無観重のブラインドマッチ。鈴がヘルズフレアの幹部マリアを相手に死闘を繰り広げていた。
「ぶへッ!!」
マリアのバックスピンエルボに顔面を直撃された鈴が、唾液をまき散らしながらマット上を転がる。
(どうして…!)
目の前の相手に鈴は混乱していた。有里の顔をした敵の幹部。顔だけでなく技もまるでコピーしたかのように有里の技に似ていた。
「どうして…有里先輩の姿を…どうしてですか!」
「今死ぬ奴がそれを知ってどうする。」
マリアが氷のように冷たい顔で鈴を見つめるが、鈴も負けじとばかりにマリアをにらみつけて追及する。
「この前、糸山選手を襲ったのはあなたですね。先輩の顔でそんなひどいことをするなんて許せません!どうして選手生命まで奪うそんな酷い仕業までしたんですか!」
「組織の番犬として、妨げなるものはすべて排除する。それ以上どんな理屈が必要だと言うんだ?そういう正義のヒロインさんはどんな内幕があって私たちを邪魔をする。」
「内幕なんて…そんなのわありません!私は先輩がそうだったようにあなたたちのやり方を受けられないだけです!」
「ふん、正義感だけだって? その姿を見ると君の先輩からもっとまともな話は聞いてないみたいだな。」
鈴が図星をさされてもじもじしている間、マリアが再び口を開く。
「かつて異界プロレス団体の頂点にいたこのヘルスフレア。しかし、それももう昔の話。 殆どのスポンサーを失い、今は落ちぶれてしまった団体を存続させるためには、資金繰りのための他の手段が必要になった。スナッフフィルムって聞いたことあるか?」
鈴としては初めて聞く用語だった。
「拷問、身体毀損、殺人など、人の死を扱う映像の総称。巨大なスナッフフィルム市場の構築。この国のプロレスはわがヘルズフレアの復興のため殺戮ショーというエンターテイメントとして生まれ変わるのよ。」
自分の思った以上に強い悪意を持った相手に戸惑って、鈴の顔がこわばる。
「そんなの…!人たちが納得するわけないです!」
「それはお前が心配することではない。お前は自分の身の安全から心配したほうがいいのだが...!」
(ドズゥン!!)
「うぅッ!!」
マリアのニーキックが鈴のわき腹に突き刺さると、ダメージを受けてたじろいでいる間、マリアが上半身をつかんでグラップリングを試みようとするが、辛うじて振り切る。 目の前の相手が先輩とどんな関係なのか、疑問は山ほど積もっていたが、今はそれを考える余裕などなかった。
(くぅッ...ダメ!目の前の戦いに集中しないと…!しかし、この状況…。)
「気づいたみたいだが、もう遅い!」
鈴は戦いが初めってから感じていた違和感の正体に気づく。マリアは意図的にリング中央での戦いを誘導し、明らかに鈴の弱点を狙っていた。身長158cmの小さい体。身体的限界によるパワー不足を空中技でカバーする偏ったテクニック。それは言い換えれば、ロープとリングポストが使えない状況では戦力が大きく半減するという意味だった。
(相手は私がグラップリングに弱いところまでみんな知っている。消耗戦になるほど不利なのはこっち...。勝負するしかない!)
鈴が上半身中央を狙ったミドルキックを飛ばす。でも、それはフェイク!マリアが自分の上半身を狙って入ってきた足をつかんだ瞬間、鈴が身を飛ばして後頭部を狙った延髄斬りを放つ。
「はあッ!!」
「ふん、しれた事を…!」
予想したかのようにひじを利用して技をそらしたマリアが、空を切った足をつかんで鈴をマットに落下させる。
「くッ...!しまった...!」
足をつかまれ、崩れた姿勢で尻もちをついた鈴が急いで脱出しようとするが、もう手遅れだった。
「ほかに選択肢がなかったとしても、簡単に足を出してくれるなんて、思ったより間抜けだな。このまま足を粉々にしたら、誇ったキックも空中技も使えなくなるだろう。」
リング中央でかかってしまった足4の字固め。ロープまではかなりの距離があった。技術から逃れようとするたびに、マリアは方向を変えて鈴の足をさらに圧迫させる。
「くぅッ...!!あぁぁッ!!」
「一つだけ聞く。お前にその力を与えたのは誰だ。お前の先輩か?」
「知りません!私はそんなの…!」
「ふん!」
マリアが技を解くと、固めから解放されるが、すでに足に致命傷を受けた絶望的な状況。マリアがロープに這って逃げようとする鈴の髪をつかんで片足と上体をつかむ。
「ぐふえぇッ...!!」
フィッシャーマンスープレックス!鈴の視野がひっくり返りながら、轟音とともに脊椎が分離される苦痛を伴う。マリアがブリッジを解除して、グロッキーになった鈴を正面から抱き上げる。
「ああぁぁあッ!!」
「最後にひとつ提案しよう。私の下に入ってこい。」
「何...ですって?」
「今ヘルズフレアは厳しい状況に直面している。昔の栄光を取り戻すため、私には一人でも多くの戦力が必要だ。私について来たら、あなたを人間界はもちろん、異界でも侮れない最強のレスラーにつくってあげる。」
「いい加減なこと言わないでください!私はあなたみたいな悪党に従うつもりなんて…!」
「ふん、正義のヒロインのように振舞っているが見ればわかる。きさまの目的はあの先輩だろう?会わせてやるよ、君の先輩と。」
(有里…先輩!)
