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SS「憧れと、初めてと」(3)

 下半身を包む、インゴムショーツ。小さいせいでゴムが食い込んできついけど――柔らかなコットンの肌触りに、いっそう胸が高鳴る。  ブラジャーも外して、セットのキャミソールに。キャミソールなんて、何年ぶりだろ。強引に腕と頭を通し、後は裾を下ろせばいいだけなんだけど、Eカップのバストが邪魔過ぎる。フロントにリボン、ショーツと同じようにシンデレラとお城がプリントされたキャミソールを着るのは、いろんな意味できつい。  しかも乳首が勃っちゃって、くっきりとシルエットが浮かんじゃってる。早く上に何か着ないと、また里沙ちゃんに笑われちゃ―― 「えいっ」 「きゃあっ!?」  いきなりその突起をつつかれて、思わず悲鳴を上げる。胸元を押さえて、犯人――いつの間にかこっちを見て、両手の人差し指を立てている里沙ちゃんをにらむ。 「もう、里沙ちゃん! やめてちょうだい!」 「だってー、ボタンみたいで、押してくださいって言わんばかりだったんだもーん」 「違います!」  まったくもう。けど、つつかれた乳首はジンジンと妙な熱を発し、乳房の芯に痺れるような快感が走っている。ほんとに、まったくもう。 「お姉さん、顔紅いよ~」 「知りません!」  恥ずかしい、恥ずかしい……完全に、小学生の里沙ちゃんに手玉に取られてるのが判る。ふだんならもうちょっと心に余裕をもって、大人として叱れるのに。  もしかして――女の子の下着を着てるせいで、心まで幼くなっちゃってる……? 「はぁー……」  一つ、深呼吸して落ち着いたところで、 「はいどうぞ」  里沙ちゃんが、ハンガーから外したお洋服を渡してくる。 「う――うん」  白いタートルネックのカットソー――というとシンプルに聞こえるけど、折り返した襟には赤く縁どられたフリルと、小さなリボンがついていて、袖口も同じようになっている。 「私が、これを……」 「うんっ。お姉さんなら、きっと似合うよ。さぁさぁ」 「もう……調子がいいんだから……」  口では言いながらも、ちょっと顔がにやけてしまうのが悔しい。  こちらもキャミソール同様、左右の袖と頭を通してから、裾を下ろすと、一気に胸が苦しくなる――もちろん物理的な意味でだ。サイズが140な上、女児用とあって胸元の余裕もない。伸縮性があるからかろうじて着れているけど、 「わぁっ、おっぱいがぴっちぴち! ラインがくっきりして、せくしー!」 「も、もう……!」 下のキャミソールのラインまで浮かぶほどにぴちぴちだし、裾も特に前側が足りないせいで、おへそが見えてしまっている。みっともないにもほどがあった。 「でも、カットソーでこれだと、ワンピースは着られないかな?」 「うん……たぶん、無理」  カットソーだから何とか着られてるけど、厚手の生地で伸びないワンピースは、どうあがいても胸が邪魔で、背中のファスナーが閉まらないと思う。 「仕方ないなぁ、じゃあ――」  諦めてくれるかな――いっしゅんそう思ったのは、甘い考えだった。 「代わりに、こっちのスカートを着てちょうだい!」  そう言って里沙ちゃんは、部屋の壁に掛かっていた別の女児服を持って来て――ブラウスとセットになった、ピンクチェックのフリルスカート!? 「い、いや無理だってそんなの! サイズが――」 「お姉さん、ウエストだけは細いから、大丈夫だって! はい、着て着て!」 「だけは余計です! もう、里沙ちゃん、強引すぎ……!」  抗議しながらも断れず、スカートを受け取る。あと二分で、プリキュアが始まってしまうのだ。  脇のファスナーを開け、フリルの付いた吊り紐を左右に落として、脚を通す。ほんのちょっぴり(ちょっぴりだ)大きめなお尻につっかえながらもウエストまで引き上げ、フリルの付いた肩紐を引き上げて整える。  うう、吊りスカートって子供っぽいから好きだったんだけど、まさか自分が着る羽目になるなんて。おっぱいの下側が浮いちゃって、すごい変な感じだし。しかも肩紐でウエストの位置を合わせているせいで、裾がとんでもないことになっちゃってる。太腿がほとんど丸出しで、今にもパンツが見えてそう。っていうか、上から見下ろしてるから見えないだけで、ひょっとして…… 「あはっ、お姉さん、パンチラしちゃってる~!」 「やっぱり……!」  真っ赤になって前を押さえる。すると今度はお尻側が上がって、 「お姉さん、そんなにお尻のシンデレラを自慢したいんだ~? かーわいい!」 「ち、違うから! もう、ほんとに……!」  恥ずかしい。恥ずかしい。  前後の裾を引っ張って、何とか隠そうと抵抗しながら、 「はい、もうこれでいいでしょ! ほら、もうプリキュアが始まるから、一緒に見ましょ? ね?」 「うんっ」  時間は8時30分。急いでテレビをつけると、ちょうど画面が切り替わって、プリキュアが始まったところだった。  よかった、間に合った。いつものようにテレビの前にある丸テーブルのクッションに座ると、里沙ちゃんも向かいに座って、 「可愛いなぁ……」 「でしょ? 里沙ちゃんも、プリキュアの可愛さに目覚めて――」 「違う違う、そっちじゃなくて」  里沙ちゃんは屈託のない無邪気な笑顔で、 「お姉さん、すっごく可愛いなぁって」 「う……」  真っ赤になった私は何も言えず、里沙ちゃんから目をそらしてテレビを見るのだった。   (続く)


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