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SS「日曜の変身タイム」

 日曜日の、8時25分。  その時間になると、お隣のリサちゃんがうちに遊びに来る。 「ミナちゃん、おはよ!」 「お、おはよう、リサお姉ちゃん……」  玄関前で出迎えた私を見て、リサちゃんは嬉しそうに笑った。  「リサお姉ちゃん」と呼んだけど、もちろんリサちゃんは私より年上じゃない。リサちゃんは、近所の小学校に通う五年生。対して私は――社会人2年目の、OLだ。 けど―― 「今日もミナちゃんはかわいいね。そのお洋服、すっごく似合ってるよ」 「ん……あ、ありがとう、リサお姉ちゃん……ミナ、とっても嬉しい……」  お礼を言いながらも、恥ずかしさのあまりうつむく。  私が着ているのは、リサちゃんくらいの年の女の子でも着ないような、可愛らしい女児服だった。  長袖のトレーナーは淡い黄色で、襟と袖口、裾のゴムが入ってる部分が淡いピンク。正面に女児服ブランド「ピアニッシモ」のキャラクター――ピンクと水色の被り物をしたウサギのキャラクターが、大きなケーキを挟んで描かれている。  ボトムスはデニムのスカートなんだけど、裾やプリーツの折り目に鮮やかなピンクの糸でステッチが入っていて、左裾には「ピアニッシモ」のロゴ。丈はローライズ&ミニスカートで、太腿はほとんど丸出しになっている。代わりにソックスはフリルの付いたニーハイで、パステルカラーのボーダー柄だ。  いかにも小学校低学年向けの女児服は、どちらも私の身長である154cmよりワンサイズ小さい140cm。というか、この服のサイズ展開は140が上限で――本来は小学校低学年向けのものだ(ちなみに言えば、「ピアニッシモ」自体、ベビーからキッズ、つまりはティーンより下の子向けの女児服ブランドである)。  とうぜん、肩も、袖も、ウエストもぴちぴちで、丈が足りていなかったり、変なしわが出来たりしている。中でもトレーナーの胸元は、Eカップの乳房が窮屈な上に大きく張り出して、その部分だけ布地が大きく伸び、下側は乳袋になって、みっともないような、エッチなような、変な状態だ。  胸元に引っ張られているせいもあり、ただでさえ短いトレーナーの裾丈は特に前側が足りず、おへそが覗いている。出来たら隠したかったんだけど、スカートを上げると今度はパンツが見えてしまうので、こうするよりほかないのだ。  いつもは後ろでまとめて、黒のヘアゴムで留めているだけのロングヘアも、今は頭の高い位置で左右にまとめ、ラベンダー色に大きな水玉柄のリボンで留めている。いわゆるツーサイドアップの状態だ。  頭のてっぺんから足のつま先まで、小学校低学年の女児のような格好だったが――私、「ミナちゃん」こと山内三奈は、本年24歳である。恥ずかしいったらない。  ましてそれを現役小学生の「リサお姉ちゃん」――マンションのお隣さんの娘である大塚里沙ちゃんに見られながら、彼女の妹のように振舞っているんだから、もはや羞恥プレイの領域だ。  恥ずかしさをこらえて、 「リサお姉ちゃん、ミナのお部屋にどうぞ」 「はーい、お邪魔しまーす」  里沙ちゃんは靴を脱いで綺麗にそろえ、私のあとについて部屋に上がる。  2DKの間取りは、右手にキッチン、左手にバストイレのある短い廊下の奥に、二部屋が並んだ構造だ。一方はOLとしての私室らしく、シンプルなリビングになっている。  けれど、里沙ちゃんを通したのはもう一方――パステルカラーの内装を施し、お姫様めいた家具を設置した、いかにもな「女児部屋」だった。半開きのクローゼットや壁のハンガーにも、パステルカラーの女児服や、純白の女児ドレス、シックな女児スーツが掛かって吊るされている。 「うーん、可愛いお部屋。ミナちゃんにぴったりね。あたしにはちょっと、落ち着かないくらいだけど」 「う……その、ごめんね、お姉ちゃん……」  確かにそうだろう。里沙ちゃんは小学五年生だけど、私よりずっと大人っぽい格好をしている。黒とピンクを基調にした、キャミソールとショートパンツ、パーカーのセット――ところどころにフリルがついているとはいえ、いわゆる「小悪魔系」ファッションだ。私が着ている一昔前の可愛い系女児服より、ずっとお姉ちゃんである。  しかし現役女子小学生にまで言われては、立場がない。24にもなった女が、いったい何をしているのかと情けなくなる。でも―― 「あっ、ミナちゃん、悲しそうな顔をしないで。ほら、頭なでなでしてあげるから」 「う、うん……」  自分より背が低い里沙ちゃんに抱きしめられながら頭を撫でられると、不思議と心があったかくなって、 「えへへ……ありがとう、リサお姉ちゃん」  笑顔で答えると、里沙ちゃんもにっこりと返してくれる。  日曜の、この時間。 私は彼女の「ミナちゃん」になって、彼女に甘えている。最初はほとんど脅されて始まったこの関係だけど、今では仕事に疲れた心にしみる癒しのひと時だ。いまだに、ちょっとどころではないくらい恥ずかしくはあるんだけど。 「さ、ミナちゃん。今日も一緒に、プリキュアを見よっか」 「う……うんっ」  私は里沙ちゃんと一緒に、部屋の真ん中に置かれた丸テーブルの前に座ると、テレビをつける。  画面に映し出されたのは、可愛い女の子がふりふりの衣装を着て動き回る、パステルカラーのアニメ。チャンネルを変えるまでもなく、プリキュアが始まったところだった。 「わぁっ……」  子供のころは見られなかった女児アニメに、私が声を上げて見入っていると、 「そんなに楽しそうに見るなんて、ミナちゃんはプリキュアが大好きなんだね」 「う……うん……プリキュア、大好き……」 「あはっ、かーわいい。じゃ、今日も一緒に楽しもうね」 「うん!」  また赤くなりながらも、この日曜日も、リサお姉ちゃんと一緒にプリキュアを見たのだった。

Comments

ありがとうございます~!

十月兔

続き期待してます

アンブレラ

ありがとうございます!

十月兔

設定は少ないけどいいね👍


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