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「おむつぐみ」(37.5)

※書き忘れた部分があったので(37)の中盤から修正しています。ヘアカットが終わり帽子をかぶせてもらった後、椅子から立ち上がった和実がブルマーお尻のフリルを美容師さんに直してもらっているところからです。ご了承ください。この後の展開についてもところどころ修正する予定です。  ではどうぞ。   * 「これでよし、と。うん、やっぱりフリルがちゃんとしてるほうが、可愛いわね」 「う……あ、ありがとうございます」  美容師にお礼をしていると、 「そうそう、忘れるところだったわ」  貴子はふと、和実の左胸――チューリップ形の名札に手を伸ばして、安全ピンを外す。 「名札も、『おむつ組』の子はこの名札じゃないし、ここにつけるのでもないのよ。正式な『おむつ組』の名札は、これ――」  そう言ってショルダーバッグから取り出したのは、ゾウの顔の形をした、青色の名札であった。 「え……そ、それ?」  身構えていた和実は、肩透かしを食わされて訊き返す。てっきりもっと女の子っぽくて、赤ちゃんっぽくて、恥ずかしいデザインの名札が出てくるとばかり思っていたのに。もちろん青だろうがゾウさんだろうが、名札をつける恥ずかしさに変わりはないのだが。  だが――そんな和実の生ぬるい考えは、あっさりと消し飛ばされる運命にあった。 「でね、中に入れるのも、普通の名札じゃないの。だって、クラスなんて見なくたって、一目でおむつ組だって判るんだもの。でしょ?」 「う……そ、それは、はい……」 「だから代わりに――持ってきた学生証、出してちょうだい」 「――え?」  何を言われたのか、数秒のあいだ判らなかった。事前に言われたとおり、通園バッグの中に学生証は入れてきていたが、なぜここでそれを―― 「ま、まさか……」  気付いた瞬間、恐怖と羞恥がじわじわと全身をむしばんでいった。少年を辱めるための、あまりにも悪魔的な発想で、ただの杞憂で終わって欲しかった。しかし、 「は、はい、どうぞ……」 「確かに、高等部の生徒としての学生証ね。じゃあ、これを名札の中に入れて、と」 「う、ううっ……」  ほんの数日間――実際に学校にいたのは数時間に過ぎないものの、彼が高等部の生徒だった証である学生証は、「おむつ組」という幼稚園最下級特別クラスの名札の中にしまわれてしまった。性別、年齢、名前、そして顔写真――本来の彼をしめす情報が、青いゾウさんの名札の中に納まっているのは、あまりにも悪趣味な「名札」だ。  しかし和実は、もう少し考えるべきであった。なぜその名札が、わざわざゾウの顔の形をしているのかを。 「それでね、和実ちゃん。この名札を、胸元じゃなくてここにつけるのよ」  貴子はにんまりと、保育士よりもSMプレイのミストレスのほうがよほど似合う嗜虐的な笑みを浮かべながら、和実の前にしゃがみ込むと――そのブルマーの前――ちょうどおむつの中で、陰茎が上向きに押さえつけられているあたりに留めてしまった。 「あ、あ、あ……!」  よりにもよって一番恥ずかしい位置。黄色いギンガムチェックのブルマーに、濃い水色の名札はこの上なく目立つ。しかもその位置にあるゾウの顔は、彼が少年であることを暗喩とも呼べないほど明白にほのめかしていて―― 「これでよし、と。どう? これなら和実ちゃんが、本当は高校生の男の子なんだって、一目でわかってもらえるでしょ?」 「い、いやだっ……こんなの、恥ずかしすぎるっ……!」  和実はキッと、貴子をにらみつける。その顔が赤いのは、羞恥のためばかりではなかった。 「み、水無瀬先生! い、いくら校内で失禁した罰だからって……こんなの、ひどすぎませんかっ……!」 「違うわ、和実くん。それは勘違いよ。これは決して、懲罰的な目的でやっているわけじゃないの」 「えっ……?」  思わぬ答えに毒気を抜かれる和実。しかし、 「じゃ、じゃあ、なんで――」 「それを伝えたら目的を果たせないから、今は内緒。いずれ時期が来たら、ちゃんと教えてあげるわ。――さて、長居してしまったわね。それじゃ、これで」  貴子は今まで、すぐそばで見守っていた美容師に軽く手を挙げる。  美容師はにっこり笑って、 「ええ。またのご来店をお待ちしています。和実ちゃんも、またね」 「は、はい……ありがとうございました……」  丁寧に頭を下げて、貴子、母親に続いて外に出る。 とたんに、通りを歩いていた人たちがぎょっとこちらを見る。立ち止まってじっと見つめる人たちもいるほどだった。  何しろ今の和実の格好は、髪型とボンネットのせいで「ベビー服のような園児服」から「園児服のようなベビー服」へと退行している。小さな子供でも人目を引いただろうに、160センチ近い少年なのだから、奇異の目で見られて当然だった。  おまけに股間には青いゾウさんの名札が、彼が少年であることを示し、中に入っている名札に、本当の年齢を察する人もいて―― 「は、早く、早く行こう……!」 「あらあら、和実ちゃんが急かすなんて、そんなに『おむつ組』の準備が楽しみなのかしら」  なぜか駐車場に向かわず、貴子はにやにやと笑いながら、 「実はまだ九時前で、次に行く予定のお店が開いてないのよね。ちょうど喉も乾いたでしょうし、すぐそこにファーストフード店があるから、一休みしていきましょう?」 「じゃ、じゃあ、ぼくは車で待ってるから……!」 「ちゃんと水分取らないとダメよ。お姉さんが奢ってあげるから、いらっしゃい。お母様も、よろしいですね?」 「ええ、お任せしますわ」 「そ、そんなっ……」  泣きそうになりながらも、二人のあとについて、すぐ近くのファーストフード店に入る。 店内には座席に10人ほど、注文待ちに4人ほどのお客がいたが、彼らに一斉に目を向けられて、和実の陰嚢がきゅっと竦みあがる。 「何あれ、園児プレイ? 赤ちゃんプレイ?」 「どっちかって言うと赤ちゃんみたいね。おむつも当ててるみたいだし、本格的~」 「確かに、髪型も赤ちゃんみたい。あれじゃ普通の生活、送れそうにないわね」 「ね。真っ赤なほっぺで、恥ずかしそ~」 「それと、ブルマーの前にゾウさんの名札がついてるのって……」 「あっ……ふーん。男子高校生があんなプレイしてるなんて、マニアック~」  テーブル席の女性客の囁きが耳に入り、和実はさらに赤くなる。通報されないだけましだが、やはりこの格好は人目を引いて仕方なかった。  いっそ堂々としてしまえばいいのかもしれないが、目立たないように生きてきた和実にはそんな度胸もなく――恥ずかしそうにもじもじしているせいで余計に目立って、恥ずかしい思いをするのだった。   (38)へ続く

Comments

ありがとうございます! イラストも復調したらいずれ……!

十月兔

この衣装と名札のイラスト見たいです!

mei

ありがとうございます! 後出し修正という恥を覚悟で挿入した甲斐がありました!

十月兔

色々と目立つ名札の中に学生証を入れる···この発想は控えめに言って天才のそれですね。 最の高です

絹屋敷


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