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「還る場所」3月3日

 やってしまった。  やってしまいました。  朝起きたらベッドがびしょ濡れで、全身から血の気が引きました。汗ではありません。シーツに描かれた黄色い地図は、間違いなくおもらしでした。  呆然としているところに祥子さんもやってきて、すぐに事態を察したようでした。優しく微笑んで、 「久しぶりに自分のお部屋に帰ってきて、気が抜けたのでしょう。すぐに洗いますから、服を脱いで、シャワーを浴びてくださいね。あとは私がやっておきますから」 「は、はい。ありがとうございます」  私はお礼を言って、逃げるように浴室に向かいました。  シャワーを浴びて人心地憑きましたあと、替えの服や下着を持ってきていないことに気付きました。タオルを巻いて二階に上がろうとしたところへ、祥子さんが脱衣所に入ってきて、 「これ、着替えです」  そう言って渡してくれたのは、私が高校のときに着ていた制服でした。紺のブレザーとスカート、長袖のブラウスに、赤い紐リボン――下着まで、10代の少女が着るようなギンガムチェックのブラショーツです。  私は何かの間違いだと思って、 「あ、あの、これ……!」 「ふふっ、お義姉さんの部屋で見つけたから、持ってきちゃいました。さ、どうぞ。着替えてください」 「あの……は、はい……」  悪戯っぽく笑う祥子さんに、私は顔から火が出るような思いでうなずきました。  その気になれば、タオル一枚で自分の部屋に行って着替えることもできました。ですがおねしょをして迷惑をかけてしまった罰を受ける意味でも、祥子さんの「リクエスト」に答えなければいけないと思ったのです。  数年ぶりの制服。サイズはほとんどぴったりでしたが、ただ胸元だけがきつくなっていました。ブラもカップから肉がはみ出してましたし、ブラウスは第三ボタンがはじけそうなほど、ブレザーの胸元も、大きく広がってしまっています。  スカートも、当時はかなりのミニ丈が流行っていたのですが、今こうして20半ばにもなって穿いてみると、その短さに驚きます。ウエストはともかくヒップが大きくなったせいで、お尻側も短くて、ちょっと動くと下着が見えてしまいそうです。  それを着て脱衣所から出てきた私に、祥子さんは嬉しそうに笑って、 「まぁ、お義姉さん、お似合いです! 本当に女子高生みたい!」 「も、もう、祥子さん、からかわないでください……」  私は真っ赤になって、そう答えるのが精一杯でした。  自分の部屋に戻ってすぐに、ルームウェアに着替えましたが――祥子さんの意外な一面に驚きました。優しいだけのひとかと思ったら、意外とお茶目というか、ちょっぴり意地悪なところもあるんですね。  これ以上、迷惑をかけないようにしないと。汚した洗濯物をベランダに干しながら、私はそう誓いました。


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