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25周年思い出話①『清少納言と申します』

25周年展記念企画、PEACH-PIT全作品を振り返り!

最近終了した作品から順に、過去作を振り返っていくという企画です。

作品に対する想い、制作中はこんなことがあったなーなんて思い出話から制作秘話まで、幅広く語っていきたい!


第一回はこちらの作品です!

『清少納言と申します』


大変とても長いので、お時間ある時にのんびり読んでね!



🍑 🍑 🍑


つい最近まで連載していて、去年完結したばかりのこの作品。

最近の作品なので、読んでたよ、とか、タイトルは知ってたよ、いう方も桃農家の皆様には多いのではないでしょうか。


いつも漫画連載にあたるときは、

『新しいことに挑戦したい!』

と考えているPEACH-PITですが、この作品は歴代作品の中でも特に挑戦作!

初めての時代もの、初めての実在の人物史実に取材する作品、初めての大人の女性向け、初めての既婚女性(?)が主人公…と、初めてづくし。

いや、正確にはローゼン0も大正時代ものでしたが、あれはローゼンメイデンという作品の番外編という基盤の方が強かったので…。


実は、時代ものを選んだのは自分たちの発案ではなく、元々は編集部からのリクエストでした。

元々、学生の頃から日本史も世界史も結構好きで、「いつか時代ものを描いてみたいなあ」という気持ちは以前から心の片隅にはあったりもして。

そこにビーラブ編集部から大人の女性読者に向けた時代物を描いてみませんかというお誘いを頂いて、「挑戦したことがなかった読者層で時代物、これは面白い機会かも!」と、描かせて頂くことになった流れです。

日本の平安という時代背景のほか、戦国時代のお話、明治時代のお話、はたまた外国の皇妃のお話など、どの時代背景の誰を主人公とするかは色々な案が出たりもしました。


そんな中で、平安時代の清少納言を題材に選んだのは、戦国・江戸・幕末や鎌倉なんかはドラマや小説漫画問わず物語の題材に多く取り上げられていますが、平安の、特に清少納言は、日本人なら誰でも知っている偉人でありながらも意外に題材にとりあげられた例が少なめ、と思ったことがまず一つ。

平安の二代女流作家でいうと紫式部にスポットの当たることの方が多い印象ですよね。逆に言えば、これは清少納言はイメージがそこまで固定されていないということで、残っている資料も比較的少なくて、想像で補って自由に描ける度合いが大きいかなと思ったことも大きかったです。


そしてもう一つは、枕草子に描かれた明るいポップな価値観や、みずみずしい感性。枕草子といえば、春はあけぼので始まる有名な段や、教科書で読んだことのあるような宮中の出来事を日記のように綴った部分の印象が皆様大きいのではと思うのですが、改めて読んでみるとそれだけではなく、本当に小さな、日常で感じた小さな何気ない事柄たちが、取り留めなく呟かれているだけの段もあったりするのですよね。まさにツイートって印象。現代にも通じる感覚を感じて、面白いなあと思いました。

清少納言ってなんだか21世紀に生きてても不思議じゃない感性の持ち主かも? 実は時を駆けてたりしない?

…なんて妄想が色々膨らんで、この『清少納言と申します』のアイディアにつながっていきました。


枕草子で描かれたエピソードや、今も残っている清少納言の逸話の小ネタ(と言っていいのか)も割と散りばめています。

1話の盗賊に対しての見栄の切り方とかね。読んでくださった方はわかると思うんですが、ちょっと大胆でしたよね。一体どういう表現なの!?行き過ぎでは!?と思われるかなという感じもするんですが、清少納言のああいう逸話が本当に残されてるんですよ…まあほとんど嘘ゴシップに近い感じで後世に書かれたやつですけども…。

他にも、有名なところでは香炉峰の雪とか、小ネタすぎて微妙な所では実方が雨に打たれてポエムするところや「馬に蹴られて死ぬわよ」ってセリフとか。入れたかった気もするが入れなかった有名ネタは、草の庵の墨で殴り書きする所とか、庚申の晩に夜明かしするエピソードとか則光にわかめ送るとことか。

