連載小説 第五話「入学式とお友達と」(6)
Added 2019-10-31 08:55:20 +0000 UTC「さ、時間もないし、さっそく外で写真を撮りましょう。カメラを持っていくから、二人は先に行ってなさい」 「はーい」 元気よく返事する紗月。もはや何もかもが矛盾だらけだったが、あいにくそれを指摘する人は誰もいなかった。 二人そろって玄関に行くと、そこには真新しい二足のシューズが並んでいた。 片方はピンクで、バックルに大きなリボンがついた、ガールズのフォーマルシューズ。もう片方は黒のパンプスで、飾りのないシンプルなレディースだ。 しかしそのサイズは、ピンクのもののほうが一回り大きく――こちらもあべこべに、前者が夢月サイズ、後者が紗月サイズとなっていた。 「んふふっ、シューズはどう? 夢月ちゃん?」 「うん。ピンクで、可愛い……」 子供のころから刷り込まれている「女の子の色」。それを身に着けることに抵抗を感じながらも、しかし心の奥が希求していたのを感じる。 並んで玄関のマットに腰を下ろし、足を通す。男子用のローファーよりもさらに薄く、硬い穿き心地は、とても長時間の歩行に適したものとは言えなかったが、それでも可愛らしさは格別だ。ましてレースのショートソックスと組み合わせると、本当に小さな女の子になってしまったようで、 「ん、う……!」 またしても軽い絶頂に達し、先走りが溢れる。 そんな兄を、先にパンプスを履き終えて立ち上がっていた紗月が見下ろして、 「さ、夢月ちゃん。立って、玄関のドアを開けてごらんなさい」 「う――うん」 妹に導かれるまま、夢月はゆっくりと立ち上がり、玄関に向かう。鍵を開け、ドアノブごとドアを一気に押して―― 視界がパッと明るくなると同時に、爽やかな風が全身を撫でた。 「あ、ああ……!」 ここ数日、女子校生の制服やブルマーで外に出てきたとはいえ、いま全身を包んでいる感動は全くの別物だった。朝起きてから一度も抜いてもらっていないこともあって敏感になっている全身に、外界からの刺激がダイレクトに突き刺さる。 今まで見慣れたはずの住宅街も、まるで別世界。映像がゲシュタルト崩壊を起こしたように、まるで見たことのない景色に映る。 そのまま数歩外に出て、見慣れているはずの新鮮な風景に見入っていると、 「どう? 女児スーツでのお外は?」 「す、すごい、ドキドキする……」 じっさいには、ドキドキどころではない。心臓は破裂しそうなほどに高鳴り、ご近所さんから見られているかもしれないと考えるだけで止まりそうになる。 (けど、これから小学校に行って「入学式」唯一の新入生として参加したら、もっとたくさんの人に見られることに――) 「んっ……」 またも軽いエクスタシー。射精はできないまま、ただ快感だけが全身を震わせる。 そこへ母親もやってきて、 「ほら、二人とも写真を撮ってあげるから、家の前の道路に出なさい。何枚か、写真を撮るからね」 「はーい。ほら、夢月ちゃん、行きましょ」 「うん」 「お姉ちゃん」に手を引かれて、夢月は玄関から敷石を踏んで、低い門扉の外に出る。 目の前は住宅街の間を走る生活道路で、昼間ならほとんど人通りもないのだが――あいにく朝八時のこの時間は、ちょうど通勤通学タイム。中学生や高校生、中にはスーツを着た会社員の姿もあり、 「ひっ……!」 彼らから向けられる視線に、夢月は思わず、門の内側に逃げ込みそうになる。 しかし、あとからやってきた母親が立ちはだかって、 「ほら、表札の横に、並んで立ちなさい」 「う、うん……」 逃げ道をふさがれた夢月は観念して、表札の横の石塀の前に、紗月と並ぶ。 カメラを構えた母親が正面に立って、 「はい、それじゃ二人とも、こっち向いて。夢月はランドセルの肩ベルトを掴んで、紗月は両手を重ねるようにするのよ」 「はーい」 いかにも小学生らしいポーズの指定。それでも言われたとおり、両手で肩ベルトを掴むと、 「それじゃ撮るから、笑ってちょうだい。三、二、一、ハイ」 引きつったようになりながら、それでも精一杯の笑顔を浮かべると、カメラのフラッシュが瞬いた。さらに何度か撮影した後、 「夢月、今度は前で手を重ねて。おちんちんの前あたりで」 「う、うん……」 母親からの直接的すぎる指示に、真っ赤になりながらもしたがう夢月。そのポーズでも何枚か撮影したところで 「それじゃ、次ね。夢月――次は、自分でスカートをめくって、持ち上げて見せなさい」 (続く)