連載小説 第六話「セーラー服とレオタードと」(3)
Added 2019-11-12 08:24:57 +0000 UTC「さて、それじゃ今日の結果を見よっか」 アプリの機能で、とりあえず精液やらなにやらを綺麗にした後で、夢月はようやく、今日のイベントを確認する。 服装「セーラー冬服」 (夜)「ランジェリー」 髪型「ツインテール」 「あれ――前はもうちょっとたくさんの結果が、表示されてなかったっけ?」 ネグリジェはそのままに、早くも髪型だけはツインテールに変更された夢月が違和感に首をかしげていると、 「あ、気付いちゃった?」 紗月は悪びれもせずに笑い、 「実はトレーナーのほうの権限で、お兄ちゃんのほうの結果表示をオフにしちゃったんだ。イベント自体はちゃんと起きるから、安心していいよ」 「表示をオフにしたって……それじゃ、おもらしとかおねしょの回避条件が判らないじゃないか! それに、アダルトイベントも――」 「表示してないほうが、スリルがあっていいでしょ? どっちみち、おねしょしてもおもらししても、えっちなことをしても、問題にならないんだからいいじゃない」 「良くないよ! 早くアプリをクリアして、元の生活に――」 「本当に、戻りたい?」 妹の言葉に、夢月はぐっと詰まる。 始めたその日は「こんなアプリ、一日も早くクリアしてやめてやる」と思っていた彼だが、ここ数日の女装生活をすっかり楽しんでいる。とはいえ、 「も、もちろん。女装だけならまだしも、おもらしやおねしょは、さすがにちょっと嫌だし……」 「んふふっ、女装だけならいいんだ。女装オンリーモードがあればよかったんだけど、このアプリ、もともとおもらし改善が目的だから、そういうわけにもいかないんだよね~。ま、大丈夫だって! おもらしやおむつも、そのうち楽しく感じられるように――」 「なりたくないから言ってるの! まったくもう……」 夢月はため息をつく。 「まぁ、前に言ってた『固定イベント』だっけ? それが全部終わるまではやめられないんだろ? だったらしょうがないから、それまでは紗月の好きにしていいけど――代わりに、もうクリアできるってときになったら、協力してくれよ?」 「うん。その時まで、お兄ちゃんがこのアプリをやめたいって思っていたら、ね」 「う……そんなの、やめたいに決まってるし」 「んふふっ、どうかなー。ま、それよりも――今日はセーラー服だね、お兄ちゃん」 紗月は視線を、部屋の壁に移す。 今までは男子ブレザー学生服――ここ数日は女子ブレザー制服で、昨日は女児入学スーツが掛かっていたその場所に、今日はセーラー服が掛かっていた。 冬服の、紺のセーラー服。襟と袖口には白いラインが二本ずつ入り、前には赤いスカーフが結ばれている。下はもちろん、紺のプリーツスカートだ。 「うんうん、いかにも女学生って感じ。お兄ちゃんも好きでしょ? こういうの」 「う……うん」 夢月はドキドキしながらうなずく。 実はこれまで、セーラー服の学校に通ったことはない。保育園と小学校は制服なしだったし、中学校も、女子はベストとブレザーの制服だった。しかし「女子学生」の象徴のようなセーラー服は、テレビや街中、グラビアなどで見かけるたびに、理由の判らないときめきに胸を躍らせたものである。 しかし、今ならわかる。 あのときめきは、「自分もこれを着てみたい」という憧れだったのだと。 (そのセーラー服が、目の前に……) (今から俺、これを着られるんだ……!) 胸の高鳴りが止まらない。 「さ、今日も自動で着ることはできるけど――自分で着るでしょ?」 「うん」 夢月は赤くなりながらも素直に答えて、まずは下着を選ぶため、クローゼットの下の引き出しを開ける。 そこに入っているのは、色も形もとりどりのインナー。 白やグレー、パステルカラーのブラジャーとビキニショーツ、刺繍入りのハイソックスやルーズソックスのような高校生向けのものはもちろん、他にもいろいろと入っている。 女児向けのインゴムショーツやキャミソール、ハーフトップ。 大人の女性向けの、豪奢なデザインのブラショーツ。 布面積があまりにも小さかったり、大事な部分にスリットが入っていたりするセクシーなデザインのブラショーツ――さらにはガーターベルトやストッキングのセットまで。 ブラショーツだけではない。キャミソール、スリップ、コルセット、スリーインワン、テディ――もはや夢月には名前すら判らない、「エロい下着」が、大量に折りたたまれてはいっていた。 (これもそのうち、着ることになるんだ……) たくさんの下着を見ながら、夢月は甘美な戦慄に身を震わせた。 (続く)