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連載小説 第六話「セーラー服とレオタードと」(4)

「どうする、お兄ちゃん?」 「ん……セーラー服だし、これにしようかな」  そう言って選んだのは、シンプルなピンクドットのブラショーツセット。  しかし紗月は、 「えー、せっかくだからこんなのはどう?」  そう言って、別のものを引っ張り出した。  濃い紫を基調に、赤と黒いチョウチョをモチーフとした刺繍やレースがあしらわれたブラショーツセット。上は3/4カップブラで、カップ数はBだ。  そしてショーツは、なんとTバック。お尻側の、ちょうど紐が交差しているあたりに、真紅のチョウチョが翅を広げている。前側もローライズ気味で面積が少なく、これでは夢月のなにがはみ出してしまいそうである。 「こ、こんなの穿いていけるわけが……!」 「大丈夫だって、万一おちんちんがボロンしても、誰も何とも思わないから」 「それはそうかもしれないけど、単純に恥ずかしいっていうか……だいいち、セーラー服には合わないだろ、こんなえ、エッチな下着は」 「えー? 清楚なセーラー服の下はエッチな下着ってのも、それはそれで乙なもんじゃない?」 「お前本当に小学生……?」 「まぁまぁ。とりあえず着てみてちょうだい」 「う、うん……」  夢月は言われるままに、まずはネグリジェを脱ぐ。  小学生の妹の前で全裸になるのはほんの少し抵抗があったが、今さらといえば今さらだ。何よりもうそろそろ朝食の時間だ。早く着替えてリビングに行かないといけない。 「でも――これを、穿くのか……!」  紫のTバックショーツを両手で広げて、夢月は喉を鳴らす。これまでも一回、豪華な大人向けのショーツを穿いていたが、Tバックは初めてだ。  恥ずかしさをこらえて脚を通し、腰まで引き上げる。後ろ側が完全に紐になっているせいで、お尻の谷間にぴったりと入り込む。前はといえば、ついさっき射精したばかりで萎えている状態の今ならかろうじて入る。 「な、何とか着られたけど、これ、勃ったら出ちゃう……!」 「んふふっ、それもそれで楽しいじゃない。さ、次はこれ」 「う、うん」  渡されたブラジャーに腕を通して、背中のホックを止める。 (ブラホックも自分でできるようになったけど、男子高校生のスキルじゃないよなぁ)  ぼやきながら、ブラのカップの中に胸の肉を寄せるようにする。 「そうしてると、ほんとに女の子みたいね」 「もう、からかわないでよ……こうしないと、胸元が落ち着かないんだから……」  夢月は赤くなる。もちろん胸があるわけではないが、多少なりとも肉を寄せてフィットさせないと、こすれて落ち着かないのだ。  そして、憧れのセーラー服―― 「ゴクッ……」  その前に立ち、まず襟に結ばれたスカーフをほどき始めるが、 「セーラー襟の中で折りたたまれてる……? どうするんだろう、これ?」 「んふふっ、そのあたりはあたしが教えてあげる。大変だったらアプリで何とでもなるし」 「うん。えーと、次はどうすればいいの? ファスナーも、ボタンも見当たらないけど」  何しろ着たことも脱がしたこともないセーラー服、複雑すぎて戸惑うばかりだ。 「まずは襟の中にある内布のスナップボタンを外して。それで次に、左脇――向かって右側の脇にあるファスナーを開くの。あ、袖にもスナップボタンがついてるから、それも外してね。あとはそのまま、頭からかぶるように着ればいいのよ」 「ええと、スナップボタンを外して――」  妹に言われたとおりに、夢月はセーラー服を着ると、ブレザーと似たやや厚ぼったい生地が肌にざらつく。そしたら今度は逆に、脇腹のファスナーを占めて、セーラー襟の前当てをスナップボタンで留めれば、とりあえず着用は完了だ。 「次はスカーフね。これはちょっと難しいから、お兄ちゃんはセーラー襟を立てておいて」 「うん」  夢月は素直に、まるで頭巾のようにセーラー襟を立てる。  すると紗月は、三角に折ったスカーフをさらに4分の1ほど折り返し、襟の裏側にあてがう。そして両端を襟の前で綺麗に結ぶと、 「お兄ちゃん、襟を下ろして」  そう言って、兄が下した襟と、その後ろから三角形に覗いているスカーフを整えた。  さらに紺のプリーツスカートを穿き、刺繍入りの紺ハイソを穿けば―― 「これが、セーラー服……」  鏡の前に立って、呆然と自分の姿を見る。ブレザー制服とともに「女子高生」の象徴のような制服を着ていることに、ドキドキが止まらない。ツインテールも、いかにも古風な女学生といった感じだ。 「まさか自分が、着ることになるなんて――」 「んふふっ、憧れのセーラー服を着られて良かったわね、お兄ちゃん」 「う……うん」 「でも、着るのはけっこう難しいでしょ? もちろんいつでも手伝うけど、自分一人でも着られるように頑張ってね」 「うん――といっても、アプリ次第なんだけど」  夢月は袖のスナップを留めて、胸元のスカーフを弄る。 「さ、それじゃそろそろお母さんが呼ぶ時間だし、下にいこっか。あ、あたしも――」  今までネグリジェだった紗月は、アプリを操作してワンタッチで小学校の制服に着替える。自分のほうは特に着替えに対する思い入れはないようだった。 「いこ、お兄ちゃん」 「うん」  妹に続いて部屋から廊下に出ながら、夢月はお尻を直接撫でるスカートの感触に身震いする。 (うう、今日一日、このショーツで過ごさなくちゃいけないんだ……)  そのくすぐったさに、今日一日のことが思いやられるのだった。   (続く)


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