平安の暮らしや宮廷の文化も、色々調べたり取材したりしまして、と言っても現代の読者にニュアンスが伝わるようアレンジもしたりしつつ、できる限り盛り込みました。

どれもこれも、歴史に詳しい方から見たら物足りないかもしれない描写ですが、教養漫画にはしたくなかったので、あえて深く拾いすぎずに軽い描写で描くようにしていました。

全く歴史に興味がない読者の皆様にも、軽い感覚で楽しく読んで頂ける漫画にしたかったというのがまずあって。歴史物といいながらも考証に意識が行きすぎないよう、ポップにライトに楽しいトーンで描きたかったのでした。

色々調べるにつれ、枕草子そのものが、「定子様の悲しい運命?そんなのあえて無視よ!明るく華やかな定子様とその楽しい生活だけを思い出して!軽やかな私の生き方がその証明よ!」という清少納言の想いが詰まった作品のように思えたんですよね。

だから、『清少納言と申します』を描くのなら、明るくてライトな、楽しく笑いながら読める漫画が相応しいと思いました。



さて、ここからはキャラ別に語ってみます!


・なぎ子

言わずと入れた主人公、清少納言です!

結構べらんめぇな性格というか、おおざっぱで明るい、辛辣でずけずけものを言う一方で情に脆かったりもするキャラクター。ももたね作品の中では今までいそうでいなかったタイプかな?と思っています。

なぎ子の性格設定は、枕草子を読んでこういう人かなーと感じた印象を膨らませて作りました。

枕草子を通じて見えてくる清少納言像はとにかく定子様大好き女子なんですが、それをどう描くかというのも考え所。実在の清少納言が定子に抱いていたのはきっと敬愛なのだと思いますが、この漫画のなぎ子はもう一歩踏み込んだ感情にしたい、でもなぎ子には則光という夫もいるわけで…ということで、セクシャリティについては、愛する対象を男女どちらと限定しない人になりました。

前述の通り、この漫画は明るくライトに読めるものにしたかったわけですが、主人公のキャラクターはそのテーマの体現です。だから、明るくて軽やかで光を感じさせる、ポジティブな自由意志を持った強い女性、という視点をなぎ子には請け負ってもらいました。

でも、読んで下さった方はわかると思うのですが、それだけでない『秘密』を持っているのがこのキャラクターで、それが時になぎ子にとって悩みの種となり、足を掬われてしまう弱点となり、逆にアイデンティティの芯となったりします。

(まあ当然ながらこの『秘密』はもちろん創作なんですけど! )

これに関しては、描き始めた頃から現在に至るまでのほんの数年の間に、世の中で目まぐるしく取り扱い方が変わっていったテーマで、この作品を通じてももたねも考えを深めたり価値観を更新したりしました。

2010年代から20年代にまたぐ時代に『清少納言と申します』のなぎ子を描くことができたのは、ももたね的にとても意義深いことでした。


・光子

この漫画で創作した、実在しない人物、則光の姉です。スタート時は小姑ポジ。

大人の女性層を意識した雑誌だったので、ちょっと特殊なキャラ造形のなぎ子の隣に、等身大の大人の女性の視点を置きたかったこと、そして当時婚活で頑張る女性が身の回りに何人かいたということがあり、婚活女子という感じになりました。

結婚というと、ロマンチックな恋愛の末のゴールであればそれはもちろん素晴らしいことなんですが、生活やお金やその後の人生設計にも関わる、人生の一大イベントで、恋愛や感情と言ったナイーブな面だけでは語れないことや、綺麗事で済まない側面も沢山ありますよね。

将来の進路を決める時は、その先にある目標や、その時自分が望む条件をよく見て、比べて考えて、そのために勉強したり資格を取ったりと努力するのが普通じゃないですか。結婚だって同じように将来を決定づける人生の一大事、目標を立てて望む条件を決めたり比べたりするのは全く不思議なことではないはず。むしろ自分で立てた目標に向かってストイックに努力して、意思を持って行動できる姿はかっこいい!…と身近にいる婚活頑張る女子を見ていて、そんな尊敬の気持ちがいつもありました。

