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SS「聖夜のペチコート・プレゼント」(下)

 二組の親子はベンチに座り、おしゃべりを始める――と言っても、しゃべっているのは隣り合って座っている母親同士で、女装した息子二人は外側でそっぽを向いていたが。 「ふふっ、女の子になりたいのはうちの子だけじゃなかったのね」 「ええ。プリンセスにこんなものを欲しがるだなんて、うちの子ったら、意外と可愛いところあったのねぇ」 「ち、ちがっ……!」 「これはなんかの間違いだって!」  たちまち両側から抗議の声を上げる少年二人だったが、 「そんなこと言ったって、サンタ様の目はごまかせないわよ」 「ええ。恥ずかしがらないでも、これからは毎日女の子の服を着せてあげるから、安心しなさいね」 「こんな裾の長いドレスじゃ、サッカーなんてできないものねぇ」 「ふふっ、ほんとにねぇ。これで少し、大人しくなってくれるといいんだけど」  笑いさざめく母親に、真っ赤になる息子二人。  そこへ―― 「まーまー、皆さんお揃いで。ほら、カズキ、挨拶なさい」  やってきた親子を見て、四人はまた絶句した。  母親に手を引かれ、泣きそうになりながら近づいてきた少年は、女児用のふりふりブラウスにピンクのスカート、真っ赤なカーディガンといういで立ちだったのだが――そのスカートはあまりにも短く、ほとんど太腿が丸出しになっていた。いや、それどころか歩くたびにスカートが揺れると、その中のピンクの下着までちらちらと覗いている。 「や、やだっ、こんなの……ユータとコージに、パンツ、見られちゃう……!」 「なに言ってるの、今までさんざんスカートめくりしてたんだから、そのくらい我慢しなさい。それに、プレゼントにそれを欲しがったのはあなたでしょ」 「違うんだってばぁ……!」  泣きそうな顔で叫ぶ和樹だったが、騒ぐと周りから注目されてしまう。真っ赤な顔でうつむいて、スカートの中を見られまいと小股で歩くその姿は―― 「ふふっ、和樹君ったら動きまで女の子っぽくなっちゃったわね」 「ええ。ずっと大人しくなったし、スカートめくりももうしないだろうし、とても素敵なプレゼントだったわ。うちはこのまま、女の子として育てちゃうつもり。もちろんミニずかーとばっかりで、ね」 「あら、いいわね。うちもそうしようかしら。女の子としてしつけ直せば、お友達と喧嘩するようなこともなくなるでしょうし」 「賛成。まさかスカートやドレスでサッカー仕様だなんて、思わないでしょうしね」  笑いかわす母親たちとは裏腹に、少年たちは真っ赤な顔で黙り込んだままだ。これからの女児服を着せられる日々を考えると情けなくてたまらないが、泣いたらますますみっともない。 「ほら、雄太。いつまでもそっぽ向いてないで、他の二人に挨拶なさい」 「う、く……!」 「浩二も、他の二人も女の子になってるんだから、安心でしょ?」 「そ、そういう問題じゃ……!」 「和樹もスカート押さえてないで、ちゃんとみんなに挨拶なさい」 「は、はい……ふたりとも、あと、お母さんたちも、こんにちは……」  最初に折れたのは、和樹だった。一応はスカートで太腿の隠れている二人に比べて、下着すらチラ見えしているこの姿で駅前を連れ回され、すっかり心が弱っていたのである。  雄太と浩二も目を見合わせて、 「う、うん……こんにちは……」 「こんにちは……」  頭を下げる雄太に、ドレスの裾をつまんで見せる浩二。  そんな息子たちの姿に、 「まぁまぁ、ちゃんと挨拶できるなんて、すっかりいい子になっちゃったわね」 「ほんと、お淑やかになって、うちの子とは思えないくらい」 「ふふっ、サンタ様からの、最高のプレゼントね。さ、それじゃあ今度はみんなで、あちこち見に行きましょうか。これから女の子生活、いろいろ必要だものね」 「ええ。アクセサリーに、ステーショナリー、漫画や雑誌に、家具なんかもそろえてあげないとね。いままで着てた服や漫画を下取りに出して、ぜんぶ入れ替えちゃいましょ」  母親たちはそう言って、「娘」を連れ歩きながら、新生活に必要なものを揃えていった。  「娘」たちもまた、恥ずかしそうにしながらも逆らうことはできず、むしろまんざらでもなさそうで――何より友達も同じ境遇であることが最後のひと押しになって、新しい生活を受け入れるのだった。  この日から、三人の少年は生まれ変わったようにおとなしい女の子として生活するようになった。  女の子らしく身だしなみを整え、女の子らしく上品な言葉遣いになり、もちろん乱暴なことやスカートめくりなどせずに、いつしか女子とも仲良くなって、女の子同士で着せ替えごっこしあったり、少女漫画を読んだり。まだ恥じらいは残っているものの、「逆にそれが可愛い」と女子からは好評だ。  やんちゃな男の子から、大人しい女の子へ。  母親も、友達も、女の子たちも――そして本人も笑顔になったことが、この街のサンタの「プレゼント」だったのかもしれない。  めでたし、めでたし。   (おしまい)


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