SS「12年目の1年生」
Added 2020-02-28 10:30:27 +0000 UTC「あ、あたし、また一年生なんですか……!」 美奈の悲痛な声が、先生と二人きりの教室に響く。 彼女は身長163センチ、17歳の少女としてはやや背が高く、体格はFカップのバストと引き締まったウエストがなかなかグラマラス。顔立ちも美人といってよく、長い黒髪をお下げに結わえている。 17歳で一年生、しかも「また」ということは、高校一年生から二年間、進級できないのかと思いきや―― 彼女がいるのは、初等部校舎1年1組の教室だった。 その大人びた肢体に纏っているのは、丸襟ブラウスに紺の吊りスカートとイートンジャケットという、初等部の制服。なまじ17歳としてはグラマラスなだけに、シュールなコスプレとしか見えない。 しかしジャケットの上からでも判るたわわな胸元についた黄色い名札には、 「1ねん 1くみ こうけち みな」 と、はっきり美奈の名前が書かれていた。 「そんな……あたし、もう17歳なのに、また初等部一年生なんて……来年も、この制服で、ランドセルをしょって、新一年生たちと一緒に、この教室で……!」 「仕方ないでしょう。進級試験では、名前が正しく書けないと0点にする決まり。そして進級試験で0点を取ったら、とうぜん進級はできない決まりなんですから」 「だって! 難しすぎますよ私の苗字! 山田さんや田中さんに比べて、難易度高すぎですってば!」 美奈――纐纈美奈は、泣きそうな顔で抗議する。 しかし先生はあっさりと、 「ちゃんと書けないほうが悪いんです。だいいち、もう何回目の初等部一年生だと思ってるんですか。かれこれ11回目ですよ、纐纈さん。同い年の生徒たちはもう高等部三年、大学入試に向けて勉強しているのに……」 「う……だ、だって……ここでちゃんと書けないとって思うと、頭が真っ白になって――その……しちゃって、集中できなくなって……」 美奈はもごもごと抗弁するが、 「本当に、纐纈さんは……それと、来年こそちゃんと進級しないと、今度はもっと落ちてしまうかもしれませんよ?」 「え……そ、それって、どういう……?」 「実はね。附属幼稚園から初等部への進級要件に、『自分の名前を漢字で書けること』が追加されるそうなんですよ。難しい漢字の子でも、自分の名前くらいならみんな書けるだろうって、ね。だからもし、来年それが正式に決まって、あなたがまだ、名前を間違えるようなら――」 「そ、そんなっ! 初等部でも恥ずかしいのに、幼稚園なんて、恥ずかしすぎる……!」 彼女が叫んだ、その瞬間。 「あ……」 ふいに言葉に詰まると、彼女は両手を口元に当てて、ガクガクと全身を震わせる。そしてすぐ、せせらぎのような微かな水音が彼女のスカートの内側から聞こえてきて――やがて音がやんだところで、先生が呆れたように言う。 「もう……纐纈さん、またおもらししちゃったの? ほら、見せてみなさい」 「う……は、はい……」 美奈は真っ赤になりながら、自らのスカートをたくし上げる。 小学生用の、紺の吊りスカート。その下に穿いているのは、ウサギの女の子のキャラクターが描かれている、明らかに女児向けの紙おむつだった。しかもその中心にある吸水パッドは、たっぷりと小水を吸ったことを示して重く垂れさがり、「おもらしマーク」の水色のラインが黄色く変色していて―― 「17歳だっていうなら、こっちも治さないといけませんね。本当の初等部の子だって、おむつはとっくに卒業してますよ」 「だ、だって……恥ずかしかったり、緊張したりすると、おもらしが止まらないんだもん……」 「本当に纐纈さんは、大きくなっても仕方ないんですから」 口調はややきつかったが、先生の眼はどこまでも優しい。 進級するクラスに応じて、教諭の担任するクラスも毎年繰り上がるシステム。しかし11年前から、新1年生を担当するたびに再会しているのだ。 「さ、そのままだとかぶれちゃうから、早くおむつを交換してあげないといけませんね。いっそ、学校にお願いして、特別なベビー服でも着ましょうか? 制服をそのままベビー服にしたような感じで……」 「い、いやっ! そんなの、恥ずかしすぎる……!」 「だったら、ちゃんとおもらしも直しましょうね。来年も様子を見に来て、まだ治ってないようなら、学校に上申しますから。ほら、もっとちゃんと、スカートを上げて」 「そ、そんなぁ……」 美奈は情けない声で言いながら、スカートとブラウスをたくし上げ、今年度最後のおむつ交換をしてもらうのだった。
Comments
ありがとうございます!
十月兔
2020-02-28 23:39:55 +0000 UTCこれは期待
アンブレラ
2020-02-28 20:08:06 +0000 UTC