そんな想いで描いたのが、光子婚活編でした。平安時代ということで今よりもずっと女性の選択肢が狭い背景なので、どうしたら現代人にも通じる価値観を描けるか…なんていうと大層なんですが、色々考えながら描いてました。


・則光

原典の枕草子で描かれる則光がものすごくキュートな人なんですよね! それでつい則光の出番が増えてしまいました。

原典の枕草子ではわかめを頬ばるエピソードがめちゃくちゃ好きで、この漫画でも何とか大きく扱いたかったところでした。おもしれー男です。

とはいえ、ここまで体育会系で実直すぎるくせにちょっと優柔不断で単純な男としての描き方も、実在した則光さんには不本意かもしれませんが……結構武人として優秀だったみたいな逸話もあるし、離婚後も清少納言とは妹兄の仲と呼ばれるほどなかよしというのも面白く、則光の人柄を感じさせるエピソードですよね。

実際の則光さんはもうちょっとかっこいい人物だったのではと思います!

歴史に残っている通り、なぎ子とはいずれ離婚することが決まっていたので、序盤での新婚の二人の関係性や愛情の深さをどの程度まで描くかは悩むところがありました。


・実方

実在の人物ですがこれはギャグ調に崩しすぎました。実在した実方さんすみません。

のちの源氏物語の光源氏のモデルとも言われたのがこの実方で、女性遍歴が華やかという一点のみを膨らませに膨らませた結果盛りすぎました。歌の名手という表現をももたねなりに試みた結果J-POP調謎ポエムを連発するおもしれー男枠に。あと意外と喧嘩っぱやいという逸話も、優美なイメージとのギャプが面白くてつい膨らませました。

実際はこんな変人ではなかったはずです!


・道長

言わずと知れた超有名な実在の人物。藤原氏の中で最も栄華を極めた頂点の男では?

なぎ子にとっては重要なキャラクターとなります。なぎ子は、我々現代人に近い感覚を持ったキャラクターとして描いていて、言い換えると未来視のような、遠い未来の現代の価値観を予見しているようなキャラクターなんですが、この作品での道長は唯一、なぎ子と価値観を共有できるキャラとして描いています。

これは偏ったイメージかもですが、道長って、歴史物の物語の中で「驕り高ぶった権力者」「ギラついた自信家」といった悪役風ポジで描かれることが多い気がしませんか? ワールドイズマイン的なあの有名な歌のせいかなと思うんですけども。

でも改めて考えたら、平安時代って、国風文化という日本にとっての財産が生まれた時代で、文化というものは平和な時代でなければなかなか生まれ得ないものなわけで。戦争中だと芸術どころじゃなくなっちゃうもんね。

なんやかんや平和な期間をそこそこ長く保てた平安時代、その立役者である道長って、実はお札の肖像になってもいいくらいすごい偉人なのでは?と思ったりもして。娘の結婚を自分の地位の足がかりに利用するいかにも悪辣なイメージも、武力ではなく愛による平和維持って考えたら、国を治めるための本人なりの理念があったのかも。そんな気持ちで描きました。

あとこれは全くの余談……道長は晩年は糖尿病を患ったそうですが、この作品での道長は遺伝性のほうと解釈して描いています。作中ではまだ発病はしてない感じ。道隆も同じ死因だし一族の病としてあり得なくはないと思うんですがどうでしょうね。


・定子

トリを務めるのは定子様! なぎ子の愛情の対象であり、この物語の中心にいる重要キャラクターです。

しかし、前述のようにこの漫画は「明るくライトに!」がテーマだった中で、定子の人生はどうしても悲しさと儚さが切り離せずにあって…どう描いていくか一番腐心したのが、この定子でした。今も、ここはこうすればよかったかな、とか、読み返してなお迷いがあります。

定子は道長と並んで経歴がしっかりと史実に残された歴史上の重要人物の一人ですが、調べれば調べるほど定子の立場は本当に本当に複雑で、時代と運命に翻弄されたとしか言いようのない、一言で説明しにくい悲劇性があったりして。この複雑さを、漫画としてわかりやすく説明するのがとても難しく、と言って定子の内面にはその複雑な立場なしでは語れないものがあって…。

