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第7話「巨乳とアルバイトと」(11)

 夢月の口元に近づく、香澄の乳首。  まさに両者が邂逅を果たそうとしていたその瞬間、 「あら、お邪魔だった?」  入り口のほうから投げかけられた女性の声に、夢月と香澄はハッと離れてそちらを振り返る。  そこにいたのは、同じくウエイトレス姿の女性――桜木綾音だった。制服によって強調される胸元は二人以上で、別に勝負したいわけでもないのに、なんとない敗北感をおぼえてしまう。 「二人がそういう関係だったなんてね。うーん、この場合は百合って言っていいのかしらね?」 「「ち、違いますから!」」  綾音の言葉に、二人は真っ赤になって声をそろえるが、彼女はさらりと受け流し、 「くすくすっ、冗談よ。それよりも、早く上がったほうがいいんじゃないかしら。ご家族も心配してらっしゃるでしょうし」 「あ、はい!」  家で待つ紗月と母親のことを思い出して、夢月は慌てて着替えを再開しようとする。いちおうメッセージは送ったし、夕飯も先に食べているとは思うが、待たせていることに変わりはないのだ。  すると横から香澄が、 「せっかくだから、そのまま帰ったら? もうしばらく着ていたいんでしょ?」 「え、そ、それは……! さすがに恥ずかしいから、着替えて帰るつもり――」 そう言いかけて、制服が入っているはずのロッカーを開けた夢月だったが。 「え……せ、制服が、ない……!?」  バイト前にかけておいたはずの制服がなくなっているのを見て、彼はすべてを察する。 (誰かに盗まれたとは考えにくいし、これもアプリの「イベント」か……!)  隣の香澄はあっけらかんと、 「着替えがないなら仕方ないね。そのまま帰りなよー」 「う、うん。でも……いいんですか?」  お店の制服のまま帰ったら、迷惑じゃないだろうか――この期に及んでそんなことを考えてしまい、夢月は綾音におうかがいを立てる。  しかし綾音は平然と、 「もちろん大丈夫よ。香澄ちゃんに入ったけど、その制服も今日の記念にあげるから、ぜひ着てちょうだい。おうちでも、外でも、エッチなことをするときでも。するんでしょ? その制服を着て、オナニーを」 「それは――は、はい。ありがとうございます」  綾音に悪意がないのは判っているが、あまり直接に言われると恥ずかしい。さらに、 「そうだ! 夢月ちゃんさえよかったら、うちでバイトしない? もう一人の子が休みがちだから、この時間帯に入ってくれると、助かるんだけど」 「そ、それは……」  魅力的な誘いではあった。この制服を着て接客できる――たくさんの人に見られるというのなら、それだけでも働く価値はある。しかし、 (おっぱいが大きくなってるのは今日だけだし、男の平らな胸でここの制服を着ても、面白くはないからなぁ……)  ついついファッション目線で考えて、夢月が考え込んでいると、 「ふふっ、すぐに決めなくてもいいわ。やってくれる気になったら電話をちょうだい。はいこれ、うちのバイト募集」 「あ、ありがとうございます!」 「じゃあ、続きをごゆっくり~。ベッド使いたいなら仮眠室でどうぞ~」  綾音はひらひらと手を振りながら、最後に爆弾を投下して店内に戻っていった。 「はぁー……」 「どうする? 仮眠室行くならそれでもいいけど……初めてだから、優しくしてね?」 「いや、いかないからね!?」 「むふふっ、冗談冗談。さ、着替えちゃお」  狼狽えて叫ぶ夢月に、香澄は歯を見せてチェシャ猫のように笑い、着替えに取り掛かった。  その様子を横目に見つつ、 (純情なのか人が悪いのか、判らない子だなぁ……)  こっそり溜息をついて、夢月は今度こそ着替えを再開する――といっても、こちらは制服に着替えるのではなく、ウエイトレスの制服をきちんと着直すのだが。 (このウエイトレス制服のまま、家に帰る――)  学校の女子制服姿も恥ずかしいが、この制服はいっそうだ。今さらながら、巨乳化しているときにこの制服でアルバイトするイベントが起きたのは、アプリの周到さに舌を巻く。実は誰かが手動で決めているのではないかと疑いたくなるほどだ。  それでも、巨乳の時にそれを強調するような制服を着られることには奇妙な高ぶりをおぼえる。ましてこの格好で家に帰るとなったら、沢山の人に見られることは必定だ。想像するだけでも乳房がギュッと締め付けられるような、熱を帯びた疼きに襲われて、 「はぁっ……!」 「なになに、夢月ちゃん。ウエイトレスの制服で人に見られること考えて、コーフンしちゃってるのかー?」 「う、うん……」 「あははっ。帰り道に我慢しきれなくなって、路上オナニーするなよー?」 「し、しないってば!」  夢月は真っ赤な顔で反論する。 (いくらなんでも、下校途中にオナニーするような真似はしない……と、思いたい……) 微妙に自信がないことを考えつつ、まずはブラウスの胸ボタンを留め直そうとするが、中につけているブラジャーのバックホックが外れたままなことに気付く。 (いったんこれ、脱いでからじゃないとブラホックが留められないな……いや、今ならアプリの機能が使えるんじゃ?)  夢月は開いた胸元もそのままに、ロッカーからスマホを取り出して、元凶のアプリ「おもらしガールリンク」のを開く。ゲーム内のアバターも、ちゃんと巨乳ウエイトレスだ。その下の「服装クリア」のボタンをタップすると、ブラのホックもブラウスの胸元も元通りに、綺麗なウエイトレス姿に戻っていた。ろくでもないアプリだが、こういう時は便利だ。  隣ではちょうど香澄も着替え終わったところで、 「じゃ、行こうか」 「う、うん……!」  いくら巨乳化しているとはいえ男子高校生である自分が、タイトスカートにシルエットを浮かべた可愛いウエイトレス制服姿で外を歩く――考えるだけで、背徳感と高揚感が止まらなかった。    (続く)


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