この戦いに巻き込まれたときから、鈴はいつも有里先輩を求めていた。自分が心を開いてプロレスラーとしての道を教えてくれた人。寂しく苦しい戦いを続けてきたのも、すべて先輩にまた会えるのではないかという希望があったから。でも、そうだとしても…人の命を担保にした殺戮ショーなんて。それを聞いて只傍観するには、鈴はまだ純粋だった。
「あなたたちの悪意を知って見過すほど…!私は非情ではありません!」
「そう? だったら…!」
「ぐはッ!あぁッ!ぐはあぁぁあぁッ...!!」
「お前にもう用はない…死ね。」
(ダメ…!先輩…!)
心の中で先輩を叫びながら、鈴は混濁する意識の中で気を失う。その直後だった。
「その辺にしてもらえませんか?」
マリアが後ろを振り向くと、いつのまにかリングの外からシスターエビルが不気味な笑みで唇をふるわせている。その不機嫌な微笑にマリアの眉間が狭くなる。
「もうすぐなので、邪魔せずに消えてもらえませんか?」
「ふふ、そうはいけませんね。先程天使の身辺をゆずってほしいというスポンサーの強い要請があったので、その手を引いて下さい。」
「スポンサー...?あの豚のことですか? なぜ私が人間なんかを従わなければならないんです。」
「あら?この先まで人間だったあなたがそんなことを言うなんて本当に皮肉いもんですよ。マリアさん。それにしてもいいですか?私の意思はすなわち財団の意思と同じだということを。忘れたんじゃないですよね?」
「...。」
しばらくの間シスターをにらみつけたマリアが失神した鈴を投げてリングから降りてくる。
「いつまであなたの思いどおりになると思ったら大間違いです。」
「ふふ、お好きにどうぞ。」
未曾有の強敵に出会い、もう一度の敗北を迎えた鈴。一方、リングの隅でこれを最初から見守っていた影があった。
「苦労でした。マリア様。」
「あなたですか。たかだかあれくらいの相手に手こずるなんて、 親衛隊も再調整が必要なようですね。」
レッドウィップを叱咤するような無情な視線に答えることができず、頭だけ下げたまま、悔しそうに歯を食いしばる。
「くッ...!マリア先輩どうなったんですか!なぜ、ファイターエンジェルなんかに…!」
危機に瀕した団体のため、マリアの判断が正しいと思いながらも、団体を敵対してさらに自分のプライドを傷つけた相手を懐柔しようとしたことにレッドウィップは納得できなかった。マリアの影がリングから消えると、親衛隊員の一人であるパプリカがちょこまかと現れ、一言口を添える。
「さすがにマリア様よ。親衛隊も持て余すあのエンジェルをおもちゃのよに…ひえぇッ…!」
その気が利かない一言に、レッドウィップが腹立ちまぎれに足先にあった椅子を蹴飛ばすと、パプリカが大きくびびって縮み上がる。
(ファイターエンジェル...貴様だけは私の手で踏み付けてやる...!)
※レッドウィップはキックが、バーミルはパンチの比重が大きいです。打撃機以外の技も登場します。バーミルの場合ボクシンググローブを着用します。
(Red-whip has a lot of kick Scene, and Vermil has a lot of punch Scene. There are also techniques other than the strike moves. Vermil will epuip boxing gloves.)
※投票は11月10日18時に締め切られます。
(Voting closes on 11/10/20 09:00(UTC))
Note : 今回のマリア戦の勝敗に就いて、投票を進めようかと思ったのですが、マリアの下にキャラクターが大ぜい加わったため、進行の便宜上マリアが勝つ展開にしてしまいました。今後はいかなる形であれ、投票で勝敗を決める方向で進めるようにします。
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Haju
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