また、皇妃(と一言で言い切るのすらも難しい立場なんですが)というあまりにもやんごとない、普通に生きてる現代人の我々が感情移入や想像がしにくい立場でもあり、それを等身大の若い女性としてどこまで描けるか、どこまで定子の心を描けるか、というのが大きな挑戦でした。

美意識の高いなぎ子にとっての定子は、最も光り輝くカリスマ!つまり作中最高の美のオーラ出さなきゃ!…ということで、作画的なテーマはとにかく美✨

とはいえ、平安時代のお姫様は高貴であればあるほどライトな服装をするそうで。逆になぎ子たち女房は高貴な主人であればこそガチガチのド正装で毎日お仕えするので、そんなド派手ギラギラファッションに囲まれながらも埋もれない定子の気品や美しさを、より華やかに表現するにはどうしたらいいか、結構苦心しました。





という感じでした!

他にもキャラクターは沢っっ山いるのですがとりあえず出番の多かった人々のみに絞りました。ここで挙げなかった有名どころキャラは安倍晴明とか。創作キャラの中ではあしびの君がチャレンジ枠だったかな。


あとこれは本当ーにももたね個人的な思い出なんですが『清少納言と申します』を熱く支持してくださる大人女性の知人がいらっしゃいまして、会うたびこの作品の良さや、これきっかけで平安文化に興味を持ったことなど今も熱く語ってくださるのがすごく嬉しい。

ファンレターでも、ほぼ毎月欠かさずものすごく熱心にお手紙下さっていた方、嬉しい感想や、手作りの凝りに凝ったファンアートを送ってくださった方々と、励みになるお手紙が当時沢山ありまして、今も大切にしています。

頂いたファンアートの中からおひとつ。

めっちゃ可愛くないですかーーー!!!✨


(frame embed)


というわけで、手探りの挑戦作として始まってなんやかんや全9巻、最初の予定よりもずっと長く描かせて頂いたこの作品。

まだ読んだことないよという方も、途中まで読んでたよという方も、もう一度読み返してみようかなという方も、25周年展を前にぜひ、読んでみてくださいね。

各電子書籍サービスから、電子版も配信されてます!



🍑 🍑 🍑




と、こんな質問を少し前に頂いたもので、嬉しくて長めに振り返ってみました。

今回は清少納言でしたが、ローゼン0も順次たっぷり語りますよー!

どうぞお楽しみに!



25周年思い出話①『清少納言と申します』 25周年思い出話①『清少納言と申します』 25周年思い出話①『清少納言と申します』

Comments

「清少納言と申します」読みました。 歴史上の清少納言や平安時代の事は授業で学んだくらいで、しかもほぼ覚えていない知識ゼロの状態で読ませていただきました。 まず読み終わって思ったことはほぼ全員登場した人物を好きになった作品はないなと、元々歴史に名を残す人物なので魅力があるのだとは思いますが、その魅力を濃縮して引き出していて感情がぐしゃぐしゃになるくらい感情移入しまくりでした。 ですが個人的に1番好きになったのは実在しない光子でしたw 竹筒の君との話は展示でこのシーン見たら絶対に泣くと思ったのに、えっ!こんなあっさり…と呆然としました。 強い人たちに囲まれて自分が情けなく思ったり自信が持てなかったりと今の世の中でも多くの人が悩んでいることを周りの人たちがあなたはこんなに素敵だよと教えてくれて徐々に強くなっていく姿は読んでいて心が打たれました。 また、作品に出てくる歌を見て今の自分は物事を深く感じることを放棄していたのではないかと感じました歌にすくことは難しいですが、日々の変化を感じて行きたいと思います。 25周年特別展楽しみにしています。

やったろう

ありがとうございます!ぜひ読んでみてくださーい!

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清少納言の背景が知れて、興味を持ちました✨🐑

長月羊 -ナガツキ ヨウ-


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