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第8話「女児服とごっこ遊びと」(13)

 お歌とお遊戯のリハーサルののち、いよいよ「お遊戯会」本番―― 「それでは、高校生のお姉ちゃんたちの入場です。みんな、大きな拍手で出迎えてくださいね!」 「はーい!」  志乃先生の言葉とともに、整列した幼稚園児たちはいっせいに小さな手を打ち鳴らす。  その後ろのほうで、夢月もまた少女たちと一緒に手を叩いていた。なるべく目立ちたくはなかったが、もちろん頭一つ分以上大きい彼が、幼稚園児たちに紛れられるはずもなく、 (やっぱり、幼稚園児の中に俺一人だけ高校生ってのは、絶対目立っちゃってる……) (体は大きいくせに、子供っぽいツインテールに大きいリボンをつけてるし、制服の色も、年少組のピンクだし……) (しかも、パンツも脱がされたせいで、スカートの前がひどいことに……!)  「お遊戯会」はたった今始まったばかりだというのに、もはや一分一秒でも早くこの場を立ち去りたい気分である。しかし前方には式目が、彼をこれから辱めるフルコースのメニューでもあるかのように書かれていた。  挨拶や歓迎の歌といったオードブルを経て、メインは交流授業と、レクリエーション、そして幼稚園児によるダンス披露――先ほど軽く練習したが、思い出すだけでも恥ずかしくなる。 (あれを、ノーパンでやらなきゃいけないなんて……いくらアプリのイベントだからって、恥ずかしいにもほどがあるよ……!)  夢月が思い出し恥じらいしていると、開いた扉からセーラーワンピース姿の女子高生が三人、軽く手を振りながら入って来る。先頭を歩いていた神奈はすぐに夢月を見つけ、にんまりと笑って視線を投げかけた。他の二人も、夢月の姿を見てぎょっとしたように目を丸くする。  やがて三人ともが教室の前側中央に並んだところで拍手が止み、 「幼稚園のみんな、こんにちは。温かい歓迎、ありがとうございます」  女子高生たちは慣れた様子で、少女たちに向かい、自らのスカートをめくって見せる「聖ジョアンナ式」の挨拶をする。白にピンク、オレンジ――女子高生向けのスタンダードショーツの逆三角形が、惜しげもなくさらされた。  それに合わせて、向かい合っている幼稚園児たち――そして夢月も、自らのスカートをめくってお辞儀する。こちらは女児向けのインゴムショーツが中心だったが、ただひとり、夢月だけはグロテスクに勃起した性器を開陳していた。 (ああ、見られてる、見られてる……!) (幼稚園児にも、先生にも、神奈たちにも――!)  やはりこの中では異形に過ぎるモノに、全員がちらちらと視線を向けるのを、夢月はまるで突き刺されるかのようにひしひしと感じていた。  それでも志乃先生は落ち着き払って、 「では今から、附属高校児童文化研究部主催の交流会を始めたいと思います。まずは附属幼稚園代表、潮風奈波ちゃんによる歓迎の挨拶から――」 「はい」  答えて前に出たのは、夢月の隣にいた潮風奈波だった。 「附属高校のお姉ちゃんたち、初めまして。幼稚園年長組代表、潮風奈波です。今日はこうして交流会を開いてくれて、ありがとうございます――」  高校生相手に臆することもなく、しっかりと顔を上げて、歓迎の挨拶を読み上げる。  それが終わると、高校生側から歓迎のお礼と、簡単な自己紹介。  同年代の少女たちが「お姉ちゃん」らしくしっかりとした挨拶をするのを、夢月はいたたまれない思いで聞いていた。 (ほんとは俺も、あの三人と同い年なのに――しかも、男子なのに――幼稚園児のほうに入れられてるなんて、恥ずかしすぎるよ……!)  そして―― 「次は幼稚園年長組による、歓迎の歌です。みんな、雛壇に並んでちょうだい」 「はーい!」  幼稚園児は元気に返事をして、雛壇に整列する。 「え、ええと……」  夢月はとっさに動きについてゆけずに戸惑うが、 「むーちゃん、こっちよ」 「あ、ありがとう、ななみおねえちゃん……」  奈波がさりげなく助けてくれる。 (困ってるところを年長のお姉ちゃんに助けられるなんて、ほんとに年少さんになっちゃったみたい……)  真っ赤になりながら雛壇に上り、整列する。  志乃先生が、部屋の隅にあったキーボードを転がして来て、 「それでは聞いてください。曲名は、きらきら星です。いち、に、さん、はいっ」  掛け声とともに伴奏が流れ――幼稚園児たちは幼さの残る声で、「きらきら星」を歌い始めた。その間、開いた手を顔の横でくるくるさせたり、前方に大きく突き出したり――手ぶりだけとはいえ、簡単な振り付けをする。  とうぜん、それは幼稚園児側にいる夢月もで―― (ええと、最初は顔の横で、次に両手を上げて――そ、その次はなんだったっけ‥?)  他の少女たちと違って、さっきリハーサルで練習しただけ。ぜんぶは覚えきれずに、どうしても周りの動きを見てから真似する形になってしまう。 (うう、俺一人だけワンテンポ遅れてて、恥ずかしすぎる……!) (ただでさえ、制服とチンコのせいで目立っちゃってるのに……)  真っ赤になりながら正面の女子高生たちを見た夢月は、ふと気づく。  女子高生の一人がカメラを構えて、じっとこちらを撮影していることに。 (と、撮られてる……! しかもあの感じだと、写真じゃなくて、動画で……!) (いったい何に使うんだろう……学校に記録として残る? それとも、記念として幼稚園の子たちにも配られる? それとも――もっと、動画サイトとかにアップされたり――!?)  歌いながらも気が気ではなく、そのせいでますます、振り付けが遅れてしまう。 かろうじて歌い終わったものの、雛壇から降りるときにすれ違った東雲神奈から、 「んふふっ、一人だけ年少さんって感じでよかったわよ、むーちゃん♪」 「っ!?」  幼馴染からの揶揄いを込めた囁きに、少年としてのプライドを打ち砕かれる夢月であった。   (続く)

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十月兔

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