第8話「女児服とごっこ遊びと」(9)
Added 2019-12-26 09:55:48 +0000 UTC二人が向かった先は、聖ジョアンナ女学園附属の幼稚園だった。 数日前に附属小学校に行ったが、幼稚園もそのすぐそばだ。駅から通園バスも出ているが、夢月の住んでいる住宅街からは、少女の足でも徒歩で通えるほどの距離である。 「よっうちっえんっ♪ よっうちっえん♪」 隣を歩く少女――女子小学生の二宮榛名が嬉しそうにスキップする隣で、 「ま、待ってよ、榛名お姉ちゃん……!」 彼女に手を引かれる三村夢月は、まるで市中引き回しの刑を受ける罪人のような気持だった。 それも当然だろう。大の男子高校生が、聖ジョアンナ女学園附属幼稚園の制服――もちろん女児用、それも年少組のピンクの制服を着せられて、表を歩かされているのだから。黄色い安全帽に通園バッグ、胸にはチューリップの名札までつけている。 恥ずかしさのせいで足が進まない夢月に、「榛名お姉ちゃん」は立ち止まると、不満そうに頬を膨らませた。 「なんだよー、むーちゃんったら、元気ないなぁ。おちんちんはそんなに元気なのに」 「うっ……」 真正面から指摘され、夢月はいよいよ赤くなる。 アプリのせいで、ごっこ遊びの「幼稚園児役」を割り振られ、知識や腕力まで幼稚園児並みに落とされた夢月だったが、体は男子高校生のままである。 朝から射精していないペニスは、ショーツの中でガチガチに勃起している。サイズが小さければ目立たないのだろうが、あいにく膨張率だけは立派な夢月のイチモツは、スカートの前を誤魔化しきれないくらいに持ち上げてしまっていた。 いくら閑静な住宅街とはいえ、平日の昼間――しかも幼稚園に行くには大通りを行かなければならないため、車も走っているし、人通りもかなりある。もしかしたら知り合いだって、通りかかるかもしれない。 そんな中を、女児用の園児服を着て、勃起していることがまるわかりな姿で歩くのは、ここ一週間で女装外出には慣れてきた夢月でさえも、恥ずかしさの限度を通り越していた。アプリの力で通報されることこそないが、先ほどから通報人にはじろじろと見られて、 (こんなみっともないところをたくさんの人に見られてたら、頭おかしくなっちゃいそう……!) 単にみっともないだけではない。羞恥と緊張と昂奮の三重苦で、彼のペニスは家を出た直後から、怒張とも疼痛とも尿意ともつかない感覚に苛まれていた。歩みも当然遅くなり、よちよちと、本当に幼稚園児のような歩き方になってしまう。 「はぁっ、はぁっ……ね、ねぇ、お姉ちゃん、やっぱりもう、やめようよ……!」 「ダメダメ。むーちゃんは幼稚園児なんだから、幼稚園に行かないとな! 幼稚園にも行けないなんて、それこそ赤ちゃんに逆戻りだぞ」 「う……それは……」 ここで逆らったら本当に赤ちゃんの役を割り振られ、おむつを当てられたりベビー服を着せられたりしそうで、夢月は大人しく従うしかない。 (うう、せめて知り合いには出会いませんように――) ささやかな願いとともに歩き始める夢月だったが、そんな彼の願いはフラグとして即回収されてしまった。 「あれー、やっぱり夢月じゃん」 背後からかかる少女の声に、夢月はビクッと背筋を凍らせる。 見るまでもなくわかるほどの相手の声に、恐る恐る振り返ると、ふんわりとしたボブカットに胸の大きい、セーラーワンピース姿の女子高生。桜色に白のラインとピンクのベルトという、上品で可愛らしいながらも落ち着いたデザインの制服は、聖ジョアンナ女学園附属高校のものだ。 彼女――幼馴染の名前を、夢月は口にする。 「か、神奈……? なんでここに……?」 「なんでって――幼稚園に用事があるからよ。今日は部活動の一環で、幼稚園の子たちと遊ぶことになってるの」 東雲神奈は手早く説明を済ませると、夢月の格好を上から下まで眺めまわしてにやにや笑い、 「むしろ夢月こそ、何で幼稚園の制服着てるのさ? 幼稚園に通いなおすの?」 「ち、違うって、これは、その、ごっこ遊びに巻き込まれて……!」 「むーちゃんはな、あたしの妹の、園児さん役になったんだぞー」 説明に困る夢月と、雑にまとめる榛名。 そんな二人に、神奈はおおよその事情を察したようで、 「ふぅん、そうなんだ。あたしは夢月ちゃんのお友達の、神奈っていうの。よろしくね、夢月ちゃんのお姉さん」 「うん! あたしは榛名っていうんだ! よろしくな、神奈お姉ちゃん!」 「で、聞いた限りだと二人とも幼稚園に行くのよね? なら、一緒に行きましょ。ついでに夢月、なんで園児になってるのか改めて聞かせてちょうだいね」 「う、うん……」 神奈も加わり改めて幼稚園への道行きを再開したところで、夢月は二人の「お姉ちゃん」に挟まれるようにして、これまでのことを説明する。 今日はは女児服を着て、妹とその友達と一緒に遊んでいたこと。 「ごっこ遊び」で幼稚園児の娘役を割り振られ、役になりきるため園児服に着替えたこと。 そして始まったごっこ遊びで、いきなり幼稚園に行くよう指示が出たこと―― 「あははっ、そのアプリも、なかなか粋なことをするじゃない。夢月が幼稚園児、それも年少さんだなんてね。せっかくだから、そのまま幼稚園に通っちゃったら?」 「こ、これはただのごっこ遊びだから! いくらなんでも、恥ずかしすぎるし……!」 制服を着て外を歩くだけでも充分なのに、本当に幼稚園児として生活するなんて考えたくもない――とはいえ、 (どうせいつかは、本当に幼稚園児になるイベントも起きるんだろうか……) そんな想像にぞっと身を震わせる夢月。しかし同時に、スカートの前を押し上げている勃起の内側を欲情の蜜が通り抜け、じっとりとショーツを濡らすのだった。 (続く)