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連載小説 第五話「入学式とお友達と」(2)

 あれこれと済ませてリビングに下りてゆくと、システムキッチンで朝食の支度をしていた母親が顔を上げた。 「おはよう、夢月、紗月」 「おはよう、お母さん」  お揃いの女子小学生制服で挨拶を返す兄妹を、母親はとりわけ驚いた様子でもなく迎えて、 「あら、夢月も似合ってるじゃない。ちょっと背が高いけど、本当に小学生みたい」 「う……変だよ、俺、男子高校生なのに、小学校の女子制服なんて……」 「変じゃないわよ。今日は女子小学生なんだから」  母親は平然と言って、 「いいから早く席について。朝ご飯にするわよ」 「はーい」  三人が席に着き、朝食が始まる。  もはや五日目だが、女子制服を着用しての食事は落ち着かない。アプリを始める前でさえ、登校時間ぎりぎりまで制服に着替えずに楽な恰好でいるタイプ。まして女子制服とあって、ブラウスやスカートの感触が、妙な緊張感をもたらしていた。  そんな長男の心の内を知るはずもなく、母親はのんびりとトーストをかじりながら 「でも夢月、今日は入学式なんだから、制服じゃなくてスーツに着替えないとダメよ?」 「……え?」  母親から突然投下された爆弾発言に、夢月は間抜けな反応を返す。 「入学式? スーツ?」 「何を驚いてるの。入学式には、入学用のスーツを着るものでしょ?」 「え? だ、だって、五年生として通うはずじゃ……?」 「五年生でも、入学は入学なんだから、入学式があるのは当然じゃない」 「そういう場合って、普通は転入とか編入になるんじゃ……」 「もう、お兄ちゃんったら細かいなぁ」  紗月も横から、 「学校がそう言ってるんだから、その通りに行けばいいじゃん。高校生なのに小学校で入学式を開いてもらえるなんて、ふつう絶対に経験できないわよ?」 「そ、そりゃ、そんなおかしいことは経験できないって……!」  高校生の男子が女子小学校の五年生として編入――しかも学校を上げての「入学式」で入学するだなんて、恥ずかしいにもほどがある。周辺の人間関係どころか、学校ひとつまるまる認識を書き換えるなんて、アプリの力の出鱈目加減を改めて認識する。 「とにかく、八時までに着替えて支度しておきなさい。行く前に写真も撮るからね」 「う、うん……」  母親の言葉に曖昧にうなずきながら、夢月はアプリの表示を思い出していた。 (そういえば、服装指定のところに入学用アンサンブルスーツってあったっけ……あれは、こういうことだったのか……)  そして食後、妹と一緒に部屋に戻ってみれば――いつも制服を吊るしてあるそのハンガーに、問題の「入学用アンサンブルスーツ」が吊るしてあった。  小さなレースがついた丸襟の長袖ブラウスと、襟元に結ぶ大きな白いリボン。  ピンクに薄いグレーのチェックが入った、三段フリルジャンパースカート。  グレーを基調に、ピンクのリボンがついた長袖のボレロ。 「お、俺が、これを……?」 「あら、可愛い。あたしの入学式の時のよりかわいいんじゃない?」  紗月が冷やかすように言うのも無理はない。可愛らしくもエレガントなデザインのアンサンブルスーツだったが――問題はそのサイズ。明らかに大きすぎるそのサイズは一六〇センチで、夢月でも余裕で着られるだろう。 (これを着て、入学式に……!) (しかもたった一人で、在校生たち全員から見られちゃうなんて……)  スーツを見て、これから参加させられる「入学式」のことを想像するだけで、女児用インゴムショーツの中でペニスを疼かせる夢月に、 「さぁ、お兄ちゃん。まだ時間はあるけど、お着換えどうする? あたしがやれば、ワンタップで着替えさせてあげられるけど」 「う、うん……そのほうが楽だし、恥ずかしくないし……」 「自分で着たい? それとも、あたしに着せられたい?」  スマホをかざして言う紗月。 「あたしがやればワンタップで着替えできるけど、それじゃ風情がないよね? こんな入学スーツを着られる機会なんてめったにないんだから、自分の手で着てみたくはない?」 「そ、そんな、わざわざ自分から着るなんて、恥ずかしいこと、したいわけが……」 「ほんとに? ブラウスに袖を通して、ボタンを留めて、リボンを結んで――ジャンパースカートに足を通して、背中のファスナーがぴったり閉じて、スカートのフリルを丁寧に整えて――ボレロを羽織って、前のホックを止めて、そんな楽しくてドキドキする機会を逃しちゃうの?」 「う、う……」  言われて、想像が刺激される。  今朝は朝立ちを抜いてもらっていないこともあって、ショーツの中のモノはあっという間に膨れ上がり、剥けた亀頭がこすれて背筋がびくっと震え、 「どうする、お兄ちゃん?」  見透かしたように笑い、答えの判っている問いを投げかける紗月。  そんな意地悪な妹に、夢月はごくりと喉を鳴らして―― 「じ、自分で、着替えたい……」  気付けば、そう答えていた。   (続き)


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