NokiMo
jugatsu-usagi
jugatsu-usagi

fanbox


SS「憧れと、初めてと」(4)

「はぁ、今日も楽しかった」  プリキュアが終わって呟くと、 「あはっ、お姉さん、すっごい楽しそうだったね。ほんとに低学年の女の子みたいに見入っちゃって」 「う……しょ、しょうがないじゃない……楽しいんだから……」 「で、どうだった? 自分で女の子のお洋服着て、プリキュアを見るの?」 「――、恥ずかしい」  きっぱり答える。プリキュアを見ている間は夢中で忘れてたけど、冷静になると女児カットソーに吊りスカート――しかもサイズが小さすぎておっぱいパツパツ、パンツチラ見えの惨状に、改めて恥ずかしさがこみあげてくる。 「もう、これきりだからね。こんな恥ずかしいことは」 「えー? 他にもいっぱいお洋服あるじゃん。ぜんぶ着てくれないと」 「ぜ、ぜんぶって、この部屋のお洋服を……?」  金に飽かせて――というほどではないけど、自由になるお金があるのを良いことに買いそろえた女児服は、けっこうな数にのぼる。カットソーやブラウス、スカートにワンピース、ドレスにスーツに女児浴衣ドレス。それらをぜんぶ着るなんて、 「無理無理無理!! それはいくらなんでも――」 「お姉さんったら、素直じゃないなぁ。本当は着たいくせに――ううん、着せられたいくせに」  絶句する。何か自分の中の本質を言い当てられたような衝撃に固まっていると、里沙ちゃんはあたしに向かって指を突き付けて、 「はい、お姉さん。これから毎週、日曜日のこの時間は、あたしと一緒にプリキュアを見ること。その時には、あたしが指定したお洋服を着て、女の子になりきること。そうしないと――判ってるよね?」 「う……うん……」  逆らえない。もはや何で脅されてるのか、逆らったら何をされるのかもわからないのに――少女の言葉は圧倒的な力になって、従うしかないと思ってしまう。  里沙ちゃんはにっこり笑って、 「素直でよろしい。んー、そうね。代わりに、あたしはお姉さんのことを、妹として可愛がってあげる」 「い……妹? 私が、里沙ちゃんの……?」 「うんっ。お姉さん、きょうだいのいちばん上でしょ?」 「え、なんでそれを……?」 「だってー、いかにもそんな感じのオーラ出てるんだもん。この部屋だって、どうせ子供のころに可愛い格好が出来なかったとか、そういうんじゃないの?」 「い、言い当てないでよ……っ!」  女子小学生にまで見透かされて、真っ赤になってうつむく。  すると―― 「だからね、お姉さん」  ふいに華奢な体が、私をぎゅっと抱きしめてくる。立ち上がった里沙ちゃんが、まるでお姉さんのように私の頭を抱えて、 「あたしをお姉ちゃんだと思って、いっぱい甘えて、わがままを言ってちょうだい」 「な、なにを……そんなの、おかしいって……」 「この部屋なら、大丈夫でしょ? ほら――そんなに可愛いお洋服を着てるんだから、小学校低学年の女の子に、決まってるじゃん。五年生のあたしに甘えても、おかしくもなんともないって」 「無茶苦茶だよ、里沙ちゃん……」  言いながらも、流されそうになる心を止められない。それほどに、里沙ちゃんの腕の中は、小さな胸は、温かくて優しかった。思えばこんな風に抱きしめられたのなんて、何年ぶりのことだろう? 「さ、まずはお姉ちゃんに、お名前を教えてちょうだい。お名前は?」 「……美奈」 「ミナちゃんね。うんうん、ミナちゃんにぴったりな、可愛いお名前」 「う……」  自分に似合わない可愛すぎる名前も、実はあんまり好きじゃなかった。「ブスなのに名前だけはかわいいよね」なんて陰口をたたかれたことも、一度や二度じゃない。  でも、こうして里沙ちゃんに褒められると、ロールプレイだと判っていても胸が熱くなり、心まで蕩かされそうになる。ちょっぴり恥ずかしいけど、悪くないかもなんて―― 「だ、ダメ……小学生の里沙ちゃんに、甘えたりなんて……」 「ちょっとくらい良いじゃん。あたしならぜんぜん構わないんだし、この部屋の中だけでも、あたしの妹になってちょうだい。実はむかしから、妹が欲しかったんだ」 「んっ……も、もう……」 「あたしは妹ができて幸せ。ミナちゃんは、優しいお姉ちゃんに甘えられて幸せ。ほら、誰も損しない、ウィンウィンの関係じゃん」 「そ、そうなのかな……?」 「そうだって。ほら、ミナちゃんも、あたしのことをお姉ちゃんって呼んでちょうだい。リサお姉ちゃん、って」 「ん……」  羞恥に、胸が破裂しそうになる。  なのに拒絶することはできず――私はその言葉を、口にしていた。 「お、お姉ちゃん……リサ、お姉ちゃん……」 「あはっ、そうそう、あたしが、ミナちゃんのお姉ちゃんだよ」  里沙ちゃん――いや、リサお姉ちゃんは、そう言って私のことをいっそう強く抱きしめる。その細い腕のぬくもりに、不思議なくらい全身に張り詰めていたものが抜けて、ほっと「お姉ちゃん」に身をゆだねた。   (終)

Comments

ありがとうございます~! 書きたい…

十月兔

今度は赤ちゃん扱いされるOLさんが見てみたいです。

hiro


Related Creators