SS「スカートめくり」(2)
Added 2020-01-15 09:53:49 +0000 UTC「やぁっ!?」 甲高い悲鳴が、浩太の口からほとばしる。 教室にまたも爆笑が沸き起こり、 「あははっ、女の子みたいな声!」 「それに、可愛い下着! もふもふプリンだなんて、新井くんの趣味~?」 「いい気味ね!」 主に女子から上がる快哉の声に、浩太は真っ赤になる。 「くぅっ……! う、うるせぇっ……!」 大きくめくりあげられたスカートの中――そこに穿いていたのは、トランクスでも、ブリーフでもない。 プリンのような配色の、もこもことした犬のキャラクターがプリントされた、女児用のショーツだった。しかも低学年が穿くような、インゴムタイプである。女子でさえ五年生になった今ではまず穿かないような可愛らしいショーツは、香苗がこのためにわざわざ持ってきたものだった。 女子は次々に浩太のスカートをめくっていき、 「ほーら、スカートめくりされる気分はどう? ヒロコちゃん?」 「恥ずかしいでしょ? あたしたちが味わったのと同じ恥ずかしさ、たっぷり味わいなさい!」 「あたしは後ろからめくられたから、お尻側をめくってあげる!」 「あははっ、なかなかかわいいお尻してるじゃない! プリントされてるもふもふプリンちゃんみたい!」 浴びせかけられる嘲笑に、浩太の目じりに涙が浮かぶ。 さらに遠巻きに見ている男子たちも、まるで女子がスカートめくりされているのを眺めるかのように、にやにやと笑っていた。単純に、クラスのトラブルメーカーが痛い目に遭っているのは痛快だったし、 (やっべぇ、なんかエロっ……!) 相手が浩太だと判っていながらも、妙な興奮を覚える男子もいるほどだった。 昂奮しているのは、男子ばかりではない。女子もまた、恨み重なるスカートめくり常習犯をつるし上げているというのとは別の興奮に包まれていた。 「あははっ、そーれ、そーれ!」 「お尻も撫でちゃおーっと」 「あははっ、もじもじしちゃって可愛い~!」 女子の一部が悪乗りして、お尻や太腿を撫で始める。 「やぁっ、やめて、スカートめくりなんてしないから、もう、許してっ……!」 浩太が遂に本気の悲鳴を上げてへたり込むと、 「はいはい、もういいでしょ、みんな」 頃やよしと思ったのか、今まで隅で見守っていた澤山教諭がポンポンと手をたたく。 「新井くん、女子のみんながどんな恥ずかしい思いをしたか、よく判った?」 「う、うんっ……判った、判ったよぉ……!」 「反省した?」 「うんっ、反省したからぁ……」 「なら、みんなもこれで終わり。それでいいわね」 「はーい!」 溜飲を下げ、清々しい表情でうなずく女子たち。 香苗もホッとした顔で、すっかりうなだれてへたり込んでいる浩太の腕を引っ張り、 「ほら、着替えさせてあげるから、立ちなさい」 「う、うん……」 浩太は半泣きで、再び女子トイレに引っ張っていかれるのだった。 が―― 「また?」 翌日の「帰りの会」でまたも提議された「スカートめくり」の訴えに、澤山教諭はあきれたように浩太を見た。 浩太は腕を組み、口をとがらせてそっぽを向いている。しかし―― 「ふぅん……」 澤山教諭は小さく笑って、 「仕方ないわね。中村さん、着替えは持ってる?」 「はい。昨日とはまた別の服ですけど」 「準備良いわね。ならまた昨日みたいに、着替えさせてあげてちょうだい」 「はい」 香苗は着替えの入った袋を持って浩太の席に近づき、 「ほら、ついてらっしゃい」 「な、なんだよ! 嫌だからな、俺は――」 「いいから!」 「おい! 引っ張るなよ!」 叫びながらも、浩太は香苗に引っ張られてゆく。 そして―― 「あははっ、制服姿も可愛いわね、ヒロコちゃん!」 「う、ううっ……」 丸襟ブラウスに紺の吊りスカートとイートンジャケットという、正式な場や校外学習では着ることになっているこの学校の女子制服を着せられて、浩太は真っ赤になってうつむいた。 その隣で、香苗は彼の肩に手を置いて、 「それじゃあヒロコちゃん、スカートめくりの罰よ。そうね――今日は自分でスカートをめくって、クラスのみんなにパンツを見てもらいなさい」 「う、うん……」 浩太は赤くなりながらも、自らの手でスカートをめくり、下着を見せる。 ピンクに赤いイチゴがプリントされたインゴムショーツ。微かに前が膨らんでいるその逆三角形の布に、クラスメイト達はまた爆笑する。 その中で、浩太はスカートの裾を握り、じっと羞恥に耐えている様子だった。 (なーんて、ね) しかし香苗は、クラスメイト達とは違う笑みを漏らす。 (昨日の今日でスカートめくりの再犯なんて、あんなに嫌がってたのに変なの。こうなることは、とうぜんわかってたでしょうに) (しかも今日は、ずいぶんおとなしく女子トイレについてきて、あたしに言われたとおりに着替えるなんて――浩太くん、本当は――) (続く)