整った美貌なのだが、精気にあふれた双眸と悪戯っぽい表情のせいで、無機質な印象は与えない。豊かな黒髪を赤いリボンでポニーテールに結わえ、うなじに届くくらいに垂らしていた。  身長はマナブとほぼ同じで、こちらも女子高生としてはやや小柄。華奢な体つきはほとんど胸もなく、余計にマナブと酷似していた。  彼女はいわゆる幼馴染で、家もすぐ隣。小中とずっと同じクラスで、今もなお、同じ高校に通うことになっている――その証拠に、彼女が着ているのはマナブと同じ、清純学園附属高校の女子制服だった。  サクラは、さきほどマナブが鏡の前でやっていたのと同じように、ジャンパースカートの裾を摘まんで広げて見せつつ、 「ちょうどさっき制服が届いたから、マナブに見せようと思って来たんだ。どうどう? 似合ってる?」  清楚な制服を着てのそのしぐさは、もはや腐れ縁レベルでいつも一緒にいる悪戯な幼馴染とは思えないほど上品で、マナブは思わずドキッとする。ついつい顔が赤くなるのをごまかそうと、 「う……うん。馬子にも衣裳って感じ?」 「ちょっとそれ、褒めてないでしょ」  いつものようにジト目で睨むサクラに、マナブはちょっと平常心を取り戻す。 「でもまさか、マナブもおそろいの制服を着てるなんてね。もしかして、女子制服で通学するの?」 「ち、違うよ! 母さんが勝手に買って来て、着ろって言うから仕方なく」 「なーんだ。つまんないの。てっきり高校入学を機に男の娘デビュー! 女装高生はじめました! とかそんなノリかとおもったのに」 「ちがいます」  マナブは赤くなりながら口をとがらせ、改めて母親に向き直る。 「ほら、母さん! もうこれでいいでしょ?」 「うんうん、いいじゃない。いっそ本当に、そのまま学校に――」 「通わないからね」 「つれないわねぇ……でもどう? 自分で着て見た感想は?」 「う……確かに、上品でいいとは思うけど……でも自分で着るのは恥ずかしいかな……」  スカートもワンピースも何度も着ているが、やはり下半身の頼りなさは落ち着かない。まして好き好んで、女子制服で通学する気にはなれなかった。 「じゃあもう、これで着替えるからね」  これ以上二人の前にいると、何をされるか判らない。逃げ腰でリビングを出ようとするマナブを、 「ちょっとちょっと、待ちなさいってば」  サクラががっちり腕をホールドして呼び止めた。腕を抱える拍子に胸やお腹が当たっているのだが、彼女は気にした様子もなく、逆にマナブのほうがどぎまぎして、 「な、なんだよ、サクラ! もういいだろ!」 「いいじゃん、もうちょっとくらい。せっかくだし、記念写真でも撮ろうよ」 「しゃ、写真!?」 「いいわね、それ! ナイスアイデアよ、サクラちゃん」 「お母さんまで……」  けっきょくこうなるのかと、がっくりマナブは肩を落とす。  するとここぞとばかり、 「だっていまのマナブ、とっても可愛いんだもん」 「そうよ、すごく似合ってるもの。写真に残しておかないなんてもったいないわ」 「そ、そうかなぁ……ま、まぁ、写真を撮るくらいなら、付き合ってあげてもいいけど」  二人におだてられて、マナブはあっさり承諾する。  まずはマナブとサクラ、それぞれピンショットで撮影。上品に前で手を揃えたり、スカートを広げて見せたり、後ろ手にして壁に寄りかかったり。その後は二人で、並んで立ったり、背中合わせになったり、逆に正面から抱き合って顔を近づけたり―― (うう、妙な気分……) (女子制服を着てるのも、サクラとこんなに密着してるのもドキドキするんだけど、こうしていると、なんだか百合みたいな感じ……)  思わずそんなことを考えるマナブ。 するとサクラは互いの吐息が掛かるほどに顔を近づけ、妙に上品な声音で、 「ふふっ、とてもよく似合ってますわよ、マナさん」 「マ、マナさんて……ぼくは、男――」  赤い顔で抗議するマナブに、サクラは軽く紅唇を尖らせ、 「ほらほら、そこはちゃんと『サクラお姉様も似合っておいでですわ』って返すところでしょ。はいリテイク」  そう言って再び先ほどの「お姉様」ぶった顔になり、 「ふふっ、とてもよくお似合いでしてよ、マナさん」 「う……あ、ありがとうございます、さ、サクラお姉様。お姉様も、似合っておいでですわ」  マナブは真っ赤になって、「後輩」を演じる。  サクラはにっこり笑って、 「ふふっ、よく言えましたわね、マナさん。でも――ここをこんなにしてるのは、感心いたしませんわよ」  意地悪な表情に戻ると同時、マナブの腰に回していた手がするりと動いて、その前側――ジャンパースカートの内側で膨らんでいる硬いモノを、指先で撫で上げた。   (続く)


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